ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.08.10]
From Osaka -大阪-

ひょうごインビテーショナル招聘のボリショイ・バレエ・アカデミー

海外バレエ団の来日公演となると最近は東京だけという場合が多いが、そのなかで「関西だけ」の珍しいケースが、兵庫県主催の「ひょうごインビテーショナル」。この事業では、毎年海外から有名バレエ学校を招聘して、公演やバレエ学校教師による特別指導なども行っている。いままでに、ペルミ・バレエ学校、シュツットガルト・バレエ学校、パリ・コンセルバトワール、マルセイユ・バレエ学校など様々なバレエ学校が来日。マルセイユ・バレエ学校時代のマチュー・ガニオなど、後のスターとの出会いも楽しめた。

 さて、今回来日したのは、ボリショイ・バレエ・アカデミー。アナニアシヴィリやマラーホフを生んだ名門バレエ学校である。マリーナ・レオノヴァ校長に率いられてやってきた生徒たちは、12歳から20歳まで総勢38人。「特に、日本公演のために優秀な生徒をピックアップしたというわけではないのです。(モスクワでの)生徒公演で上演した演目から、日本公演用の作品を選びプログラムを組みました。また薄井憲二先生(兵庫県芸術文化協会企画制作アドバイザー)のご提案で、下級生の作品もプログラムに入れました。それらの作品を踊る生徒が来日したというわけです」とレオノヴァ校長はいう。優秀な生徒というより平均的な生徒の演技を見せるという[余裕]の発言。たしかに下級生が踊る『ミニタリー・アカデミー生徒』は、少年少女たちが行進するように登場して、簡単なステップを披露する作品。スターが活躍する場はない。だが、少年少女たちのマナーの良いダンスは可愛らしく、見ていてとても楽しい。また、『白鳥の湖』からマズルカも、とくに見せ場があるわけではない。だけど、生徒ながら様式美を身に付けた生徒たちの演技は、それだけで鑑賞の価値を持つ。『アラゴンのホタ』にしても、キャラクター・ダンスの基礎ステップをつなげた作品だが、見ごたえは十分あった。これらの作品は、プロダンサーを養成するための教育システムが確立されているこのバレエ学校の、いわば訓練課程。興味深く見ることができた。

 一方で、上級生の生徒たちは、プロのような演技を見せてくれた。『バヤデルカ』のガムザッティ役を踊ったナタリア・オシポワ(この秋からボリショイ・バレエ団にソリスト入団が決まっている)は、テクニックの確かさを感じさせた。『水がめの踊り』のマリヤ・ヴィノグラドワは表情が豊か。『海賊』のロマン・ヤクシェヴは、技術はまだ安定していないが、長身で舞台栄えする。きけば、彼もこの秋からラッチェンコ率いるカンパニーに入団が決まっているとのこと。プロ・デビューを控えた彼らの演技をみることができたのも収穫だった。

「白鳥の湖」

「バヤデルカ」
「海賊」

ロシア人生徒に混じって3人の日本人留学生も出演していた。『バヤデルカ』で、ブロンズ・アイドルを踊った秋元康臣、『ゼンツァーノの花祭り』の清瀧千晴、『海と真珠』の根岸澄宜である。3人とも、基礎に忠実で、動きがていねいだった。「日本人は非常にまじめで、集中力があります。アカデミーで学んだ彼らは、実力をさらに伸ばしました」とレオノヴァ校長。彼らを来日メンバーに加えたのは、「留学の成果」を日本の観客に披露したかったから、ということだ。

(7月4~11日、神戸国際会館など6ヶ所で公演)