キトリの佐々木夢奈、バジルの奥村康祐を筆頭に関西育ちのダンサーが集結──バレエ芸術劇場
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
バレエ協会関西支部バレエ芸術劇場
『ドン・キホーテ』山口章:改訂振付
コミカルさ満載でバレエテクニックもふんだん──『ドン・キホーテ』は関西のダンサーたち、そして観客にも最も適した演目かもしれない、そんな風に思わせる舞台だった。ともすると踊りの見せ場の連続になってしまいそうになるこの作品だが、山口章の改定振付は、物語としての意味を観客に伝えることにとても丁寧に取り組んでいた。かなりアレンジされた構成の音楽を楽しく聴かせてくれたのは冨田実里指揮、関西フィルハーモニー管弦楽団。
『ドン・キホーテ』
ドン・キホーテ:内野晶博、サンチョ・パンサ:末原雅広
撮影:古都栄二(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
キトリ:佐々木夢奈、バジル:奥村康祐
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
まず、ドン・キホーテ(内野晶博)がドルシネアに憧れるようになった経緯が夢の場の穏やかな音楽を使いながら描かれ、続いて、サンチョ・パンサがやって来てと通常よりかなり充実した長さのプロローグで始まる。その後もドルシネアの幻影は全幕にわたって要所要所に現れ、さながらドン・キホーテの旅を導いているかのよう。
第1幕が開くと、広場。明るい楽しさが弾ける。キトリの佐々木夢奈はキュートなルックスに高い技術、快活でちょっとお転婆な、飾らない魅力がこの役によく合う。そしてバジルは奥村康祐。やんちゃ坊主がはしゃいでいるような楽しさが身体中から溢れ、もちろんテクニックも秀逸だった。
脇もそれぞれ実力派で、町の踊り子の小森世楽の伸び伸びとした素直な踊り、ルックスも踊りの切れもさすがの今井大輔のエスパーダ。それに普段、美しい役で観ることが多い末原雅広の体当たりのサンチョ・パンサ、"間"が絶妙で笑いを誘った山本康督のガマーシュ。関西人だからこそだろうか?
第3幕の酒場の場面でメルセデスを踊った椿原せいかの色白で大人の魅力を感じさせる踊りも目を引いた。
そして、この演出独特だったのが、その酒場、居酒屋の女主人(堀端三由季)が、そこでトレアドールたちと豪快な楽しさのにジグを踊ったのち、なんと、キトリに失恋したガマーシュと結ばれるのだ。その後の結婚式は、もちろん、キトリとバジルの結婚式だが、ガマーシュと女主人も。
キトリとバジルの余裕すら感じせる高テクニックのグラン・パ・ド・ドゥ、コーダではキトリのトリプルも入ったフェッテ、バジルの美しく伸びやかなアラセゴン・トゥールに会場は大盛り上がり。
2カップルの幸せとともに幕を閉じた。
(2025年2月1日 フェスティバルホール)
『ドン・キホーテ』
町の踊り子:小森世楽、エスパーダ:今井大輔
影:阪本 愛(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
キトリ:佐々木夢奈、バジル:奥村康祐
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
ドルシネア:佐々木夢奈、森の女王:吉田裕香、キューピット:田野ひかり
撮影:古都栄二(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
メルセデス:椿原せいか
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
居酒屋の女主人:堀端三由季
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
『ドン・キホーテ』
キトリ:佐々木夢奈、バジル:奥村康祐
撮影:古都栄二(テス大阪)
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