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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2005.12.10]
From Osaka -大阪-

●日本文化を生かしたバレエ、桧垣バレエ団ドイツ公演記念『月の物語』

 9月にドイツのハレ・オペラハウスとベルリン・ルネッサンステアターで公演を行い好評を博した桧垣バレエ団。これはそのドイツ公演の演目で行われた記念特別公演。“月”というキーワードでくくられた“和”の世界を、西洋芸術であるバレエで表現した舞台が西洋の人たちに喜ばれたことは容易に想像できる。

 特に公演を観て感じたのは、このバレエ団が日本文化の良さ、京文化の良さをとてもよく知った上で、作品を創っていること。日本の物語を題材にバレエを創る際、場合によっては西洋文化であるバレエと日本の風物を組み合わせることで陳腐になってしまう危険性があるだろう。でも、このバレエ団の作品は、着物をアレンジした衣装で、トゥ・シューズを履きクラシックの技法を使っていても、妙な感じや陳腐さがまったく感じられない、素直に美しいと思える世界がそこにはある。それはきっと、能や日本舞踊についても深い造詣を持って、きちんと日本の美意識に基づいて創られているのからなのだろう。

 

『2月によせて』


『夕顔』
 舞台は桧垣美世子振付『月によせて』で幕をあけた。クラシック・チュチュを着てのクラシック・バレエの技法による群舞を含む作品で、音楽は芥川也寸志。舞台後方に丸く出た月の前でオープニング的に踊られた。

 続いては『夕顔』、「源氏物語」の「夕顔」から想を得たもので、演出は前原和比古、音楽を中村滋。チェロとフルートの生演奏の中で、舞台後方ホリゾントに大きな月、左右に障子というシンプルな舞台。はじめに出る五節の舞姫(松井啓子、山崎華乃、並木梨名、有里真姫、岩田麻衣子、22日には坂本詩織)は、紅い袴にピンクの上衣、花のかんざしがとても愛らしい。夕顔役は小西裕紀子、光源氏に志村昌宏。二人のパ・ド・ドゥは息も合って柔らかい。大きな月に移る影や、障子に移る影がとても印象的で、舞台道具は多くないのに最大限の効果を上げているように思えた。

 最後の演目は『清姫』。「道成寺」の清姫についてバレエ化したもの、この作品も前原の演出で、音楽はベンジャミン・ユスポフ。私は以前から「道成寺」はバレエにしたら合うのではないかと感じていたのだが、気づくと今回でなく、2002年にこの作品は創られている。こちらも透ける布に夜の木々が写るという舞台がシンプルでありながら美しく効果的。清姫を踊ったのは小西裕紀子、安珍を前田翼(22日は大槻夏子)。長い髪で激しく踊る清姫の踊りは素晴らしい迫力。『夕顔』の“静”に対して『清姫』の“動”と、全く反対のタイプの日本女性の魅力をともに観ること出来る公演だった。
(10月22日、23日 京都府民ホールアルティ、23日)


『1月によせて』

『清姫』

『清姫』
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