ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2013.03.11]
From Osaka -大阪-

闊達な二人のダンサーが創った「ファウスト」の物語

小林十市×大柴拓磨ダンスアクト
『Faust Mephistpheles』出演:小林十市・大柴拓磨 、作・演出・振付:大柴拓磨

2011年12月に東京、新宿BLAZEで上演された小林十市×大柴拓磨ダンスアクト『ファウスト・メフィスト』の関西公演が実現した。
幕が開くと、まず、この件を小林が大柴に依頼する光景が、セリフのある演劇として繰り広げられる。壮大な物語『ファウスト』を二人だけが出演する舞台作品として行おうという奇想天外な依頼、驚きながらも引き受ける大柴───本当に、というか実際これに近い形で依頼されたようで、それを受けた大柴が創りあげ、二人で踊って仕上げたのがこの作品だ。
壮大な物語を1時間20分ほどのコンパクトな長さに仕立て、出演するのは、小林と大柴の二人だけ。大道具も、椅子や、バレエのレッスンバーなど簡単なものだけ。だが、抽象的に、それらがきちんと必要な大道具の役割を果たす。絶対に必要な“女性”役は、胸から出す真っ赤な布だ。赤い布と仲むつまじく踊り、別のシーンでは、その布はボロボロに引き裂かれ・・・。とてもセンスの良い道具の使い方だと実感した。

osaka1303a_0143.jpg 撮影:尾鼻文雄

小林の前に軽い調子で現れる悪魔は大柴、その飄々とした様子に、最近読んだ川村元気の小説「世界から猫が消えたなら」に登場するアロハシャツを着た悪魔を思い出した。もしかすると、悪魔というのは、ホントにこんな風なのかもしれない、いや、分からないけれど。とにかく、その飄々とした大柴にリードされてテンポ良く進む舞台。まじめのかたまりのように見える小林が突然、大柴とともにHIPHOPを踊ったりとクルクル変わるシーンを楽しんでるうちに、物語はどんどん進んでいく。
それに引き込まれながら、やはり、二人ともが良いダンサーであるということ、観客の心に“何か”を届ける力を持ったダンサーであることを実感する。こんなにコミカルで肩の凝らない作品に仕上がっていながら、そのなかには、“生”や“死”、“人生”、“愛”───といった根本的なこと、哲学の永遠のテーマがきちんと表現されているのだ。大柴には演出のとても優れた力があることを、あらためて感じた。また、以前から、彼の作品が良いと思うことは多いのだが、気心が知れすぎた仲間と創った作品のなかでは、正直なところ、ちょっと馴れ合いのようなものが感じられることもあったような気がする。だが、今回はコミカルさや肩の凝らなさは残した上で、そういった馴れ合いが感じられなかった分、さらにレベルの高いものに仕上がっていた。プラス、大きいのは小林の繊細でピュアな表現───。ラストに、スペシャル・ボーナス・トラックも上演されたが、本当に、言葉に出来ない───というのは、こういうレビューで使ってはいけない言葉かもしれないのだが、言葉で表せないものだからこそ、踊りで表しているんだと実感できる踊りで心に強く響いた。
(2013年2月15日 クレオ大阪西館)

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osaka1303a_0955.jpg osaka1303a_0990.jpg
osaka1303a_1011.jpg 撮影:尾鼻文雄(すべて)