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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2014.01.10]
From Osaka -大阪-

石井潤が母に捧げた新作『レクイエム~母へのオマージュ~』、石井春枝追悼公演

石井アカデミー・ド・バレエ
『レ・シルフィード』ミハイル・フォーキン:振付、『レクイエム~母へのオマージュ~』石井潤:振付、『ラブソディー・イン・ブルー』石井潤:振付

石井バレエと言えば、京都の洋舞を初期から支えて来た存在。1890年岡山生まれ、帝国劇場歌劇部の第1期生としてローシーにバレエを習った石井行康が昭和4年に石井舞踊研究所として設立したものが元で、関東大震災の後、活動の場を京都に移しアッファビリタ舞踊研究所としてスタート、後に石井舞踊研究所とした。そこに入門し、18歳で行康の養女となり研究所の中心的な存在として京都を中心にバレエの普及に努めたのが石井春枝。昭和20年に行康が亡くなった後、代表となり、石井春枝バレエ研究所と改名、夫の一久とともに50年にわたり研究所を支えた。古典バレエと並行して、『花と騎士』『禿山の一夜』『ルーブルの噴水』『ハズの首輪』『絞首刑』など多くの創作作品を発表、多くの優秀な生徒を育てた。
その一人が息子でもある石井潤だ。69年の第1回モスクワ国際バレエコンクールで銅賞を受賞、ダンサーとしてチューリッヒやボン、フランクフルトで活躍し、83年に帰国した後には意欲的に創作活動に取り組み、多くの賞も受賞。新国立劇場でも活躍したことをご存知の方は多いだろう。現在、母の研究所を石井アカデミー・ド・バレエと改名し、ボン市立オペラハウスのプリマとして活躍した妻・石井優子とともに指導を行っている。その石井潤が母への想いを込めて創った新作を中心に行われたのがこの公演。

osaka1401a_07.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪) 

幕開け、まず上演されたのは『レ・シルフィード』。この団体がきちんとしたクラシック・バレエを学んだ上で成り立っているのが分かる演目。中心のカップル、プレリュードと詩人を踊ったのは中村美佳と楊在恒。ワルツの夏目美和子、マズルカの田中晴子ともに、きちんとしたバレエの基礎の上に表現ができるダンサーたち。特に中村の踊りはやさしい笑顔をともなって柔らかく、崇高な上方への志向を感じさせるもの。楊の踊りも丁寧でパ・ド・ドゥはとても幸せそうな雰囲気に包まれていた。コーダでは他のソリストたちも空気と遊ぶ感じが良く出ていて良かった。
続いて上演されたのが新作、『レクイエム〜母へのオマージュ〜』。石井春枝を表すと思われる母なる存在(寺田みさこ)から、多くの弟子たちが生まれる場面から始まる。
あどけなくものびのびと踊るオレンジのTシャツの少年(荒木研史朗)は振付者・石井潤自身を表しているのだろう。戦渦や関東大震災だろうか、さまざまな困難に直面しながらも強く生きた女性やその周りの多くの人々が描かれた。特に寺田みさこの踊りが強く心に迫って来た。この人は“人間”を踊ることができるダンサーだとつくづく思う。美しいだけではない圧倒的な存在感。人生の苦悩や幸せ、さまざまなものを心と体両方の真っ中心から表にワーッと出すような……。最後は蝋燭の明かりで優しく故人を送る、やさしく、心を落ち着かせる終わり方で、しみじみとした想いに耽った。
公演のラストは、アメリカのショーダンス的な魅力の作品『ラプソディー・イン・ブルー』。特に観客を楽しませるショーを知り尽くしたように見える瀬戸口高史の表情、踊りが印象に残った。
(2013年11月22日 びわ湖ホール中ホール)

osaka1401a_01.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪) osaka1401a_02.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪)
osaka1401a_03.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪) osaka1401a_06.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪)
osaka1401a_08.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1401a_09.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪)
osaka1401a_11.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1401a_12.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪)