ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Paris <パリ>: 最新の記事

From Paris <パリ>: 月別アーカイブ

渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.02.10]
最近のバレエ界の話題から

●ニジンスキー夫妻一つのお墓に

  パリ、モンマルトル墓地に眠る天才舞踊家ニジンスキーのお墓には、今でも舞踊家や愛好家、ツーリストなどが訪れ、花が絶えないが、この1月20日、ニジン スキーのお墓に、夫人のロモラの遺骨が一緒に納められ、静かな話題を呼んだ。ニジンスキーは、ディアギレフの主宰するバレエ・リュスの栄光のスターだった が、精神分裂症をわずらった末、1950年、ロンドンで亡くなるという悲劇的運命をたどった。その後、バレエ・リュス最後のスターで、パリ・オペラ座に君 臨していたセルジュ・リファールが、自分とニジンスキーと、18世紀に生まれた”舞踊の神”オーギュスト・ヴェストリスの三人のお墓を並べたいという夢を 抱き、モンマルトル墓地にニジンスキーのお墓を移した。しかし、自分の死後,夫と同じお墓に入りたいと願うロモラと、ニジンスキーのお墓の所有権を持つリ ファールとの間に確執が起こり、ロモラは、同じモンマルトルに別にお墓を買い、いつかニジンスキーと一緒に埋葬してほしいと願いながら、1978年に亡く なった。続いてリファールも、1986年にこの世を去り、パリの南のサント・ジュヌヴィエーヴ・デ・ボワのロシア人墓地に埋葬された。ちなみに、ここに は、ヌレエフ、クシェシンスカ、プレオブラジェンスカなど多くのロシア人亡命舞踊家たちが眠っている。

リファールの死後も、墓地の問題は、両家の遺族に引き継がれたが、2001年に、リファールの相続人であるリラン・ダルフェルド伯爵夫人の合意が得られ、ニジンスキー夫妻は、ようやく一緒に葬られることになった。

ニジンスキーのお墓
撮影/渡辺真弓

  ニジンスキー夫妻の眠るお墓は、22区画にある。ロモラの遺骨が、28区画から移されてまもなくお墓参りに出かけてみると、墓前には、写真のように立派な 花環が供えられていた。おそらく遺族が集まってセレモニーが行われたのだろう。ニジンスキーの魂もようやく安らぎを得たのではなかろうか。
 なお、ニジンスキーのお墓の上に飾られたペトルーシュカの彫刻は、後から付け足されたもの。もともと第5区画にあるヴェストリスのお墓と、そっくり同じ 形をしていたのがシンプルで好ましかったのだが、数年前、ペルミのディアギレフ博物館の館長によって、『考える人』のようなポーズをとった人形が設置され た。残念ながら、偉大な舞踊家の面影を伝えていないため、評判は芳しくないようだ。