ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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亀田恵子 text by Keiko Kameda 
[2009.10.13]
From Nagoya -名古屋-

大植真太郎ダンスショーイング Dance Showorkshop『見聞き、そして試す。』

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愛知芸術文化センター大リハーサル室で、少し変わったショーイングが行われた。『見聞き、そして試す。』というコピーがデザインされたショーイングのチラシにあるように、このショーイングでは作品を一方的に見せるものではなく、「見せ方」を変えつつ、ときに観客の参加も交えながら進められるというものだった。
愛知県芸術劇場大リハーサル室。この日、この会場では事前の応募によって集まった希望者と大植真太郎、柳本雅寛、平原慎太郎らによるワークショップも開催されていたこともあり、ショーイングの際の観客席にはワークショップ参加者(アーティストと親しいコミュニケーションを持った人たち)と一般の観客とが混じり合った状態になっていた。ワークショップ後のラフな服装の人と会社帰りのスーツ姿の人がいる客席には、通常の公演とは違ったやわらかい雰囲気も感じられたが、このショーイングが9月11日(金)-13日(日)に彩の国さいたま芸術劇場で行われるdance today 2009で発表される大植・柳本・平原によって結成されたユニットC/Ompanyの新作『イキ、シ、タイ』の試演という位置づけで行われたこととも関係があるのだろう。大植はショーイングのはじまりにあたって「まだまだ完成途中の作品。気楽に見てほしい。」と観客に向けてメッセージを伝えていた。
 

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ショーイングは大きく分けて3つほどのパートに分かれて進められた。
先ず1つめのパートでは、無音の中で3人が20分ほど作品の断片を見せた。高い身体能力を感じさせる力強さとキレのある大胆な動きがコンタクト・インプロビゼーションのテクニックを取り入れながら展開していく流れは見ていて気持ちがいい。この気持ちの良い動きの質は即興のようにも感じたが、大植によれば即興シーンは一切ないのだそうだ。また、作品中では柳本と平原がときおり短く言葉を発するシーンが見られたが、この言葉も用意されていたセリフのようなものではなく、例えば相手が予想外の動きをして「え?ここでそうなの?!」といったような「思わず出てしまった」ようなものだった。

2つめのパートでは、最初に見たパートに音楽を入れて動きが再演された。しかし再演と言っても見え方の印象は明らかに異なっていた。音の持つイメージと動きが組み合わされることで、1本目とは異なる手ざわりがそこには感じられたのだ。例えば、1本目の印象がダンサーの息づかいや体温を感じるものであっても、機械的で冷たい質の音楽が使われることによって、印象がクールなものに変化してしまったことなどがあげられる。動きに関しては音楽の持つ時間的な要素(リズムやメロディ)が加わることによってダンサーの動きもスコア内に収まるように微妙に修正がされ、ユーモアを感じた作品の余韻部分がシャープにカットされたように感じられた。
 

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3つめのパートでは、1つめと2つめの試みについての考え方が話された。大植は1つめのパートについて「・・・なぜ音楽を使わないの? と思ったお客さまもたくさんいらっしゃったと思いますが、僕たちの身体の中にあるもの、例えば呼吸といったものも音楽のようなものだと思っているからです。」と語りはじめた。「通常のダンス作品では“いつ音楽がはじまるか”ということを気にしつつ作品を鑑賞し、音楽が終わったから“ああ、終わったんだ。”と思っています。ですが、ダンスは音楽がはじまる前からもはじまっていますし、音楽が終わっても終わってはいないと思っています。」と、音楽からの解放の試みが今回のショーイングで行われたと説明をした。
さらに大植は、ショーイングのチラシに書かれた言葉を客席のいく人かの人に読みあげてもらい、柳本と平原が作品の動きを再現するということも見せてくれた。人が読み上げる言葉には読む人独自の声の質やリズム感があり、どんな風に読み上げられるかは予測が出来ない。読み上げられる言葉のどの音に反応し、どういうタイミングで動きを調整するかはダンサーにゆだねられているのだ。これは舞台としては危うい状態だが、柳本と平原は笑顔を見せながら再演。読む人とダンサーの間に共通である「呼吸」が、こうしたコラボレーションを可能にしているのかも知れない。1つの振付がさまざまに見え方を変えていくのは、とても興味深いと感じた。
 

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3つめのパートの最後では、客席から参加者を募って作品の一部を再演。柳本と平原のパートの一部で平原と参加者が交代して踊った。また、1本目の構成では1人と2人で踊ったシーンを、ダンサー1人と参加者5,6名で踊るというシーンに置き換えるということも見せてくれた。このシーンではダンサーを頂点とする三角形に参加者を配置し、ダンサーの動きを真似るという方法で動いていた。見え方のバリエーションが変わっていく様子を体感することと、実際に動いてみるということを通して(すべての人が動いたわけではないが、ダンサー以外の人が参加することで親しみを持って舞台を見ることは出来たのではないか)ショーイングに参加した人たちがダンスを立体的に楽しむことが出来たように思う。
ダンサーは日々さまざまな試みを通して、作品創作のプロセスを進んでいく。そのプロセスを観客も共有することで鑑賞の視点は広くなっていくだろう。アーティストと観客が楽しみながら新たな作品創造を共に楽しめるようになれば、舞台作品はまた新たな可能性を手に入れることが出来るのではないだろうか。今回のショーイングを通じて、そんな楽しい予感を覚えた。
(愛知県芸術劇場センター大リハーサル室、2009年8月27日/撮影:加藤光)