ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2007.12.10]
From Nagoya -名古屋-

越智インターナショナルバレエ『海賊』

『海賊』もまた、パ・ド・ドゥでの上演回数の多さに比較すると、全幕で見ることのできる機会が極めて少ない作品である。越智インターナショナルバレエが初めてこの作品の上演したのが1996年、愛知県芸術劇場大ホールのプロセニアムに合わせたドロップ・カーテンによる本格的な全幕上演であった。それから11年が経って、今回は3度目、そしてキーロフ版による演出・振付は、長い間バレエ団の芸術監督であったワレリー・コフトンだ。
 この作品は、プティパがチャイコフスキーと共に創作した3大バレエなどとは異なり、音楽主導の作品というよりも、スピーディーなストーリー展開に、華やかな場面の連続で、ダンサーの演技やバレエのテクニックを堪能できる演目である。
 今回は、ギリシアの娘・メドーラを越智久美子、海賊の首領・コンラッドがデニス・ネダク、ワディム・ソロマハのアリというベテラン勢による配役であり、抜群の安定感を保った舞台は、最後まで集中力を途切れさせることなく楽しむことができた。

 華やかな幕開けは、荒れ狂うイオニア海の船上。海賊の一族は、嵐と戦うがとうとう力尽き、船は沈む。第1幕はギリシアの浜辺。海岸に打ち上げられた海賊たち。そこを通りがかったメドーラと海賊の首領・コンラッドとの出会いの場面が印象的だ。越智久美子が現れると、舞台が急に引き締まる。キャリアを積んだものだけが紡ぎ出すオーラを纏っての登場。そこへ奴隷商人が現れ、メドーラやその友人の森絵里演じるグルナーラら美女たちを捕らえ競売にかけようとする。奴隷商人役のコンスタンチン・ビノボイの切れ味の鋭い踊りや、アリ役のワディム・ソロマハの凛々しい姿、コンラッド役のデニス・ネダクーも急遽代役を務めることになったとは思えないほど、堂々とした存在感で好演。やはり日本より踊る機会が多い海外のダンサーの底力なのだろうか。多数の出演者、特に外国勢の男性陣が、荒々しくたくましい海賊役に相応しい。
 続く第2幕の「海賊たちの洞窟」では、メドーラとコンラッド、アリによる有名なパ・ド・トロワが見所だ。その圧倒的な存在感とテクニックで益々精彩を放つ越智久美子、ワディム・ソロマハはしなやかに超絶技巧のジャンプや回転を披露、コンラッドは力強い踊りで堂々たる首領を演じた。

 


 第3幕の「サイド・パシャのハレム」では、捕らえられた美女たちの妖艶な踊りや、海賊たちのから強いダンスが次々と披露され、物語とは関係なく、ダンスそのものの躍動感を感じさせる。
 全体を通じて場面ごとに移り変わる色彩豊かな美術や衣裳の数々に、越智バレエの総合舞台としてのバレエへのこだわりが垣間見えた。演奏は、ボリス・スパソフ指揮のセントラル愛知交響楽団。
(2007年11月10日 愛知県芸術劇場大ホール)