ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.04.10]
From Osaka -大阪-

●2005洋舞スプリングコンサート

 兵庫県洋舞家協会主催。サブタイトルは「コンテンポラリーとの出逢い・・・」だが、いわゆる[コンテンポラリー・ダンス]一色ではなく、クラシック系、現代舞踊系など様々なスタイルの15の創作作品(11団体による)が披露された。

 貞松・浜田バレエ団の廣岡奈美がさわやかに踊った『白い風の吹く丘』は、瀬島五月の振付。瀬島自身がダイナミックな表現を得意とするダンサーで、その個性は作品にも表れていた。また、同バレエ団の竹中優花が踊ったのは、加藤きよ子作の『あなたの声を聞かせてください』。『くるみ割り人形』のクララなどで愛らしい表情を見せる竹中が、クラシック作品を踊るときとは全く違う表情を見せていた。加藤作品を既に何度か踊っているためか、現代舞踊的な動きに不安なところはない。身体のラインが美しく、表現も深みを増した。いまは、現代舞踊も踊ることができるクラシック・ダンサーという域にいるが(もちろん、それだけでも、素晴らしいこと。彼女の努力の結果だが)、まだまだ、ジャンルを越えた[舞踊家]としての可能性を持っているように思える。今後が楽しみだ。

『あなたの声を聞かせてください』


『蝶の影』

『遙かなるクリスマス』

『さまざまなアリエッタ』
『蝶の影』は小川珠絵作品。紫色の光沢ある衣裳が、まず目を引いた。衣裳だけが独立した「物体」のよう。やがて、その「物体」からダンサー=斎藤由佳(波多野澄子バレエ団)が現れる。斎藤は、軽やかに舞い、やがて、再び紫の衣裳を羽織る。このときの衣裳は、もはや「物体」ではなく、斎藤の表皮となっているように見えた。

宮澤由紀子(田中バレエアート)&川村康二の『あなたはそこにいたか』(田中俊行作舞)、矢野陽子(赤松優バレエ学園)&沖潮隆之の『アルビノーニのアダージオ』(赤松優作舞)は、クラシック・バレエの技法をベースにした叙情作。新屋滋之(渡バレエ団)&西尾睦生が2人で創り踊った『思い想う・・・』は、[遊びながら形にしました]とプログラムにあるとおり、心地よく動きが流れていく。だが、実力を持つ[表現者]である二人だからこそ、もっと深さのある作品を見たかったという気持ちは残る。

『遥かなるクリスマス』(大澤範子作舞)は、さだまさしの同名曲に振付けられた作品。といっても4人のダンサー(エコール ド ダンス オオサワ)によるダンスは、その歌詞を具象化したわけではなく、むしろ、歌詞とは無関係に踊っているようにも思える。作舞者、大澤は、さだの音楽から感じたメッセージ性を、その強さを、そのままダンスに描いていた。それによって、さだの歌を、じっくり聴くことが出来た。音楽を、より深く聴かせるというのも舞踊の力だろう。ただ、ダンサーの力量に多少ばらつきがあったのは残念。スムーズでない動きは、やはり見るものの注意力を削いでしまうから。

江川バレエスクールの『さまざまなアリエッタ』(河合美智子作舞)は、キース・ジャレットのリズムをさらに細かにカウントしながら、9人のダンサーが様々に踊る。しかしそこに統制はとれている。クラシック・バレエにない技法も取り入れられているが、ダンサーは果敢にこなしていた。構成が複雑で面白く、あっという間にダンサーは光のなかに消えてしまった。もう一度見たいと思わせる作品だ。

同バレエ団の指導者でもある太田由利が踊ったのは『この調べの中で』。舞踊家としての彼女を良く知る深川秀夫作品である。太田は軽やかなステップで舞台を駆ける。無駄な力の全く入っていない動き。それはエレガントで若々しい。回想シーンのように男性(松原博司)が現れ消えたことが、何かを暗示していたのかどうかはわからない。だけど、それは淡いドラマを感じさせた。深川の振付が、太田のダンサーとしての美点=ラインの美しさや品の良さなどを生かしていた。舞台上に流れていた、温かく、優しい空気は、振付家と舞踊家の信頼関係が生み出したのだろう。

『フォー・フラグメンツ・ムヴメント』(作舞Oginos & CORE)は、オフ・バランスや脱力など様々な動きを繋げ、交錯させて一連の流れを作り上げているコンテンポラリー作品。動きは少々滑らかさに欠け、試行錯誤している様も見られたが、ダンサーの意思が反映したダンスではあった。

ラストは今岡頌子・加藤きよ子ダンススペースの『消えよ 動きやまぬ 影たちよ』(加藤きよ子作舞)。ロープから黒衣の男性が降り、「影よ消えろ」と一言。ドラマの始まりを暗示するが、具体的なストーリーはない。グリーグの『ペール・ギュント』からの、山の魔王のシーンの音楽が用いられていて、それが劇的な効果を高めていた。ベージュのコスチュームの女性ダンサーたち9人の群舞はドラマティックで、しかし、はかなげ。彼女たちが「影」ということだろう。「影が消えた。永久(とわ)の眠りにつこう」という言葉とともに男は天へと昇っていく。芝居のワンシーンを思わせるような作品だった。

『この調べの中で』

『Four Fragments』

『消えよ動きやまぬ』
(3月13日、新神戸オリエンタル劇場)
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