ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.12.10]
From Nagoya -名古屋-

●第6回踊りに行くぜ!! 愛知県長久手公演

 6回目を迎えるJCDNによるコンテンポラリー・ダンス・プロジェクト。今年は昨年に続き、長久手町にある文化の家で開催され、名古屋のダンサー2組を含む、5組が小品を披露した。

 タナカアリフミは、踊らないダンス=SILENCE DANCEを提唱している名古屋在住のパフォーマー。『行人』と題した作品では、ジャコメッティの「歩く男」へのオマージュとして、歩く、座る、立つ、などのシンプルな動作から広がるいくつかの空間を提示した。空間のイメージ創りに大きな成果をあげていたのが、音楽と照明。ダンス公演で上演するからには、もう少し動きから踊りに変化するダンシーな瞬間を見せて欲しかった。

『行人』


『RISE VS FALL』

『コンチキチ』
 続く高木理恵も名古屋在住、この公演には2回目の参加。映像や建築とのコラボレーションが多い高木だが、今回は「言葉と動き」に焦点をあてた習作的な試みを行った。ふと漏らした言葉が生み出す動き、そして踊ることによってさらに生じる言葉。その関係は終始絶え間なく続き、心地よい連鎖をもたらす。舞踊作品での言葉の使用は、せりふを話すことによって、動きの滞りや戸惑いを生じさせることも多いが、高木の『コンチキチ』では、動きの中に言葉が溶け込み、ダンス表現としてもより自然なものとなっていたので、違和感なく観ることができた。作品というよりも習作的な感じがしたので、さらに完成度をあげていって欲しい。

 赤丸急上昇は、松山から参加の女性2人組み。『RISE VS FALL』は、2人が対決して、頂点に達し、離別するまでの状況を様々な視点で描いた作品。パンク調の曲がかかり、2人の女性が追いかけっこをしている。いつまで続くかと思ったら、最後まで追いかけ続け、馬乗りになり、プロレスさながら取っ組み合って喧嘩する。こうした動きの連続に、床に転がった沢山のマジックを立てたり、上に積み重ねていったり、ダンサーたちの心の動きをペンの動きによって代弁させているのか。体当たりの動きに、笑いの要素もあり、痛快で楽しげ。でも作品の戦略が見えてしまうところに、最近定番のコンテンポラリーダンサーの影響を受けているように感じた。定番がないのが、コンテンポラリー・ダンスの面白さ、だとしたら、そんな枠からはみ出るくらい自由な表現法を探して欲しい。

 愛知県出身の伊藤愛による『FACA TO FACE』は、アンサンブル・ゾネの岡登志子が演出・構成に参加しているとあって、他の作品にくらべ、作品の骨格がしっかりとしていた。自作自演も重要だが、ダンス創作には色々な手法があって、作家の資質によっても当然異なる。すべてを自身でできると自負するより、苦手なところは潔く得意な人に依頼する勇気も必要だろう。白線の引かれた四角形の中に1組の男女と大きなパン。男はただひたすらパンをちぎっては、上手奥から下手前に向かった対角線上に少しづつ置いていく。その線に沿うように、前に進み、また後戻りしながら踊りを進める伊藤。ひとつひとつの動きが明瞭で無駄がない。岡の精神を受け継いだ丁寧な踊りは美しく、クリアな動きのもつ力強さを感じさせた。

 最後は、丹野賢一とNUMBERING MACHINEによる『012-RAG』。暗転の中、耳を劈くようなギターの音が聞こえると、明かりが点灯し、上下のバルコニーにギタリストが立っている。終始ギターの鳴り響く中、2階席から丹野が顔を出す。まるでお化けと見間違うほどに引きちぎられたボロの白衣を身に纏い、グロテスクなメイクを施した異形の姿のまま、観客席をうろつきまわって、舞台へと進む。松本ジロとスカンクによるミニマル的なギターの音がさらに丹野の歩みをあおる。観客席から舞台に進む丹野に向かって強烈な赤の明かりが照りつけ、観客席はすでに異次元空間と化しているようだ。舞台上での赤のライトも印象的。観客たちは、空間の変容していくその生き生きとした時間に立ち会った生き証人となった。

 コンテンポラリー・ダンスの定義はいまだ定かではないが、だからこそ、自由な表現を受け入れる土壌となり得ているのだろう。本公演も6回目となったが、次第に「踊りに行くぜ」で選ばれる作品のタイプが限定されはじめてきているようにも感じる。そこにひとつの主張があるともとれるが、それ以上に、今のダンスの世界に必要なのは、広く、深く受け入れることのできる大きな器なのではないだろうか。若手の舞踊家たちが、自由に、でも真摯に向かい合う場として、こういった公演がさらに機能していって欲しいと思う。
(11月19日 愛知県長久手町文化の家 風のホール)



『FACA TO FACE』

『012-RAG』

『012-RAG』
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