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斎藤 珠里 text by Julie Saito 
[2008.09.10]

LES ETES DE LA DANSE au Grand Palais Les GRANDS BALLETS CANADEIENS de MONTREAL 夏のダンスフェスティバル (グラン・パレ) レ・グラン・バレエ・カナディアン公演から

プログラム3 MAURO BIGONZETTI: Les QUATRE SAISON, CANTATA マウロ・ビゴンゼッティ振付:四季、カンタータ

 

グラン・パレ
  パリの観光名所グラン・パレで開催されたレ・グラン・バレエ・カナディアンの公演については、前号ですでにプログラム1を取り上げたが、今回は千秋楽の 8月9日に観たプログラム3を紹介したい。イタリアの振付家マウロ・ビゴンゼッティの2作品『四季』と『カンタータ』が上演された。

 日本では馴染み薄のビゴンゼッティは1962年、ローマに生まれた。ローマ・オペラ座バレエ学校で学んだ後、アメデオ・アモディオ芸術監督が率 いるイタリアのダンスカンパニー、アテルバレットに入団。バランシンからアルヴィン・エイリー、ウィリアム・フォーサイスといった振付家の作品を踊ったと いう。92年に同団を離れて振付に専念したが97年に同カンパニーの芸術監督に就任、独自の作品を次々と発表すると共に、イタリアを代表する気鋭のダンス カンパニーとしての地位を確立している。

 ヴィバルディ作曲の『四季』を用いた同タイトルの作品は2007年5月にモントリオールで発表された。ビゴンゼッティは「人類の歴史の中で繰り返 されてきた四季、男と女の感情レベルで繰り返されてきた四季、それを描くことで、我々の存在そのものの意味を問いたかった」という。
27人のダンサーを投入し、ソロで個人レベルの感情、群舞で人間の絆がマクロレベルで表現される。難易度の高いアクロバティックなポワント技術を駆使す ることによって、人間の脆さや危うさ、不安といった心のひだを繊細に描き出す。一方で、コンテンポラリーダンスを主体とする同カンパニーのダンサーならで はの筋肉質な肉体が、“何があっても脈々と続いてきた”人類の力強さと安定感を感じさせてくれる。

 ともすれば振付の独自性を引き出しにくい個性の強い曲だが、ビゴンゼッティはメリハリの利いた構成力でコントロールを失わない。全体のトーンとし てはクラシックなつくりだが、ダンサーひとり一人の起用もうまい。「夏」では木田真理子がパ・ド・ドゥできめ細やかな女性像を、「冬」ではこだまはくとが 孤独な男の葛藤を表現したソロを、のびやかに表現していたのが印象的だった。

 この晩の二作品目は、2001年に初演された『カンタータ』。南イタリアに伝わる18~19世紀の大衆音楽を、4人の女性ミュージシャンがアコー ディオンや打楽器、ややドスの利いた歌声を響かせながらダンサーの間を練り歩く。ビゴンゼッティは「地中海の男と女の間で展開される挑発、情熱、喧嘩、嫉 妬」がテーマだという。舞台が町の広場と化し、ユニゾンの動きを多用することによって大衆の結束、そこに繰り広げられる男女のドラマがコントラストとして 描かれる。

 試みとしては興味深かったが、ミュージシャン(グルッポ・ミュージカーレ・アシュルド)のプレゼンスが大きすぎるためか、全体的にはお祭り色が強 く、民族舞踊をモチーフにしたシンプルな振りが、果たしてコンテンポラリーダンスの枠組みの中で捉えられたものだったのかどうかは疑問だった。しかし、客 席をも巻き込む「群集ダンス」の力強さは出色で、舞台のフィナーレをしめくくる効果は抜群だった。

 公演後、主催者から来年の「夏のダンスフェスティバル」への招待カンパニーの発表があった。2年前に同フェスティバルで連日完売の人気を博したアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンスシアターだ。今度はどんなプログラムを用意してくるのか楽しみだ。

『カンタータ』 『カンタータ』