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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.11.10]
From Nagoya -名古屋-

色彩にあふれた『ドン・キホーテ』

越智インターナショナルバレエ団

今年60周年を迎えた越智インターナショナルバレエ団は、この1年間を60周年の記念周年として、継続的に公演を開催してきている。その60周年記念公演の7回目となる舞台は、バレエ団の最も得意とする『ドン・キホーテ』が選ばれた。
2日間に亘る公演は、キトリとバジルがダブルキャストで、10日は新鋭のマリア・コチェトワと越智友則、11日は越智久美子とワディム・ソロマハのベテランカップルが演じた。このうち初日を観ることができた。

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マリア・コチェトワは、ボリショイ・バレエ学校で学び、英国ロイヤル・バレエ団、サンフランシスコ・バレエなどで活躍している正統派のバレリーナ、そして言わずと知れた越智友則も、ヴァルナやモスクワなどの国際コンクールのメダリストだ。彼女と越智友則のカップルは、それぞれにテクニシャンぶりを披露しながらも、絶妙なパートナーシップを感じさせる。さらに初々しさも損なうことなく、その上さらに演技を追及する余裕すらみせる。小柄なマリアは小さな身体を空間いっぱいに広げ、キトリのおてんばぶりを表現。越智友則はそんなマリアをしっかりとサポートしつつ、終始安定した踊りと演技で作品全体を引っ張っていく。好感度の高いカップルだ。
『ドン・キホーテ』は、タイトルのドン・キホーテはサンチョパンサと共に脇役に追いやられ、通常の舞台では物語の進行役程度に登場するに過ぎない。しかし越智インターナショナルバレエの場合には、重要な脇役として、強いインパクトを残すことに成功している。ひょろひょろと背が高く、いかにも夢想家らしいドン・キホーテ(オレグ・ティモシェンコ)と、彼を導く小柄でしっかりのもののサンチョパンサ(アレクサンドル・ベラスクルスキー)。ロシア人2人の個性的な風貌も手伝って、簡潔な物語設定と、繊細な役作りで、物語バレエのキャラクターを明確に印象づけているのだ。

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さらにこの作品の特徴は、陽光溢れるスペインの風土が色彩豊かな美術や衣裳で表現された、その視覚的な美しさにあるだろう。太陽が輝くばかりの光溢れるバルセロナの広場、猥雑さと情熱が同居する居酒屋、パステルカラーでふんわりと柔らかな夢の場と、場面は色彩のオンパレード。越智インターナショナルバレエの女性陣は、その場面場面に応じて、アンサンブルでも身体いっぱい空間に軌跡を描き、全身で各自の役割を果たそうとしているように感じる。
例えば、居酒屋の場面では、カラフルな衣裳の男女が次々に登場し、魅惑的な踊りをみせる。特に、田中美子演じるジプシーの女は、エネルギッシュで魅惑的、体当たりの踊りで男たちを魅了した。
また夢の場では、森の女王の樋口紗季が丁寧な動きで森のゆったりとした雰囲気を紡ぎ出している。バレエ団団員による整ったコール・ド・バレエとの調和も美しかった。
全体的に正確なテクニックに裏打ちされた演技もよりリアルでコミカル、さらにセントラル交響楽団のリリカルな演奏が、その色彩にさらなる輝きをもたらしている。スペインの色彩に溢れた『ドン・キホーテ』だった。
(2009年10月10日 愛知県芸術劇場大ホール)

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撮影:岡村昌夫(テス大阪)・野田直樹(テス大阪)
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