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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.05.10]

●パリ・オペラ座ヌレエフ版『シンデレラ』再演

 パリ・オペラ座バレエ団の4月公演『シンデレラ』は、シンデレラの相手役であるスター俳優役(王子役)に当初予定されていた4人のうち3人が負傷のため、降板するというアクシデントに見舞われた中、4月18日オペラ・ガルニエで幕を開けた。

 プロコフィエフ曲『シンデレラ』は、1986年にヌレエフの演出、振付により初演され、今回は、2000年の春以来5年ぶりの再演。 ヌレエフ作品の中で上演数が少ない作品だが、舞台を1930年代のハリウッドの成功物語に置き換えたアイディアが秀逸で(装置:イオネスコ、衣裳:森英恵)、ヌレエフのオリジナル振付も、プロコフィエフの音楽の現代的な響きをよくとらえている。

 初日のシンデレラは、アニエス・ルテステュ。 前回は、ジョゼ・マルティネズと組んだが、今回はジャン=ギヨーム・バールが相手役。  第2幕と第3幕、ハリウッドのスタジオで踊られるパ・ド・ドゥは、華やいだ雰囲気で、エトワール・カップルの貫禄を見せた。  ルテステュは踊りは申し分ないので、もう一つ演技にメリハリがつくと、芝居が盛り上がりそう。
 継母にはすでに定評あるマルティネズが扮し、とげのある独特の役作りで、見る者を引き込んでしまう。 姉妹役のカリン・アヴェルティとレティシア・ピュジョルも芸達達者。  プロデューサー役のウィルフリード・ロモリは、ヌレエフをほうふつとさせる風格があり、舞踊教師役のエマニュエル・ティボーは、きびきびした動きで、目が離せない存在。 このような名脇役たちに支えられて、初日は充実した一夜となった。


ルテステユ

ルテステュ&バール

継母と二人の姉

 

 さて、二日目は、オレリー・デュポンとマニュエル・ルグリの予定のところ、ルグリの負傷により、 彼の代役として、まず23歳のスジェ、フロリアン・マニュネが登場した。 マニュネは99年にバレエ学校を卒業、同期にミリアム・ウルド=ブラーム、ジュリエット・ジェルネズらがいる。  2004年にカルポー賞受賞。同年3月のクロード・べッシー・ガラで、マチュー・ガニオとドロテ・ジルベールとともに、ノイマイヤーの『ヨンダリング』を踊ったのが記憶に新しいが、 ソリストとしての経験がほとんどないので、突然の抜擢にファンや関係者はドキドキしながら開幕を迎えた。

スター俳優が登場するのは、第2幕第2場から。 マニュネは、大階段から駆け下りてくる最初のソロもスマートにこなし、シンデレラとのパ・ド・ドのサポートもデュポンにリードされながら、安定したところを見せた。  いきなりの全幕ものの主役という大役を前に、物怖じせず、堂々とした物腰が心地よい。上背があり、ロベルト・ボッレに似たところもある。  あとテクニックと役作りに深みが出れば、貴重なダンスール・ノーブルになるかもしれない。 それにしても、短期間にここまで仕上げたのは、ローラン・イレールの指導(当日も、客席で舞台を見守っていた)のおかげにほかならないだろう。

デュポン&マニュネ

 


デュポン&マニュネ
 肝心のタイトル・ロールのデュポンが後になってしまったが、この役は、デュポンにとって、エトワールになって以来、最も成功した当たり役の一つで、 事実、今回も本当のハリウッドの女優を思わせるあでやかな美しさで辺りを払り、さすがだった。
この日の継母はティボー。 インパクトの強い演技だったが、この人には、主役の方がふさわしいとつくづく思う。 

公演は5月4日まで。 このほか、クレールマリ・オスタ&ジェレミー・ベランガール、デルフィーヌ・ムッサン&カール・パケットなどのペアが日替わりで登場した。

 

●デルフィーヌ・ムッサン エトワールに

5月3日ガルニエで行われたヌレエフ版『シンデレラ』で、タイトル・ロールのシンデレラを踊ったプルミエール・ダンスーズのデルフィーヌ・ムッサン(36歳)が、舞台終了後、エトワールに任命された。 この日は、2月にウィルフリード・ロモリがエトワールに任命されて、ちょうど三ヶ月後に当たる。ムッサンは、今回の『シンデレラ』では、4月28日も踊る予定だったが、手の怪我のためキャンセル。 5月3日は、怪我を押しての出演で、見事エトワール昇格を果たした。

15歳で、オペラ座バレエ団に入団したムッサンは、1986年コリフェ、88年スジェ、94年プルミエールに進級。88年のパリ国際舞踊コンクールで、 現在の夫君、リオネル・ドラノエと共に、審査員特別賞および批評家賞を受賞し、バレエ団のホープと目される。 89年に、<アルカ・ダンス>の公演で来日して以来、オペラ座バレエ団の来日の他、ピエトラガラやルグリの主宰するグループ公演や、 レニングラード国立バレエのゲストとして、たびたび来日し、日本にもファンが多い。

オデット=オディール、キトリ、ニキヤ、マノン、アナスタシア(『イワン雷帝』)など全幕ものの主役を数多く演じている他、 バランシン、ロビンス、プティ、キリアン、フォーサイス、ノイマイヤー等の現代作品にも定評があり、事実上のエトワールと言ってもよい活躍をしているムッサンの昇格は、長年待ち望まれたものだった。

今シーズンは、5月半ばに行われるオペラ座のヴェネツィア公演で、ノイマイヤーの『シルヴィア』のダイアナを演じるほか、7月のローラン・プティ・プロでは、『アルルの女』を踊ることが決まっている。