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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2015.06.10]
From Osaka -大阪-

薄井憲二バレエ・コレクション『瀕死の白鳥』舞踊譜展でH・アール・カオス、関典子他が踊った

薄井憲二バレエ・コレクション2015企画展「蘇る白鳥〜『瀕死の白鳥』舞踊譜をめぐって〜」
すずな あつこ text by Atsuko Suzuna

兵庫県立芸術文化センターが所蔵する薄井憲二バレエ・コレクション。バレエファンなら、バレエ・リュス関連の資料としてなど、雑誌で目にする機会も多いのではないだろうか。薄井憲二が1930年代から収集したというこのコレクションは、公演当日の公式プログラムやポスター、美術品としての価値も高いリトグラフや絵画、それにダンサー達の自筆の手紙まで含まれた総数6500点にのぼる世界有数規模のもの。昨年10月、このコレクションのキュレーターに神戸大学准教授で自らもダンサーである関典子が就任し、3月24日〜5月10日に、そのコレクションのなかで『瀕死の白鳥』に関連するものをピックアップした企画展「蘇る白鳥〜『瀕死の白鳥』舞踊譜をめぐって〜」を行った。その関連企画として、生のパフォーマンスも行われたのだ。これは「バレエ・コレクションが歴史的な過去ではなく、現在も息づいていること」を表したかったためという。訪れて、とても意義深い試みだと感じた。

osaka1506a_1-1.jpg バレエ版『瀕死の白鳥』
若林絵美 撮影=松本豪
osaka1506a_1-2.jpg バレエ版『瀕死の白鳥』
奥野亜衣 撮影=山下一夫
osaka1506a_2-4.jpg コンテンポラリー・ダンス版
『瀕死の白鳥』関典子 撮影=松本豪
osaka1506a_3-3.jpg H・アール・カオス版
『瀕死の白鳥』白河直子 撮影=小椋善文

まず、はじめに上演されたのは、バレエ版『瀕死の白鳥』。私が観た29日は奥野亜衣が踊った(28日は若林絵美)。これは、いつも目にしている背中を見せながらパ・ド・ブレで出てくる振付ではない。ミハイル・フォーキンの舞踊譜を、今回踊ったダンサー奥野と若林が読み解いて踊ったもの。ちなみに2人とも子供の頃からバレエを学び、現在、神戸大学で学ぶ。どこまでもピュアな白鳥の美しさに魅せられた。
2つ目は、この企画が初演となる関典子自作自演のコンテンポラリー・ダンス版『瀕死の白鳥』。死というものへの思いを凝縮したような作品。黒い布をまとっただけのような姿の関が、震える恐怖から最後には舞台を飛び出し、ロビーの常設されたオブジェの上に駆け上がり、金色に塗られた手を天に突きだしはてる。それが “終わり”というよりも、“開放”と、私には感じられた。
3つ目、ラストは、Hアール・カオス版『瀕死の白鳥』。大島早紀子振付で2010年に初演されたものを、この場に合うように改訂し、白河直子が踊った。白いシンプルな衣裳。無音の中の張り詰めた緊張感。オープンスペースで、これほどまでのピンと張った集中度を観客全員が体感することなんて、なかなかないのではないだろうか? 踊りの力の凄さを感じた。研ぎ澄まされた動き、切ない表情、そして力強さ──“死”の本質に正面から向き合っていると感じられる踊りに心がグイと引っ張られたような気がした。
合わせて20分程度と短い無料パフォーマンスながら、とても密度の濃い時間だった。
(2015年4月29日、兵庫県立芸術文化センター1階エントランス)

osaka1506a_2-2.jpg コンテンポラリー・ダンス版
『瀕死の白鳥』関典子 撮影=山下一夫
osaka1506a_2-7.jpg コンテンポラリー・ダンス版
『瀕死の白鳥』関典子撮影=山下一夫
osaka1506a_3-1.jpg H・アール・カオス版
『瀕死の白鳥』白河直子 撮影=小椋善文
osaka1506a_3-4.jpg H・アール・カオス版
『瀕死の白鳥』白河直子 撮影=小椋善文
osaka1506a_3-5.jpg H・アール・カオス版
『瀕死の白鳥』白河直子 撮影=山下一夫
osaka1506a_3-6.jpg H・アール・カオス版
『瀕死の白鳥』白河直子 撮影=山下一夫