ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2016.02.10]
[ 沖縄 ]

沖縄の洞窟ガンガラーの谷で前田奈美甫と沖縄の緑間玲貴を中心とした幻想的な舞台『トコイリヤ』

緑間玲貴公演『TKOIRIYA』
『ルミエール・ドゥ・レスト〜東方からの光〜』『I suz U』『Zaurak 〜灝気の星〜』緑間玲貴:振付、『samsara』『avec toi』上杉真由:振付

大阪の岡本博雄バレエスクール出身で、文化庁新進芸術家海外研修員としてワガノワ・バレエ学校に留学、マリインスキー・バレエ研修生などを経てチャイコフスキー記念東京バレエ団入団などで踊った経歴を持ち、バレエ・ガラなどでも活躍する前田奈美甫。関西の舞台で彼女の踊りを何度か観て、その清純で繊細な踊りに魅力を感じていた。そんな彼女が、今、沖縄のバレエダンサー・緑間玲貴と結婚し沖縄で活動しているのだという。そして、オリジナル作品の振付を意欲的に行う緑間が、今回、劇場ではなく、沖縄の洞窟ガンガラーの谷で公演を行うという。『トコイリヤ』と題されたこの公演に足を運んだ。

1602okinawa06.jpg 『ラ・シルフィード』
撮影:仲程 長治(すべて)

本州に比べれば格段に暖かい沖縄の1月、けれど、訪れた1月17日は雨だった。外も雨だけれど、会場である洞窟に入ると、普段でも落ちるのであろう水滴が、かなりの量落ちてくる。それは客席も舞台も同じで、観客はレインコート姿で鑑賞、舞台は開演まではたくさんのバケツが置かれていたけれど、開演してからはそれは取り除かれて、きっと水分でさぞや床のコンディションが・・・と思える中、普通のシューズでも凄いけれど、トウ・シューズで踊って・・・というだけでも凄いこと。
けれど、本当に凄さはそんなことを忘れさせるような踊りを観せてくれたこと。夜の洞窟に美しい照明が入り、バックに洞窟の外の樹々が灯りに照らされて見える中、集中度の高いバレエ、ダンスが繰り広げられたのは非日常的な体験で、その不思議な感覚に本当に観て良かったと思った。特に、見慣れている筈の『ラ・シルフィード』第2幕より森の景、後ろに見える自然の樹々の前で、少年っぽい魅力を残した緑間とピュアな妖精が似合う前田が、細かな脚さばきを駆使して美しいラインを見せて踊るパ・ド・ドゥは、この世に本物の妖精が現れたよう、幻想的な魅力に溢れていた。
沖縄の舞踊やピアノソロ、それに進行役の役者のコミカルで親しみやすいおしゃべりで繋ぎながら、7つの舞踊作品が上演された。緑間の作品、『ルミエール・ドゥ・レスト〜東方からの光〜』は、ラフマニノフやバッハ、ヘンデル、ショパンなどの音楽を使い、緑間自身と前田、沖縄舞踊の平敷勇也、3人のダンサーが組み合わせを変えながら、抽象的なシーンを踊り繋ぐもの。静かで集中度の高い、“祈り” を思わせる作品だと感じた。
ラストの2つは大阪で活躍する上杉真由の振付作品。上杉自身が踊った『samsara』は、ヴィヴァルディの曲に乗せたソロで、比較的静的でゆるやかな作品が多かったこの公演の中で、スピード感がありメリハリの効いたもの、表情に自然な強さがあったのも良い。最後は上杉振付で緑間と前田が踊った『avec toi』、愛し合う二人が優しく向き合う、ふんわりとした温かみを感じるもの、緑間と前田の個性にも合っており、構成も上手く良い作品だと感じた。
(2016年1月17日、ガンガラーの谷、ケイブカフェ)

1602okinawa04.jpg 『I suz U』 1602okinawa02.jpg 『ルミエール・ドゥ・レスト〜東方からの光』
1602okinawa01.jpg 『ルミエール・ドゥ・レスト〜東方からの光』 1602okinawa03.jpg 『ルミエール・ドゥ・レスト〜東方からの光』
1602okinawa07.jpg 『avec toi』 1602okinawa05.jpg 『samsara』
撮影:仲程 長治(すべて)