『ドン・キホーテ』全幕を山田梨央のキトリ&豊永太優のバジルで、他にも盛りだくさんな構成──北山大西バレエ団第32回公演
- ワールドレポート
- 大阪・名古屋
掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
北山大西バレエ団
『ドン・キホーテ』山田梨央:改訂振付
『白鳥の湖』よりパ・ド・トロワ
山田梨央、大谷美夢羽、安田鶴洋
撮影:スタジオフォーマット
バレエだけでなく、この団体からバレエ指導に赴いている新体操の演技や代表の北山大介が指導を行なっているボイストレーニングクラスによる歌、休憩中のクラウン・パフォーマンスなどバラエティに富んだ公演。そのなかで、バレエについてレポートしたい。
全体を通して、伸び盛りと感じたのは安田鶴洋。まだジュニアの年齢ながら、コンクールでの良い結果のみならず、他のバレエ団の『くるみ割り人形』全幕に、フリッツ役として招かれるなど、活躍を目にする機会が増えてきた。今回も、山田梨央、大谷美夢羽と先輩二人をパートナーに『白鳥の湖』よりパ・ド・トロワ、コンクールで結果を出した『ドン・キホーテ』第3幕よりバジルのヴァリエーション、そして、『ドン・キホーテ』全幕では、なんと演技もしっかりとガマーシュを。どれも、とてもよく考えて踊りを創り上げていることが感じられ、しっかり形を見につけていることも、まだプロではない年齢と考えるとなかなかできないことだと思える。ただ、欲を言うと、ちょっと創り上げすぎていることが心配にもなってくる。もっと自然に踊ってみても良いかと思う。時には失敗しても良いから。それがプロになった時に、微妙な心情を表す際のナチュラルな表現に繋がるのではないかと思う。
『ドン・キホーテ』
キトリ:山田梨央、バジル:豊永太優
撮影:スタジオフォーマット
『ドン・キホーテ』
キトリ:山田梨央
撮影:スタジオフォーマット
『ドン・キホーテ』
キトリ:山田梨央
撮影:スタジオフォーマット
そして、メインの『ドン・キホーテ』全幕、キトリは山田梨央、バジルは豊永太優だ。山田は、グラン・パ・ド・ドゥのヴァリエーションで4~5回まわった?と思わせるトゥール、まわり終わりに速度を緩めてニュアンスを持たせるなど、高テクニックで楽しませながら、落ち着いた魅力も観せて。豊永もさすがのテクニック、そして、やんちゃな雰囲気がとにかくバジルにピッタリ。
ドン・キホーテを沖潮隆之、サンチョ・パンサを薮内暁大、ロレンツォを津村祐樹、エスパーダを有馬和弥と経験豊富で信頼できるダンサーたちが固める中、安田がガマーシュを踊ったのは、きっと、彼にとって、とても良い学びにもなったことだろう。
森の女王の大谷、そしてキューピットの龍王彩伊も好演。このバレエ団のキューピットは、先輩から後輩へと受け継がれるように、代々、小さくても、とても鮮やかな踊りを観せてくれる。彼女の成長もまた楽しみだ。
(2025年2月2日 大阪国際交流センター大ホール)
『ドン・キホーテ』
キトリ:山田梨央、バジル:豊永太優
撮影:スタジオフォーマット
『ドン・キホーテ』
ドン・キホーテ:沖潮隆之、サンチョ・パンサ:薮内暁大、ガマーシュ:安田鶴洋
撮影:スタジオフォーマット
『ドン・キホーテ』
バジル:豊永太優、キトリの友人:坂元美優、赤川安未
撮影:スタジオフォーマット
『ドン・キホーテ』エスパーダ:有馬和弥
撮影:スタジオフォーマット
記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。