デヴィッド・ホールバーグ芸術監督の2年目、オーストラリア・バレエ団の年間プログラムが発表された

ワールドレポート/オーストラリア

岸 夕夏 Text by Yuka Kishi

Artistic Director David Hallberg announced the Australian Ballet 2022 season program

オーストラリア・バレエ団はデヴィッド・ホールバーグ芸術監督の2年目となる2022年のシーズンプログラムを10月26日に発表した。メインステージにラインナップされたのは5演目。厳しいロックダウン規制により、今年後半の公演中止を余儀なくされた3演目が2022年に繰り越されている。
来年、オーストラリア・バレエ団は創立60周年を迎える。40周年と50周年ではそれぞれガラ公演が催されたが、今回発表されたシーズンプログラムには60周年記念ガラ公演は含まれていない。だがオーストラリア初演となる『クンストカマー』は、60周年を祝うにふさわしい演目と、ホールバーグは2022年プログラム冊子で語っている。この作品は、ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)の60周年記念作品として2019年に制作されたもの。『クンストカマー』がNDT以外のカンパニーで上演されるのは、オーストラリア・バレエ団が初となる。

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The Australian Ballet "Anna Karenina" Imogen Chapman Photo. Simon Eeles

『アンナ・カレーニナ』
アメリカのジョフリー・バレエ団と共同制作した『アンナ・カレーニナ』は、オーストラリア・バレエ団の前芸術監督デヴィッド・マカリスターの在任最終年2020年の目玉演目だった。振付けたユーリ・ポソホフは、2018年の『ヌレエフ』に続いて、この作品でも2021年ブノワ賞振付家賞を受賞した。音楽はイリヤ・デムツキーが新たに作曲した。2022年シーズンプログラムでホールバーグは次のように記している。
「観客の心を揺さぶったこの作品の持つ力強さに私は感動しました。ヴィジュアルは豊潤で、カンパニー全体が踊りの名手になります。われわれのダンサーは演技者としても、踊り手としてもどちらも卓越しているのです。」

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TAB "Kunstkamer" Callum Linnane Photo. Simon Eeles

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TAB "Kunstkamer" Dimity Azoury Photo. Simon Eeles

『クンストカマー』
「驚異の部屋」と和訳されるKunstkamer。振付はコンテンポラリー・ダンスで著名な振付家たち、ポール・ライトフット、ソル・レオン、マルコ・ゲッケ、クリスタル・パイトの4人による共同創作。マルコ・ゲッケはこの作品で2021年ブノワ賞振付家賞にノミネートされた。18世紀の「驚異の部屋」に想を得た全2幕の『クンストカマー』は、歌、映像、セリフありと多彩な要素で、美と好奇心を拡大させる。

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TAB "Harlequinade" Ako Kondo Photo. Simon Eeles

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TAB "Harlequinade" Brett Chynoweth Photo. Simon Eeles

『アレルキナーダ』
マリウス・プティパが1900年に振付けたオリジナル作品は、長い間上演されることがなかったが、アメリカン・バレエ・シアターの常任振付家、アレクセイ・ラトマンスキーがおよそ百年の時を経て舞踊譜を復活させたもの。衣装もまた、サンクトペテルブルクのミュージアムに保管されている衣装を基にリメイクされている。

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The Australian Ballet "Instruments of Dance" Nathan Brook Photo. Simon Eeles

「トリプルビル ― Instruments of Dance (ダンスという楽器)
ニューヨーク・シティ・バレエの常任振付家、ジャスティン・ペック、英国ロイヤル・バレエの常任振付家、ウェイン・マクレガー、オーストラリア・バレエ団の常任振付家、アリス・トップら21世紀のコンテンポラリーダンスを牽引する振付家によるトリプルビル。音楽とダンスの繋がりは最も偉大な結合、とホールバーグは語る。
ペックの『Everywhere We Go (どこへ行っても)』はインディーズのシンガー・ソングライターの曲を用いて、ハリウッドとブロードウェイの熱気を伝える。9人の男性ダンサーによるマクレガーの『Obsidian Tear』は、バイオリンの楽曲とともに、惑星の陰影の深みとサイキの世界に導く。トップは新たに楽曲を委嘱した新作を発表する。

『ロミオとジュリエット』
ジョン・クランコが『ロミオとジュリエット』を振付けたのは、シュツットガルト・バレエの芸術監督に就任した翌年の1962年。奇しくもオーストラリア・バレエ団が誕生した年だ。1974年にレパートリ入りして以来、オーストラリア・バレエ団の多くのダンサーはこのクランコ版で輝き、成長してきた。

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The Australian Ballet_"Romeo and Juliet" Ako Kondo and Chengwu Guo. Photo Pierre Toussaint

オーストラリア・バレエ団のシーズンプログラムは、1分間のダイジェスト版動画にまとめられている。さらに、ホールバーグによる作品紹介とダイジェスト版より多くの舞台映像を含めた動画も公開している。[ダイジェスト版(1'00〜)/シーズンプログラムの映像と紹介 (2'02〜7'19")]

(この動画はオーストラリア・バレエ団の厚意によりチャコットダンスキューブへの掲載が許可された。Courtesy of the Australian Ballet, this video is permitted posting to Chacott Dance Cube Web Magazine World Report)

動画の後半では、3人の振付家へのオンライン・インタビューと、オーストラリア・バレエ団の2人のダンサーからホールバーグへのインタビューも含まれている。
ジャスティン・ペック(7'55"〜)/ ポール・ライトフット&ソル・レオン(13'37"〜)/
ダンサーからホールバーグへ(18'44"〜)
ペックとライトフットは作品ができた過程や内容を語っている。ホールバーグへの質問では、パンデミック渦中でのダンサーとの繋がりや、『クンストカマー』の具体的な内容を紹介している。
*「字幕(C)」「設定」ボタンで字幕の表示、自動翻訳を利用可能

『アンナ・カレーニナ』(Anna Karenina)
振付:ユーリ・ポソホフ / 音楽:イリヤ・デムツキー
2月25日〜3月9日 会場:アーツセンター・メルボルン
4月5〜23日 会場:シドニー・オペラハウス

『クンストカマー』 (Kunstkamer)
振付:ポール・ライトフット、ソル・レオン、クリスタル・パイト、マルコ・ゲッケ
音楽:L.Vベートーヴェン、ジャニス・ジョップリン、アルヴォ・ペルト、B バルトーク、Fシューベルト、Bブリテン、Hパーセル、ジョビー・タルボット他
4月29〜5月14日 会場:シドニーオペラハウス
6月3〜11日 会場:アーツセンター・メルボルン

『アレルキナーダ』 (Harlequinade)
振付:マリウス・プティパ、追加振付:アレクセイ・ラトマンスキー
音楽:リカルド・ドリゴ
6月17〜25日 会場:アーツセンター・メルボルン

"トリプルビル" 『Instruments of Dance』
『Everywhere We go (どこへ行っても)』
振付:ジャスティン・ペック 音楽:ステファン・スティーヴェンス
『Obsidian Tear』
振付:ウェイン・マクレガー 音楽:エサ・ペッカ=サロネン
アリス・トップ振付による新作、オーストラリア・バレエ団世界初演 ( New Work by Alice Topp)
9月23日〜10月1日 会場:アーツセンター・メルボルン
11月10〜26日 会場:シドニーオペラハウス

『ロミオとジュリエット』(Romeo & Juliet )
振付:ジョン・クランコ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
10月7〜18日 会場:アーツセンター・メルボルン
12月1〜21日 会場:シドニーオペラハウス

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Artists of the Australian Ballet Photo Pierre Toussaint

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