ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2004.12.10]

●チェルカウイとカーンの新作ーテアトル・ド・ラ・ヴィル

 11月のテアトル・ド・ラ・ヴィルは、外来が続き、ベルギー からアラン・プラテル・バレエ団、イギリスからアクラム・カーンのカンパニーが招かれ、それぞれ新作を上演した。プラテル・バレエ団のシディ・ラルビ・ チェルカウイも、カーンも、それぞれ、モロッコとインドの血を引いているが、生まれはヨーロッパという点が共通しており、こうした文化的環境が、作風にも 影響しているのが興味深い。

  まずチェルカウイ振付の『TEMPUS FUGIT(流れる時)』(11月4日から13日)は、今夏のアヴィニヨン祭で上演されたもので、仮想の森を舞台に、移りゆく時の中で展開される人間模様 を、アクションとユーモアを交えて描いている。舞台奥には、銀色に輝く森が見られ、そこへ一人二人と迷い込んでいくところから舞台は始まる。民族的なメロ ディーを口ずさみながら、ダンサーたちが森を徘徊。スルスルと木によじ登って、ブランコに揺れながら、コルシカのポリフォニーのような合唱したかと思う と、逆さになって木から滑り降りるなど、冒頭から目が離せない。
ダンサーは、チェルカウイ自身を含む10人で、グループ・ウェシュムが舞台上で演奏する世界中の民族音楽に合わせて、自由に歌い踊る。踊りとギャグを交 互に織りまぜていく展開の仕方は、ややピナ・バウシュの作風を想起させるが、肌触りはハードでかなり異なっている。ダンサーは、いずれも驚くほど敏捷で、 木登りをはじめ、アクロバティックなソロなどで、その力量を遺憾なく発揮する。作品は、1時間40分休憩なし。ダンスのない、言葉によるギャグの場面が、 若干冗長に感じられたところもあった。

  この作品では、森の木立に登った時に生み出される数々のユニークな構図を見る者の記憶に刻み付けていく。ラスト近く、ダンサ-たちが、大合唱の中、右から左へと木にからみついていくシーンは、ノスタルジー溢れ、チェルカウイの豊かな想像力の一端に触れた思いがした。

  続いてお目見えしたカーンの新作は『MA』( 11月16日から20日)。タイトルは、母と大地を意味し、母なる大地へ捧げたオマージュといえようか。インドの伝統的な打楽器である太鼓や拍子木に民族 的歌唱、それにチェロの響きを融合した激しくリズミカルな音響の中で、カーンと6人のメンバーが踊る。インド舞踊のムードラが儀式的雰囲気をかもし出すと ともに、きりきりとしたすばやい回転系の動きからは、内に秘められた無限のエネルギーを感じさせる。前作の『カーシュ』より、動きのヴァリエーションが多 様になっており、終演後は、熱狂的な喝采を受けていた。シルヴィ・ギエムが、カ-ンの作品を踊りたがっていると聞いたが、もし実現すれば、非常に興味深い コラボレーションになることだろう。