ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2011.06.10]
From Nagoya -名古屋-

深川作品他、古典からコンテンポラリーまでを若いダンサーたちが踊った

振付:深川 秀夫・井口 裕之・山本 美樹子
テアトル・ド・バレエ カンパニー公演 CHALLENGE DANCE 2011 〜クラシック&コンテンポラリー〜

「妥協のない舞台作り」を目標に掲げるテアトル・ド・バレエ カンパニーは、2日間にわたって3人の振付家によるチャレンジングな作品を上演した。また今回はテアトル・ド・バレエアカデミージュニアバレエ団の設立記念公演でもあった。
主宰の塚本洋子は、バレエ団の創立当初から若きダンサーの育成に努め、バレエコンクールで指導者賞を受賞するなど、十分な成果を収めてきた。過去にはローザンヌ国際バレエコンクールに入賞した荒井祐子や榊原弘子、ヴァルナやジャクソンのコンクールで上位入賞した米沢唯がこのバレエ団出身である。現在は、2人の若手、直塚美穂、畑戸利江子が複数の全国舞踊コンクールで上位入賞を果たすなど目覚しい結果を残している。
2日公演とも幕開けはこの13歳と15歳の2人を含むジュニアバレエ団のお披露目的作品、山本美樹子振付の『カーニバル』。オッフェンバックの快活な音楽を用いた難解な振付に、色鮮やかなチュチュを纏ったバレリーナの卵たちが挑み、若いエネルギーを充満させた。直塚はしなりのある上半身と長い肢体を十分に生かしたバネのある動きが、畑戸は愛くるしい容姿に丁寧な動きが印象的。これまでの結果に満足することなく、あらゆることを貪欲に吸収して、世界に通用するダンサーを目指して欲しい。

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新国立劇場バレエ団の登録ダンサーでもある井口裕之は、昨年に引き続いて2日間の公演のために3作品を振付けた。中でも新作の『〜Blossom Blossom〜』は、オーディションで選ばれた女性9人と井口を含む男性2人で踊られた。緑のホリゾント幕を背景に、後ろ向きで舞台を横切るダンサーたちが、長めのワンピースを纏った身体を引きずるように移動するプロローグ。この作品はオフェンバックやアルヴォ・ペルトなどの多様な音楽の持ち味を活かし、物語性に囚われずにダンサーに合わせて振付したという。
特に中盤、ベンチに腰掛けた植杉有稀と水野陽刈による男女2人のデュオが、身体の接触や何気ないポーズや身振りで、男女の機微を細やかに表現していて秀逸だった。ジャン=フィリップ・グードのビートの効いた音楽に呼応しながら、ダンサーの身体から生み出させた動きがまた別のダンサーへとつながり、それが綾取りのように連綿と続いていく。タイミングがずれると絡まってしまうかもしれないそのスリリングな緊張感も2人のダンスをより洗練されたものにした。青木里英子と井口、水野によるパ・ドゥ・トロワや、4人の女性による武道的なゆったりと持続性のあるアンサンブルなど、構成もヴァラエティに富んでいる。そして最後は照明が明るく一転、オープニングと同じキラキラの音楽に合わせて、ダンサーたちが次々と走りこんでは跳び上がり、また走り去っていく。その姿は、タイトルどおり、小さな花たちが風に吹かれて舞い上がる、そんな情景を思い起こさせた。

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ほかにも井口はマイケル・ナイマンの音楽に触発された長身の亀田晴美が踊る『Thunder  Bird』、テーブルをエデンの園に見立て楽園追放を描いたという『Tabel Eden』を上演。後者では、植杉有稀、日比野星砂、そして井口自身がベージュのタイツで原初的な身体を思わせる神秘的かつ静謐なダンスを披露し、井口が優れたダンサーであることも証明してみせた。
そしていずれの日程もラストを飾ったのは、バレエ団の芸術監督であり、愛知を代表する振付家の深川秀夫。
初日は深川の代表作『シューマンに魅せられて』。黒のロマンティック・チュチュに真珠のネックレスを身につけた艶やかな女性たち。夜会に集まった淑女をイメージしたと深川が語っているように、シューマンの『ヴァイオリン協奏曲ニ短調』の旋律にのって、優美かつ華やかに踊られた。ヴァイオリンのソロでたっぷりと余韻豊かに踊る南部真希、山崎有紗と高宮直秀のしっとりとした大人の佇まいが印象に残る。オーディションで選抜されたダンサーたちは、複雑なステップをさり気なくこなす。深川は大人の振付で、ベテランダンサーたちの魅力を余すところなく引き出した。
2日目の深川作品は『レ・ファーム〜ジャンヌダルクのように〜』。サン=サーンスの音楽を用いて、女兵士たちが凛々しく戦う様を描いたという。13名の女性騎士が仮面を被り、腰を屈めてギャロップしながらトーシューズで床を蹴り上げる群舞。馬に跨る女兵士の凛々しい姿が整然と描写されていて圧巻。統一された群舞の迫力には、ジャンヌ・ダルクの崇高かつ孤高な魂の叫びをみるようだ。全体を通してフォーメーションの美しさとステップを組み合わせた深川風の振付が全開。バレエ団のプリマ・青木里英子は抜群のテクニックに加え、表現力に磨きがかかり、迫真の演技でジャンヌ・ダルクを演じた。
ほかにも、南部真希と高宮直秀による『海賊』、青木里英子と水野陽刈による『グラン・パ・クラシック』、畑戸利江子と水野陽刈による『コッペリア』、と直塚美穂と高宮直秀による『エスメラルダ』と4つのパ・ド・ドゥが披露されて、古典からネオ・クラッシック、そしてコンテンポラリーまで取り組んでいるバレエ団の高い志をあらためて示す機会となった。
(2011年5月14日 名古屋市芸術創造センター)

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撮影:岡村昌夫(テス大阪)
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