ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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斎藤 珠里 text by Julie Saito 
[2007.10.10]

CORRIER DE DANSE DE PARIS

パリ・ダンス 2007・2008公演情報

  パリ国立オペラの演目にコンテンポラリー作品が増えたとはいえ、ガルニエ宮がクラシック・バレエの殿堂であることは間違いない。これに対し、セーヌ川に面 したパリ市立劇場(テアトル・ドラビル)は、コンテンポラリー・ダンスのメッカである。1985年から同劇場監督を24年余りにわたって務めてきたジェ ラール・ヴィオレットは今シーズン限りで引退するが、無名だった多くの若手振付家を発見し、活動の場を提供してきたことにより、フランスにおけるコンテン ポラリー・ダンスの歴史が描かれてきたといっても過言でないだろう。
 今シーズンは、開幕公演に、ベルギー・アントワープのトンネルヒュスを拠点に活動しているシディ・ラルビ・シェルカウイの『神話』(Myth)が9月25~10月6日、初演された。賛否両論を巻き起こしているが、全公演が完売という話題を呼んでいる。
 シーズン前半の注目作品を紹介したい。

『神話』



 モンペリエ国立振付センター所属のマチルド・モニエが現代作曲家リゲティの音楽に振付けた新作『9人ダンサーのためのテンポ76』が10月9日~13 日、披露される。モニエは、コンテンポラリー界ではタブーとされてきたユニゾンの動きを作品の中心に据えるが、クラシック・バレエでソリストにスポットラ イトを当てるための群舞のユニゾンとは趣を異にする。決まった型ではなく、個人個人の感情や感覚、存在感、脆さを表現するための枠組みのためとして使って いるのだ。周囲と協調しながら日々、生きようとする私たち現代人のぎこちない心象そのものが、緻密な音と輝きを求めて止まなかったリゲティの音楽を背景 に、浮かび上がるに違いない。

『9人のためのアムジャッド』

  10月16~27日は、アラン・プラテルがダンサー10人、音楽家9人、ソプラノ1人のためにつくった作品『聖母マリアの祈りvsprs』が再演され る。2006年に世界初演された同作品は、プラテルがかつて芸術家グループを集めて独自路線を歩んだカンパニーBallet C de la Bとの20年間を記念する舞台だった。タイトルは、モンテヴェルディの曲『聖母マリアの夕べの祈り』に由来し、ダンス、サーカス、音楽という異なった分野 から集まった芸術家たちによる作品だ。人間のみの感じられる愛と苦悩の狭間を表現している。
プラテル曰く「この種のテーマで作業することによって、現実あるいは人生からそれほど遠ざかっていないということに気づかされるのです」。モンテヴェル ディが作品にこめたメッセージを、現代社会における宗教感にも照らしている。現代への警鐘を鳴らすとともに、寛容さへの呼びかけでもある。とはいえ、人間 の心のテンションが上がっても、そこに爆笑を誘うような一面ものぞかせるのが、プラテルの魅力でもある。

 カナダの振付家エドゥアール・ロックが率いるラ・ラ・ラ・ヒューマンステップスによる新作『9人のためのアムジャッド』が11月21日~30日、初演さ れる。80年代から凝縮された世界を追い求めてきたロックの切り口は、大きく転換しつつある。デビュー当初は、身体表現を水平面に限って追求してきたが、 最近10年は垂直面の動きに焦点を移動し、ダンサーたちがトゥシューズを多用するようになっている。野性味を残しつつ、コントロールされた身体の実験を通 して、ロックは美学のエッセンスを模索する。

公演プログラムの詳細および予約方法などについては、以下のサイトを参照されたい。
www.theatredelaville-paris.com