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斎藤 珠里 text by Julie Saito 
[2009.01.13]

真紅のガニオ『火の鳥』を踊る

 BALLET DE L’OPERA NATIONAL DE PARIS  パリ・オペラ座バレエ公演  HOMMAGE A MAURICE BEJART  「モーリス・ベジャールへのオマージュ」

『火の鳥』のタイトル・ロールを踊ったマチュー・ガニオには、真赤なレオタードがよく映えた。艶めかしい筋肉、魅惑的な瞳が輝いて、ガニオの一挙手一投足からオーラが全開した。まさに火の玉そのもののエネルギーがほとばしり、群舞全体に飛び火してゆく作品そのもののメッセージが伝わってきた。このところガニオの表現力に多少不満があったが、今回のような理性を超えた無条件の世界、肉体の本質を突くような作品をもっともっと踊ってもらいたいと思った。

(c)Laurent Philippe/Opera National de Paris

『春の祭典』は、今年夏に東京バレエ団のヴェルサイユ宮殿での公演でも観たが、まったく異なるイメージだった。のっけから床に這いつくばった男性群舞が獣を連想させる。女性群舞は対照的にメスの香りを放つ。生贄の男性ジェレミー・ヴェランガール、女性クレールマリ・オスタも、プラスとマイナスが引き合うエロスを全面に出す。二人とも美的にはそれほど恵まれた身体をもたないが、両者の間の吸引力に意識が集中する。東京バレエ団のダンサーたちは粒がそろって体の線もきれいだったが、その動きや表情からは男と女という性差はあまり感じられなかった。オペラ座の舞台の上で繰り広げられる"乱交"とも呼ぶべき暴力的なシーンからクライマックスへと一気に突き進むベジャールの世界に客席は静まりかえり、あっという間の38分間だった。私の生まれた年に初演された作品が、いまなお若い世代を狂気の世界に迷いこませるベジャールの底力に、改めて衝撃を覚えた。

(c)Laurent Philippe/Opera National de Paris