ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2005.05.10]
From Osaka -大阪-

●ローラン・プティ作品の魅力を堪能させてくれた牧阿佐美バレエ団の2公演


 日本を代表するバレエ団のひとつ牧阿佐美バレエ団。東京が拠点だが、大阪でも度々公演を行っている。 このバレエ団、世界的な振付家であるローラン・プティの『アルルの女』『若者と死』『ノートルダム・ド・パリ』を日本初演したことも有名。 最近では『デューク・エリントン・バレエ』などプティの新作の世界初演も果たしている。

 今回は大阪国際フェスティバルの一環として、『ノートルダム・ド・パリ』全幕、『ローラン・プティ・ガラ』と二日間に渡ってプティのさまざまな作品を上演した。

 まず、一日目は『ノートルダム・ド・パリ』全幕。エスメラルダとカジモドは、共にボリショイ・バレエからの客演でアンナ・アントニーチェワとドミトリー・ベロゴロフツェフ。 彼らが日本でこの作品を踊るのは初めて。

 幕が開くと、パリの町衆の群舞、イブ・サン=ローランの赤や黄緑、スカイブルーといった鮮やかな色の衣裳に身を包んだダンサーたちが踊る。 一気に舞台に引き込まれた。指揮、若杉弘、京都市交響楽団による音楽もレベルが高く、物語に観客の気持ちを溶け込ませてゆく。

『ノートルダム・ド・パリ』

 登場したアンナ、ミニのワンピースから出した脚の美しく長いことに、まず圧倒された。その彼女は、場面場面でさまざまな魅力を見せる。 1幕の最初の方で神父フロロと踊るシーンでは、睨みをきかせた笑顔、気の強さを見せる、カジモドが襲われた後、水を与えるシーンでは天使のように清らかな雰囲気。 2幕の冒頭、無実の罪を着せられカジモトにかくまわれ、2人で踊るシーンは、無邪気な感じ・・・。

 一方、ドミトリーもカジモドという、背中の曲がった“醜い男”という設定の役を演じているのに、役に合っていないということではなく、格好良く美しく魅力的な存在に見えて来る。
 フロロを演じた菊池研は怪しげな雰囲気をよく出していたし、フェビュスの逸見智彦も品を感じさせて好演。
 ラスト、処刑され死んでしまったエスメラルダを、生き返らせようとするかのように、何度もはげしく揺するカジモド、全く脱力して生を感じさせないエスメラルダ・・・ストレートに心に迫ってくるものがあった。


『ノートルダム・ド・パリ』

 二日目は『ローラン・プティ・ガラ』。最初の演目は『アルルの女』。 主役は田中祐子とパリ・オペラ座からのゲスト、バンジャマン・ペッシュ。彼が日本でこの作品を踊るのも初めて。田中は優しく上品な雰囲気。 婚礼の日に自分の方を向いてくれない新郎を想う清純な新婦のどうしようもない気持ちをとてもよく表現。 ペッシュも、忘れられないアルルの女への思いを、うつろな表情からダイナミックに盛り上がって死へ繋がるところまで、迫力をもって現した。腕の繋がりを効果的に使った群舞も印象的。

 次の作品は、『ノートルダム・ド・パリ』の2幕初めのパ・ド・ドゥ。前日に続き観たことで、 カジモドが開いて立った脚の間から出した手をお尻の方から握ったエスメラルダが美しい脚を活かしたアラセゴン・デベロッペするなど動きの面白さも堪能出来た。

 3つ目は『若者と死』。草刈民代とモンゴル国立バレエ団のアルタンフヤグ・ドゥガラー。 これは美しい女性であるからこそ許される作品、草刈の美しさ、妖しげな魅力が活かされていた。ドゥガラーも若いからこその芸術家の悩みを好演。

『アルルの女』

 4つ目はプティの作品ではなく特別演目。ボリショイの2人、アンナ・アントニーチェワとドミトリー・ベロゴロフツェフが自らのバレエ団の代表演目である『スパルタクス』からパ・ド・ドゥを披露してくれた。

 ラストは昨年、このバレエ団で30年ぶりの新版として発表された『ピンク・フロイド・バレエ』のハイライト。 ロックに載ったダンス、女性はトゥ・シューズを履き、全体的にクラシックの下地がないと踊れない作品だが、ノリはロック。 ソロを踊った菊池研は、現代っ子らしい物怖じしない雰囲気とスターらしさを持ったダンサーだと感じた。また、この作品のラストの群舞は圧巻。華やかに幕を閉じた。
 プティが22歳の頃、1946年の作品が『若者と死』、昨年の彼の作品が『ピンク・フロイド・バレエ』。 あらためて比べて、人間、中でも芸術家というものは、若い頃は苦悩の中で死を感じ、歳を重ねると・・・などと思いを巡らせながら帰途についた。


『ノートルダム・ド・パリ』

『若者と死』

『スパルタクス』

『ピンク・フロイド・バレエ』

(4月15日、16日 フェスティバルホール)
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。