ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2009.03.10]

フォーサイス『Yes we can't』、ファーブル『寛容のオルギア』、マリファント3作品も上演される

BALLET de l’OPERA de Paris
Angelin Prejocaj : Le Parc
パリ国立オペラ座バレエ
アンジュラン・プレルヨカーユ『ル・パルク』


 前号でもお伝えしたが、ガルニエ宮では1994年にプレルヨカーユがオペラ座のために創作した『ル・パルク』を再演する。
 1990年代前半はエイズが広がり、80年代までの愛のあり方が問い直された時期だった。振付家は「今日、愛はどうなってしまったのだろうか。エイズに直面して危機に陥り、疑いがきざしている。感情はどのように動いているのだろう。情熱はどこに向かっているのだろう。情熱の高まりを抑制しようとする意思が働くと、かえって愛が燃え上がるのではないだろうか」と語っている。
 愛についてのコード(振舞い方)が最も洗練されて花開いた17・18世紀のフランス文学を渉猟することで、プレルヨカーユは「愛するというアート」の残された道を見出そうとした。ラファイエット夫人の『クレーブの奥方』、ラクロの『危険な関係』、スキュデリーの『優しさというカード』、変装を特徴とするマリヴォーの恋愛劇とありとあらゆる愛の形が3幕に結晶している。モーツアルトの最も美しいアダージョとピアノ協奏曲の調べに乗って、誘惑の戦術が真実の愛の開花させようと駆使される。
 この振付によりプレルヨカーユは1995年にモスクワで「ブノワ・ドゥ・ラ・ダンス」賞を、1999年にバスチーユ・オペラ座での公演を撮影した録画で1999年にニース国際ビデオ・ダンスのグランプリを受賞している。2005年にはDVD化された。今回、演奏はコーエン・ケッセルズ指揮のコロンヌ管弦楽団。装置はティエリー・ルプルースト、衣装はエルヴェ・ピエール、照明はジャック・シャトレ。
(3月10・12・13・15・16・18・19日9時30分開演、15日のみ14時30分開演)

John Neumeier : TROISIEME SYMPHONIE DE GUSTAV MAHLER
ジョン・ノイマイヤー『グスタフ・マーラー第3交響曲』

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 バスチーユ・オペラ座ではジョン・ノイマイヤー振付の『グスタフ・マーラー第3交響曲』が上演され、パリ国立オペラ座バレエ団のレパートリーに入ることになる。ノイマイヤーはマーラーの音楽が喚起するイメージと感動に身を委ねることで、復活と救済を主題として空間を征服しようとした。モーリス・ベジャールが同じ曲の3つのムーブメントに触発されて1974年に『愛が私に語りかけること』を構成したの対して、ノイマイヤーは6つのムーブメントを振付けている。幕間なしで上演される各ムーブメントの名前は「昨日」「夏」「秋」「夜」「天使」「愛が私に語りかけること」である。
振付・装置・照明 ジョン・ノイマイヤー、音楽 グスタフ・マーラー
メゾ・ソプラノ  ダグマール・ペコヴァ、パリ国立オペラ管弦楽団
クラウスペーター・ザイベル指揮(3月21、23、25日はサイモン・ヘーヴェット)
(プルミエ3月13日19時30分、その他3月16、17,23,25,31日 4月3,6,8,11日 19時30分。3月29日のみ14時30分) 

THEATRE de La Ville
Jan Fabre : L’Orgie de la Tolérance
パリ市立劇場
ヤン・ファーブル『寛容のオルギア』


 造形美術家、パーフォーマー、作家、演出家、振付家とさまざまな顔を持つヤン・ファーブルは芸術の境界を越えて仕事を続けてきた。クリーンなだけになった現代社会と人間が本来持っている混乱や混沌を対峙させることで、画一化された「アート」の枠を破ろうと試みている。
 広告にみられるモデルたちの型にはまった「美」に対して、過剰な肉体が崇高な反抗を加える。世間から認められた理性に対しては、動物的な知を擁護し、新しいヒューマニズムを追求する。そのために、今日はびこっている認知された「規範」を攻撃する。各人が「自分の」差異を押しだす権利がある、という規範は絶対的な相対主義であり、すべてが許容されてしまっている。
 8人のパーフォーマーのため作品によってファーブルは、グロテスクで吐き気を催させる「オルギア」に締め付けられている21世紀のもつ悲しいまでの滑稽さを暴露している。3月31日より4月4日まで。

Ballet de l’Opéra de Lyon
Wiliam Forsythe : "The Second Detail" " Duo " " One flat thing, reproduced " 
リヨン国立オペラ・バレエ
ウイリアム・フォーサイス『ザ・セコンド・ディテール』『デュオ』『ワン・フラット・シング・ルプロデュースド』


 フォーサイスの世界初演作品を8つレパートリーに持つリヨン国立オペラ・バレエ団が、一夜で一挙に3つの作品を上演する。
(4月7日より4月10日)

