ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2008.12.10]

パリ国立オペラ座バレエ / パリ市立劇場 / シャイヨ劇場

BALLET de l’OPERA de Paris

 パリ国立オペラ座バレエはレパートリーに入っているルドルフ・ヌレエフ振付の『ライモンダ』をクリスマス公演として上演する。(ガルニエ宮  2008年12月1日より31日まで)1983年にガルニエ宮で初演されたもの。ニコラス・ジョージディアスの衣装と装置にセルジュ・ペラの照明。アレク サンドレ・グラズノフの音楽はケヴィン・ロード指揮のラムルー管弦楽団が演奏する。
バスチーユ・オペラでは昨年11月に亡くなった「モーリス・ベジャールへのオマージュ」。『これが死か』(音楽はリヒャルト・シュトラウスの「4つの最 後のリート」)、『火の鳥』(パリ・オペラ座バレエのために振付、初演1970年パレ・デ・スポール。ストラヴィンスキー音楽)、『春の祭典』(1965 年、ストラヴィンスキー音楽)といずれもベジャールの振付けた三作品を取り上げる。存命中にベジャール自身が選び、パリ・オペラ座バレエ団に上演を託した 遺産である。ヴェロ・ペーン指揮パリ国立オペラ管弦楽団の演奏。(2008年12月9日より31日)

Photo:Icare/Opera National de Paris

Théâtre de la Ville(パリ市立劇場)
パリ市立劇場はまずオーストラリアン・ダンス・シアターの総監督ゲイリー・スチュアート振付の11人のダンサーのための『G』の世界初演がある。残念ながら12月6日までの上演。
スチュアートは『ジゼル』を徹底的に解体して作品を作っている。「若い百姓娘が貴族に思いを寄せ、狂死する」というストーリーから、「狂気」「愛」 「性」といったキーワードだけを取り出し、光るスクリーン、照明が描きだす通路をダンサーたちが行き来するだけというシンプルな作りになっている。ダン サーの仕草はヒステリーや軽妙なダンス(ダンス・エテレ)、クラシック・ダンスという3つを使っている。オーストラリアのダンス界で最も評価されている作 曲家の一人であるリューク・スマイルズの音楽をバックに、スチュアートならではの凶暴なエネルギーが横溢している。欧州のダンスにはない別の視点がパリの 観客から期待されている。

(C)Chris Herzfeld/Théâtre de la Ville

 12月8日から19日まではバスチーユ劇場(バスチーユ・オペラではなくThéâtre de Bastille>)を使ってイタリアの振付家カテリナ・サニャが三人のダンサーのための『P.O.M.P.E. I.』を世界初演する。サニャは誇張と厳密さという矛盾した要素を一体化させ、自分の日常を通じて隠された真実に迫ろうとしている。舞台では三人の男性ダ ンサーが日常のシンプルな動作を見せ、その背後のスクリーンでは三つのビデオ作品が映写される。ビデオにはフランドルの優れたダンサー、ヴィヴィアンヌ・ デ・ミュンクが出演している。

 パリ市立劇場ではエミオ・グレコとピーター・C・ショルテンの振付によるいずれもダンテの『神曲』の「煉獄」に題材をとった二作品が上演される。 これは2006年に世界初演された『地獄』とともに三部作を構成することになる。12月9日から13日までは『(Purgatorio)In  Visione』の世界初演である。舞台にはエミオ・グレコが一人だけ登場し、そのダンスの構造にあわせてバッハの『マタイ受難曲』を自由に編曲したフラ ンク・クロージックの音楽が流れる。『(Purgatorio)In Visione』は30人の音楽家のオーケストラ(ルーアンオペラ管弦楽団)を前に して一つの身体が表現する声楽なしの受難曲である。生の音楽のダイナミックな力にダンサーの孤独と弱さが対峙するが、それがかえって動きに力を与える。フ ランク・クロージックは自ら舞台上でアコーデオンを演奏する。
12月16日から19日までは『(Purgatorio)Popoera』の世界初演が行われる。ミヒャエル・ゴードンの音楽をバックに6人のダンサー が踊る。音楽とダンスとの関係への問いかけから神秘的で、重々しい、また凝縮度の高い舞台が生まれた。深い闇から浮き上がる身体により空間が切り取られ、 また身体もばらばらになった楽譜のように扱われる。照明の光により身体が孤立したり、時には焼き尽くされる。ダンサーが手にしたギターの旋律に乗って動き は広がっていく。6人のダンサーはイメージとロック調の音の間に飲み込まれていく。

Théâtre de Chaillot(シャイヨ劇場)
シャイヨ劇場では12月8日から13日まで、フィリップ・ドゥクーフレ振付のダンス『ソンブレロ』(傘)。『ソンブレロ』は光、イメージ、シルエット、 動き、笑いを素材にし、「闇の前には何があったのだろうか」とか「闇の後には何が残るのだろうか」という問いかけがなされる。照明、ビデオ、音楽が交錯す るドゥクーフレならではの幻想的、非現実的な世界へと観客が導かれることは間違いない。

(C)Laurent Philippe/Théâtre de Chaillot