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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2006.07.10]

パリ・オペラ座<モーリス・ベジャールの夕べ>

 パリ・オペラ座バレエ団は、シーズン最後に入り、バスティーユで<モーリス・ベジャールの夕べ>、ガルニエでジョン・ノイマイヤー振付『椿姫』と2演目の平行上演となり、真夏の暑さが続く中、連日両劇場で白熱した舞台を繰り広げた。

 6月19日に初日の幕を明けた<ベジャールの夕べ>は、バルトーク曲『中国の不思議な役人』、ピエール・アンリ曲『扉とため息のためのヴァリアシオ ン』、ラヴェル曲『ボレロ』の3本立て。このうち、今回初めてオペラ座のレパートリーに入ったのは『扉とため息のためのヴァリアシオン』。扉の開閉の音や 吐息の音などで合成されたピエール・アンリ(当日公演に臨席)の音響で、7人のダンサーが16のテーマをもとに即興で踊るもの。コンサート・ピースでは、 26のヴァリアシオンで構成された50分の作品だったのが、ダンスでは35分に縮小されている。毎日、くじで順番が決まるので、当然ながらその都度作品が 変わるのが見どころ。音楽も振付も初演当時(音楽は63年、振付は65年)はさぞかし実験的だっただろうと想像はできるものの、今ではそれほど目新しさは 感じられない。最近、60年代の実験的ダンスが復活する傾向にあるが、概してレトロな印象を受ける。

 カデール・ベラルビ、ウィルフリード・ロモリ、ステファニー・ロンベルグ、ジェレミー・ベランガール、アリス・ルナヴァン、ジル・イゾアール、ジャン= フィリップ・デュリーら出演者は、いずれも個性的で、デュオやトリオでは、即興とは思えないようなタイミングの一致を見せた。

<扉とため息のためのヴァリアシオン>
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 本拠地で久々の上演となった名作『ボレロ』は、メロディーが、ニコラ・ル・リッシュ、マリ=アニエス・ジロー、ステファニー・ロンベルグの3交替という 新しいキャスティングでお目見え。初日は、ル・リッシュが一つ一つのポーズや動きを端正に決め、『アポロ』を見るような風格を感じさせた。ジョルジュ・ド ンのような野性味はあまり感じられないものの、洗練されたフランス的エスプリの濃い『ボレロ』であった。終演後は、客席総立ちとなり、ル・リッシュとロモ リに脇を支えられたベジャールが舞台袖から姿を見せると、拍手はひときわ高まった。

 しかし今回の発見は、2日目に登場したジローのメロディーの方であったかもしれない。ジローには、月の女神のような強烈な光彩を放ち、周りの男性のみならず観客をも魅惑してしまう魔力がある。
 冒頭の『中国の不思議な役人』は、カデール・ベラルビの中国人、ウィルフリード・ロモリのボス、アレッシオ・カルボーネの情婦という顔ぶれで、3年ぶりの再演ということで余裕が見られ、群舞に至るまで、怪奇的な雰囲気をよく醸し出していた。
 演奏はヴェロ・パーン指揮パリ・オペラ座管。公演は7月14日まで。

<ボレロ>ニコラ・ル・リッシュ(メロディー)
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