Théâtre National de Chaillot
Roussell Maliphant Dance Company «Flux » « Small Boats » « Push »
 シャイヨー国立劇場
ラッセル・マリファント・ダンス・カンパニー 『フリュックス』『小さいボート』『プッシュ』


 シャイヨ劇場はルーセル・マリファントの3作品を上演する。 
『フリュックス』
 音楽/フランク・ブレットシュナイダーとタイラー・ドゥープリー
『小さいボート』
 映像/イサック・ジュリアン、照明/ミヒャエル・フルズ、音楽/アンディ・コートン
『プッシュ』
音楽/アンディ・コートン、衣装/ステヴィー・スチュワート

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 ラッセル・マリファントは英国の新しい振付家の中で最も優れた人の一人。クラシックとコンテンポラリー・ダンスを学び、ヨガを実践しているマリファントは身体のバランスを見直し、パ・ド・ドゥをクリエーションの頂点に押し上げた。彼はシルヴィ・ギエムのために『ブロークン・フォール』『ソロ』という流れるような、調和にみちた作品を作った。映像はコレオグラフィーの対位法として用いられている。『プッシュ』はかつてマリファント自身とギエムのために作られたデュオである。今回演じられる3作品によってマリファントのスタイルの全容をみることができる。
(3月12日より14日)

Wayne McGregor/Random Dance : Entity
ウエイン・マックレガー/ランダム・ダンス『エンティティ』

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振付/ウエイン・マックグレゴール、音楽1/ジョン・ホプキンズ、音楽2/ジョビ・タルボート、装置と衣装/パトリック・バーニエ
 英国のダンス界の寵児、ウエイン・マックレガーがついにパリに登場する。英国ロイヤル・バレエのレジデント振付家であり、『ハリー・ポッター』やミュージカル『キリクー』も手掛けている。
 今回『エンティティ』のために応募してきた数百人のダンサーから10人を選び、ムーブメントの完璧なコンビネーションを目指す。クラシック・バレエのテクニック、コンテンポラリー・ダンスのアプローチ、優れた音楽性が一体となり、現代的なマックレガーならではの動きが生まれる。脳とダンスとの関連性を追求したこの作品はまさにイヴェントである。
(3月19日から21日)

William Forsythe : Yes we can’t  
ウイリアム・フォーサイス『Yes we can't』

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 フォーサイスはクラシック・バレエからスタートし、アカデミックなダンスのボキャブラリーを崩しては再度組み立ててきた。動きによってスペクタクルとパーフォーマンスの間の領域が開拓されてきている。
 今回の作品はアイロニカルな表題が付けられているが、フランクフルトとドレスデンで活躍しているアメリカの振付家のコンテンポラリー・ダンスの地平を最大限に広げる試みになっている。
(3月26日から28日)

Via Katlehong Dance : Woza
ヴィア・カトルホング・ダンス『ヴォツァ』

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 1996年創設のヴィア・カトルホング・ダンスは南アフリカからやってきたダンスグループ。『ヴォツァ』は樹木から、風から、動物から聞こえる音へ捧げられたオマージュである。木から楽器を作るように、人間の身体からリズムを引き出し、ダンスを作っていく。ゲットーに住む黒人たちのダンスとアフリカのコンテンポラリー・ダンスが組み合わせられている。
(3月26日から29日)

HELA FATTOU MI et ERIC LAMOUREUX : 1000 DEPARTS DE MUSCLES
ヘラ・ファトーミとエリック・ラムルー『筋肉の1000の出発』
   

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音/フレデリック・デリア、ジョン・ノエル・フランソワーズ、衣装 マリリン・ラフェ、セノグラフィー ステファニー・ポーヴレ
 パリ大学で体育の教師になろうとしていたヘラ・ファトゥーとエリック・ラムルーが出会いダンスグループを創設してからすでに20年になろうとしている。二人はヴィデオ作家、アコーデオン奏者らとともに舞台に上がり、独自の世界を切り開いてきた。
 21世紀の社会が肉体により若く、よりやせていて、より優れたパーフォーマンスを見せることを求めているのに対して、「生きている人間の詩的な強さ」という肉体の原点に戻ろうとしている。
(4月2日から4日)

THIERRY BAE : Tout ceci (n’) est (pas) vrai
チェリー・バエ『これはすべては本当だ(ではない)』

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ヴィデオ/フランソワ・ルジョール、音楽/ブノワ・デルベック
 チェリー・バエはランスの美術学校に学んだ後、マルセル・マルソーとエティエンウ・デクルーからマイムを学んだ。その後、ダンサーとしてカトリーヌ・ディブレスとジョセフ・ナジの振付で踊っている。今、振付家としてバエは年齢とともに衰えていく自分の肉体に問いかけ、その失望と羨望を現実とフィクションの間に表現している。
(4月4日から11日)