クラシック・バレエから、モダン・ダンス、ジャズ・ダンス、フラメンコ、ラテン、コンテンポラリーなどが一堂に──「Dance freedom'25」
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
名古屋洋舞家協議会
こかチちかこ、川口節子ほか:振付
クラシック・バレエ、モダン・ダンス、コンテンポラリーのみならず、ジャズ・ダンスやフラメンコ、ラテンなど、とても幅広いジャンルのダンス関係者が集う名古屋洋舞家協議会の公演。16演目が上演されたなかで、特に印象に残ったものについて触れたい。
幕開け最初の演目、こかチちかこ振付の『ここはまだ宇宙の胎内~漂う~』は、映像や音楽編集も、こかが手がけての自作自演ソロ。胎内を思わせる鼓動のリズムのなか、踊る。バックの映像は、人のさまざまなシルエットの数々。自分も含めた"人間"というものに向き合っているように見えた。
小田真砂世振付の『Ex-wives』は、6人のホリゾントのシルエットから始まり、女の子の魅力をアピールするような、ショーダンス的な楽しさを持った作品。歌劇の男役のような男装の女性の存在感が大きかった。
杉江良子自作自演の『枯葉』はシャンソンに乗せての大人の魅力。
続いての音上観詩振付の『道しるべ~それぞれに』は、滝下純平が舞台上で歌う生の日本語の歌声に乗せて、若者たちのそれぞれの道をどれも応援するような。ハタキを持って登場する音上が良いアクセント。
松村一葉振付『The Ropes』は、バッハの曲に乗せてロープをさまざまに使う踊りを。電車遊び、綱引き、縄跳びも楽しい。趣向も良いが、踊ったダンサーのはしゃぐような楽しげな表情が、とても良い。
『Ex-wives』(振付:小田真砂世)
撮影:東海フォトデザインシステム
『道しるべ〜それぞれに』(振付:音上観詩)
撮影:東海フォトデザインシステム
第2部の最初は、越智久美子が振り付けて、ワディム・ソロマハをパートナーに中心を踊っての『ライモンダ』より。全幕から抜粋して構成し、クラシック・バレエの魅力を楽しませた。
玉田弘子振付『あの人は、、』は、石田音人の胡弓演奏とともに。誰もがどこかで聴いたような懐かしい曲が胡弓で奏でられる中、素朴なカバーに入った瓶?、水筒からお酒を飲んでは気持ちよく酔っ払うような、、、人生を重ね、大切な人を思い出しながらの良い時間、、、ちょっと淋しさもあって、、、そんな風に私には思えた。
佐野智一と佐野和美が振り付けた『ロクサーヌ』はスパニッシュだろうか。主演カップルのにらみ迫力が印象深い。
神原ゆかり振付の『Renacer(再生)』は、牧村直紀と神原ゆかりが踊った。牧村の苦悩を克服しようとするような、力強くダイナミックでキレのあるソロで始まり、やさしくしなやかな踊りの神原が登場する。"Renacer(再生)"とは、2人のこれからへの想いを描いているのだろうか。
そして、ラストは、川口節子振付『家族の肖像』。昭和初期の裕福な家を思わせる大きなソファー、後ろには幸せな大家族の写真。幕開け、背を向けた小さな男の子がソファーに走り寄ると、父母や兄弟姉妹が愛おしむ。だが、戦争が激しくなり、1人、2人と命を落とし、最後には少年一人に。
最後には──はじめと同じようにソファーに駆けていった少年は、突っ伏して嗚咽する。何度見ても涙がにじむ名作だ。今、世界は、これを昭和初期のこと、と、片付けられないことを悲しくも実感しながら観た。心に響く作品だ。
(2025年2月11日 アマノ芸術創造センター名古屋)
『The Ropes』(振付:松村一葉)
撮影:東海フォトデザインシステム
『ライモンダ』より(改訂振付:越智久美子)
越智久美子、ワディム・ソロマハ、他
撮影:東海フォトデザインシステム
『あの人は、、」(振付:玉田弘子)
玉田弘子
撮影:東海フォトデザインシステム
『ロクサーヌ』(振付:佐野智一、佐野和美)
撮影:東海フォトデザインシステム
『Renacer(再生)』(振付:神原ゆかり)
牧村直紀、神原ゆかり
撮影:東海フォトデザインシステム
『家族の肖像』(振付:川口節子)
撮影:東海フォトデザインシステム
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