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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.02.10]
From Osaka -大阪-

●宮下靖子バレエ団クリスマス公演は深川秀夫の『妖精の接吻』ほか


 毎年クリスマスシーズンに公演を行っている宮下靖子バレエ団は、ハンス・マイスター振付の『くるみ割り人形』というこの季節にぴったりのレパートリーも持っているが、 2004年はあえて、振付に深川秀夫と石原完二を迎え、創作作品を披露した。

 第一部は、深川秀夫の『メンデルスゾーン・コンチェルト』。ヴァイオリン・コンチェルトにのせた、いわゆるシンフォニック・バレエだ。 作品は音楽同様三楽章に分かれている。第一楽章では石田絢子が、きびきびした演技を見せた。第二楽章のソリスト中西孝子は長い手足を生かし、叙情たっぷり。 パートナー大寺資二のサポートも繊細な心配りがみられた。第三楽章は、華やかな存在感をもつ鈴木祐子とアンドレイ・クードリャを中心に、盛り上がりを見せていた。

ロマンティック楽派の金字塔といわれるメンデルスゾ―ンのヴァイオリン・コンチェルト。その華麗な音楽が見事に舞踊化されていた。様式美にのっとった作風は清々しい。 それに加え、楽章ごとの繋ぎ方も洒落ている。様々な種類の作品を創作している深川だが、やはり彼の身体に染み込んでいるのは、まぎれもなくアカデミックなクラシック・バレエの技法。 それがあらためて納得できた。正統派ともいえるシンフォニック・バレエにほどよく深川独自のテイストが混ざり合った作品。深川の代表作のひとつといってもよいだろう。 ダンサーたちは難解な深川作品に果敢に挑戦していた。だが、それぞれの「色」の違いを感じさせた前述のソリスト以外のダンサーには、深川の振付の洗練された美しさを体現するのは、 やはり少々難しかったように見受けられた。
『メンデルスゾーン・コンチェルト』

第2部は、やはり深川作品の『ディ・フェーダ』と石原完二振付の『レヴォリューション』が上演された。『ディ・フェーダ』は、『メンデルスゾーン・コンチェルト』より深川色は濃厚。 シュトラウスの「美しき青きドナウ」にのせて、バレエ学校の生徒たちが背に羽をつけて舞っていた。
『レヴォリューション』は、トゥシューズではなく、バレエシューズで踊る作品。様々な決め事のあるクラシック・バレエから、自由な動きへのレヴォリューション(革命)、 あるいはまた、精神の解放が振付の狙いに思えた。


『ディ・フェーダ』

『レヴォリューション』

『レヴォリューション』

『妖精の接吻』
第3部は、深川秀夫の新作『妖精の接吻』。 ディアギレフのバレエ・リュスにも所属していたイダ・ルビンシュテインからの依頼でストラヴィンスキーが作曲、1928年にパリで初演されたこの音楽は、 チャイコフスキーへのオマージュ的な要素も持ち、またストラヴィンスキーならではの「新しさ」も感じさせる。

原作はアンデルセンの童話「氷姫」。妖精の女王から接吻を受けた赤ん坊が、立派な若者に成長し、恋人と結婚式を挙げるその日に、再び妖精の女王からキスされ永遠の世界に旅立っていくというストーリー。 深川は、決して説明調に陥ることなく、物語を、しかし忠実に舞踊化していた。 たとえば、赤ん坊を抱く母親が、暗転の後、そのままのポーズで若者となった息子を抱きしめている。そこに18年の時間の移ろいがあったことは文字通り一目瞭然。 すべてに筋運びはスマートでスムーズだった。

若者役のヤコブス・ウィルフリッツは、婚約者がいながらも妖精の女王に引かれていく様をナイーブな表情で的確に表現。妖精の女王役、鈴木祐子は美しく、 時おり確かに、氷のような冷ややかな強さを感じさせた。藤井あずさは、恋人の心が見えなくなっていく婚約者の苦しみを、切ないような演技で納得させた。
ラストの雪のシーンがなんとも美しかった。祭りのシーンでのロシア風メロディの群舞など、手を加えた方が良いように思えた箇所もあったが、物語バレエとしての完成度は非常に高い。再演を熱望する。
(12月25日、京都会館第一ホール)