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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2018.01.10]

力強く明るいエネルギーに溢れたダンス、アルヴィン・エイリーの「ヤング・ニューヨーク・ナイト」

Alvin Ailey American Dance Theater “Young New York Night”
アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター 「ヤング・ニューヨーク・ナイト」
”The Winter in Lisbon” by Billy Wilson、” Ella” by Robert Battle、 “Mass” by Rennie Harris 、” Revelations “ by Alvin Ailey
『ザ・ウィンター・イン・リズボン』ビリー・ウィルソン:振付、『エラ』ロバート・バトル:振付、『マス』レニー・ハリス:振付、『レベレーションズ』アルヴィン・エイリー:振付

11月29日から12月31日まで、ニューヨーク・シティ・センターでアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターの公演がありました。アルヴィン・エイリーはコンテンポラリー・ダンスのカンパニーとして有名でおなじみです。黒人らしい力強さ、明るさ、郷愁などを表現していて、有色人種のダンサーがほとんどのメンバーです。作品に使う音楽も黒人音楽が中心です。自分たちの黒人らしさの個性を良く分かっていて、他のカンパニーには出せない独得な個性を築き上げています。副芸術監督は日本人の茶谷正純で、日本人が世界のダンス界で認められて活躍していることは、私たちにとっても嬉しいことです。

ny1801a01.jpg 『ザ・ウィンター・イン・リズボン』
Photo by Christopher Duggan

私が観劇したのは11月30日で、4つの作品の小品集でした。
この日は開演前にスキンヘッドの黒人女性ダンサーのメンバーが登場し、観客に向けてマイクで話しかけ、座席に座ったまま上半身と腕、首や顔だけを使った振付を教えて、その短いダンスを掛け声と共にやってみるという演出がありました。底抜けに明るい女性でした。この明るい伸び伸びしたノリは、アフロアメリカンならではのものだと思います。舞台前に、すでに、これから始まるダンス公演の内容も明るく元気なアフロアメリカン独得のものですよ、というメッセージを含んでいて、ダンスを見るのがよりいっそう楽しみになりました。
続いて芸術監督ロバート・バトル( Robert Battle)が舞台上に登場して挨拶。バトルが話ししているところを初めて見ましたが、とても話し慣れていて驚きました。あっという間に観客を乗せてしまう明るく楽しい話術でした。さすが、大勢を引っ張ってまとめていくリーダーだなと納得しました。
1つ目の演目は、『ザ・ウィンター・イン・リズボン』(The Winter in Lisbon)です。1992年初演で、振付はビリー・ウィルソン(Billy Wilson)、音楽はCharles Fishman & Dizzy Gillespieです。同名の映画サントラ盤のアルバム(1991年発売)の中の3曲、"Opening Theme" (Charles Fishman, Gillespie) 、"San Sebastian" 、"Lisbon"と、1947年発売の有名なアフロキューバンジャズの名曲”Manteca”の4曲がつなげられて、作品に使われていました。これは音楽も良かったので、ダンスと音楽が相乗効果でさらに良い作品となっていて、オープニングにふさわしかったです。
まず、大勢のダンサーたちが出てきて、スローテンポの音楽に合わせてゆったりと踊り始めました。そして男性1人がハットをかぶってソロで踊りました。自由ではじけていて、演劇の要素もありました。ストーリーがあるようで、全体的に歌の無いミュージカル調の作品で、ダンスと演劇がいっしょになった感じで、演技と表情が豊かでした。
しばらく、他の男性ソロや2人組で踊ったり、ダンサーたちが入れ代わったり、少しずつ加わったりして踊りが続きました。男性と女性の2名のパ・ド・ドゥもあり、ロマンティックに踊りました。振付は力強く、女性をリフトしてぐるぐる回したり、他にもリフトがたくさん取り入れられていました。
次は有名な曲『マンテカ』が鳴り、アフロキューバンジャズでパーカッシヴで、リズム感があって作品の締めくくりで盛り上がりました。ノリノリのリズムの音楽なので、楽しい振付のダンスでした。踊りはあえて簡単なもので難しくはなかったですが、男女大勢がカラフルな衣装を着てリズムに乗って楽しそうで、フィナーレらしくてよかったです。

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ny1801a04.jpg 『ザ・ウィンター・イン・リズボン』 Photos by Teresa Wood

2曲目は、『エラ』(Ella)です。初演は2008年、アルヴィン・エイリーでの初演は2016年です。振付はロバート・バトル、音楽はエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)です。リズムの速い、スキャットで歌っている素晴らしい曲です。
主なダンサーは男女2名で、他にダンサー3人がでてきましたが、男女のパ・ド・ドゥが中心でした。振付はくり返しはほとんどありません。これも黒人的な振付のダンスで、自由で躍動感があって、元気で明るかったです。アラベスクで足を上げて回したり、大ジャンプして開脚を何度か繰り返すと、観客はすごい拍手でした。
最後に、男女2名が踊り疲れたかのように、後ろ向きに倒れ、大の字になってあお向けに床に倒れ込み、そこで終わりました。演技の要素もあって、面白い終わり方でした。その途中、男性3名が横にカニ歩きのように舞台上をそっと通り過ぎていき、そのまま姿を消しました。これが全体のアクセントになっていて、映画のシーンの端のように付加えられていて効果的でよかったです。

ny1801a05.jpg 『エラ』Photo by Christopher Duggan ny1801a06.jpg 『エラ』Photo by Teresa Wood

3曲目の演目は、『マス』(Mass)は2004年初演ですが、アルヴィン・エイリーでは今回が初演です。振付はRennie Harris、音楽はJohn Mackeyです。
ダンサーたちは少しずつ出てきて増え、両手を中国の太極拳風に動かしていました。そのまま身体をほとんど上下に動かさないようにして、パ・ド・ブレで動き続け、すごいスピードで素速く動いていました。
のびのびとした自由な動きのダンスで、途中、山海塾のような振付と演出が出てきました。おそらく日本の舞踏にも影響を受けているのではないかと感じました。うごめいていたり、だんだん音も踊りも激しくなっていったり、何か東洋的なものを表現しているのかなと思いました。黒人的なものだけではなく、日本的なものも採り入れている様子です。

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『マス』Photos by Paul Kolnik

最後の演目は『リベレーションズ』(Revelations)です。初演は1960年、振付はAlvin Aileyです。音楽は黒人の伝統音楽です。この作品は、アルヴィン・エイリーのカンパニーではお馴染みのもの。エイリーといえば『リベレーションズ』というくらい、公演ではほぼ必ず、プログラムの演目に組み込まれています。
これは黒人霊歌のような神々しい音楽とともに、両手と首を上に上げて天を仰いでいるような、祈りを表現した要素が強い作品です。使われている音楽が重く神々しいゴスペル調で、全体を通して厳かな作品です。今の時代に作られた新作とは違って、古い作品ですが、踊りもメッセージも長い時間に淘汰されて歴史に残った洗練された重要な作品です。
この日の最後の作品、締めくくりで神々しく重厚な余韻にひたることができ、よかったです。
(2017年11月29日夜 ニューヨーク・シティ・センター)