クラシック・バレエのグラン・パ・ド・ドゥから数々の創作作品が並んだ「中部バレエフェスティバル」
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
日本バレエ協会中部支部
「中部バレエフェスティバル」
『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ(川口節子バレエ団)若林桃子、野黒美拓夢
© 和光写真
バレエ協会中部支部に所属する団体が、それぞれ、工夫を凝らして取り組んだ作品が上演された2日間。その2日目、27日の公演を観た。
第1部は「バレエコンサート」として、グラン・パ・ド・ドゥが3つ。最初は須山久美クラシックバレエによる『コッペリア』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。ベテランの女性のスワニルダと初々しい若手男性のフランツと思いながら観ていたら、女性が怪我での急遽の代役ということ。そしてその代役はフランツを踊った三谷凌平の母でもある伊勢直美。微笑ましくも親子でのパ・ド・ドゥだった。続いては川口節子バレエ団の『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥで、若林桃子と野黒美拓夢。伸び盛りの若手2人がとても楽しげに高テクニックを披露してくれた。3つ目は幸田バレエ教室と成瀬ひろみバレエスタジオの『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥ。スラッと背が高く華のある幸田空、自然でありながら味のある表現が良かった。羽佐田有基の素直でチャーミングな踊りも良い。
第2部はそれぞれの団体のオリジナル振付作品7つ。まず最初は川口節子バレエ団の『マカロニウエスタンズ』。松村一葉の振付で、21人のフレッシュなダンサーたちがアメリカのショーダンスを思わせる明るさを持って踊った。幕開け、幕が下50cmほどだけ開いて、トゥ・シューズを履いた大人数の足もとだけが見えるのもおしゃれ。続いては宮西圭子バレエ団の『アンプロンプチュ』。ミヨー・ダリウスの曲に宮西が振付、斎藤侑里奈を中心に7人で踊り、人間関係をさりげなく描いたように見えた。3つ目は成瀬ひろみバレエスタジオの『BEE』。成瀬の振付で、5人のダンサーが黒縁メガネと触覚をつけた蜂の姿でユーモアたっぷりに楽しませてくれた。
幸田バレエ教室は、幸田空の振付で坂本龍一の曲に乗せての『戦場のメリークリスマス』。幸田含む8人で、ロングヘアーをなびかせて爽やかな笑顔で踊っていたかと思うと、淋しげ、不安、悲しみといった感情が繊細な音楽とともにかぶさっていく。なかなか良い振付。その後は、成瀬ひろみバレエスタジオの『スパニッシュダンス』(振付:成瀬ひろみ)で、大人の女性の魅力を楽しみ、川口節子バレエ団の『夫婦』。川口の振付で中谷友香と高宮直秀(バレエスタジオユニコーン)が踊った。夫婦が並び共に歩む──その長い年月のなかで起こるさまざまなこと、さまざまな感情のぶつかり合いを静かなトーンで描いた。川口の振付は、こういった繊細な感情を描くことに本当に長けているといつも思う。
そしてラストは岡田純奈バレエ団の『ライモンダ』より夢の情景。岡田純奈の振り付けで、『ライモンダ』から抜粋しての上演。石黒優美のライモンダとコール・ド・バレエ。クラシックのキラキラとした美しさで会場を包んで公演を締めくくった。
(2025年3月27日 アマノ芸術創造センター名古屋)
『コッペリア』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ(須山仁美クラシックバレエ)伊勢直美、三谷凌平
© 和光写真
『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥ(幸田バレエ教室・成瀬ひろみバレエスタジオ)幸田空、羽佐田有基
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『マカロニウエスタンズ』(川口節子バレエ団)
© 和光写真
『アンプロンプチュ』(宮西圭子バレエ団)
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『BEE』(成瀬ひろみバレエスタジオ)
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『戦場のメリークリスマス』(幸田バレエ教室)
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『スパニッシュダンス』(成瀬ひろみバレエスタジオ)
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『夫婦』(川口節子バレエ団)
中谷友香、高宮直秀(バレエスタジオユニコーン)
© 和光写真
『ライモンダ』より夢の情景(岡田純奈バレエ団) © 和光写真
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