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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.07.10]
From Nagoya -名古屋-

『ジゼル』全2幕、NPO法人豊田シティバレエ団

 日本ではあまり多くないNPO法人の運営による豊田シティバレエ団の創立20周年を記念する特別公演の第1弾の演目はロマンティックバレエの代表作『ジゼル』。第2弾は、浦島太郎をバレエ化した「乙姫伝説」が、秋ごろに上演される予定だという。
 創立記念の公演は多いが、12年前よりバレエ学校を併設しているバレエ団としては、より一層ダンサーたちの成長の跡が気になるところだ。お稽古事の延長としてのバレエではなく、高校を選ぶようにバレエ学校を選択して、1日中バレエに関する実技や講義に打ち込むことのできる恵まれた環境にある生徒たちが、着実に成果をあげつつある姿をみることができることがこのバレエ団の最大の魅力だろう。

 今回の演目で主役を務めたのは、バレエ団のダンサーではなく、海外からのゲストダンサーであった。配役やバレエ作品としての音楽や美術を含めたトータルプロデュースでも、芸術監督・諏訪等氏の並々ならぬこだわりが感じられる舞台となっていた。バレエ団との交流の深いベラルーシからは、アルブレヒト役のコンスタンティン・クズネツオォフとジゼル役のユリーア・ディアトコのふたりが招聘された。バレエを通して、日本と海外の文化交流を深めていることも、豊田シティバレエ団の大きな貢献のひとつだろう。

 今回もっとも目を引いたのはアルブレヒト役のコンスタンティン・クズネツオォフの優柔不断な男像だ。婚約者がありながら、村娘に心を奪われる貴族の坊ちゃんらしい青年を実に情けなく描き、現実とそこから逃避したい男の心理が手に取ってわかるように描かれていた。それに対して、ジゼル役のユリーア・ディアトコは、アルブレヒトに現実逃避させるような可憐な乙女というよりは、強引に男の心をひっぱっていく勝気な女性像をイメージさせて、ふたりのパートナーシップにはやや違和感があった。


 そして見逃してはならないのが、前述したバレエ団のダンサーたちの成長だ。近藤真名は、ワガノワ・バレエ学校への留学から帰国、バチルド姫を好演。9月からKバレエカンパニーへ入団することが決まったばかりの嘉山裕子は、明るく溌剌とした踊りで、同じKバレエに入団したばかりのアレクサンドル・ブーベルと息の合ったペザントのパ・ドゥ・ドゥを披露した。また三宅佑佳がラトビア・オペラ座バレエ団のソリストとして活動をはじめた今、事実上バレエ団のプリマとなった工藤彩奈は、本公演では一歩引いてウィリや村娘を踊ったが、その中でも一際光るプリマとしての空気を纏っていた。ミルタは若手の小島綾がつとめ、初々しく可憐な妖精を演じ、第5回ダンスオリンプ国際ダンスフェスティバル・ベルリン2008のクラシックバレエ男子シニア部門で銀メダルを受賞したばかりの小柴富久修は、海外のゲストばかりの村の若者たちに一歩も引けをとらず、バレエ学校出身男性としての今後の活躍を期待させる踊りを見せた。


構成・演出:諏訪等、再振付指導:I・ワヒード
指揮:福田一雄、演奏:中部フィルハーモニー交響楽団
ジゼル:ユリーア・ディアトコ
アルブレヒト:コンスタンティン・クズネツオォフ
バチルド姫:近藤真名
ペザント:嘉山裕子、アレクサンドル・ブーベル
ミルタ:小島綾
豊田シティバレエ団、ウズベキスタン国立ボリショイバレエ団
(2008年6月3日 愛知県芸術劇場大ホール)