広く多くのダンサーたちが参加して、ますます発展していく『タップ・シティ』
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ワールドレポート/ニューヨーク
ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA
American Tap Dance Foundation "Tap City"
アメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション 「タップ・シティ」
Tony Waag directed & curated トニー・ワーグ:芸術監督
7月3日から8日まで、ニューヨークで毎年恒例のタップダンス・フェスティバル、タップ・シティが開催されました。タップ・シティは2001年から開催され、23年目になります。Covid19のパンデミックの後、再び復活して継続されています。アメリカで誕生したタップ・ダンスはニューヨークで発展し、現在、世界のタップ・ダンスの中心地はニューヨークです。
メイン・イベントである7月8日夜の公演ではリズム・イン・モーション(Rhythm In Motion)が、マンハッタンのシンフォニースペースで上演されました。
リズム・イン・モーションでは23作品が上演されました。出演したタップ・ダンサーは、若い世代がほとんどで、コロナ以前とはすっかり世代交代していました。以前はよく出演していたダンサーは少なく、今まであまり舞台に出たことがなかったような若いダンサーへも、オープンにチャンスを与えている様子でした。
アメリカン・タップ・ダンス・ファンデーションの代表のトニー・ワーグは「リズム・イン・モーションの公演は、もともと、新しい振付と古いクラシックの振付とのコンビネーションのコンセプトで始まり、回を重ねてきましたが、今回はクラシックの振付をテーマに戻ります」と舞台挨拶しました。
photo/Amanda Gentile
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年配女性のダンサー、テリー・ブロック(Terry Brock)がソロで踊った"Garshwin 1986"は、ジャズ・バンドの生演奏の音楽に乗って、クラシックなブロードウェイの振付のイメージでした。彼女は、いつも踊って鍛えられていることが伺える美しい肉体を保っていて、体幹が強く、身体の重心がびくともせず安定していました。彼女の場合は、バレエなどかなりダンスの基礎の鍛錬も積んでいる踊り方でした。彼女は、今年のアメリカン・タップ・ダンス・ファンデーションのHoofer Awardに選ばれて、タップ・シティで表彰されました。
ジャナイ・キャッチャー(Janai Catcher)の、Sweet Blues 1979のタップ・ダンスには、アメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション教師のリン・シュワブ(Lynn Schwab)も出演しソロを踊りました。
また、グッド・バイブス(Good Vibes)という演目は前代未聞の良い試みで、6名の健常者のダンサー達と、両足が不自由な車イスの方々2名が加わって、8名全員がイスに座って、両手にタップがつけてある手袋をつけて、板を持ってその手袋のタップを鳴らしていました。つまり、両手だけでタップ・ダンスをして表現していました。途中、6名の健常者は立ち上がって、普通にタップ・ダンスも踊りました。ハンディキャップがあって両足が動かない方々も舞台に参加して、手袋で楽しそうにタップを鳴らしていて、素晴らしいアイデアでした。
黒人女性のオペラ歌手が出てきてソロで歌い、男性歌手も出てきて加わって2人でハモッて歌い、タップ・ダンサー達も一緒に踊る演目もあり、音楽的にも生のバンド演奏や歌も良かったです。
芸術監督のトニー・ワーグ自身も出演し、上手に歌を歌い、タップ・ダンスも披露していました。自らタップ・ダンスと音楽の楽しさを体現して広める伝道師の役割を担っています。
また、今ニューヨークでも日本でも話題のLGBTがテーマの演目が用意されていて、女装のドラッグ・クイーンの著名なタップ・ダンサーも出演しました。主役はドラッグ・クイーンのザナ・ドゥーム(Xana Dume)とバック・ダンサーのザナ・ガールズです。ザナは実は男性が女装しているタップ・ダンサーで、リズム・タップがとても上手く、現在、そのショーはニューヨークで大人気で、海外ツアーもしています。
スペイン、バルセロナからもタップ・ダンサー達が参加しました。バルセロナ・タップ・ダンス・インターナショナル・コンサバトリー(Barcelona Tap Dance International Conservatory)です。バッハのクラシック曲に乗って、男性4名、女性5名の9名のダンサーが出演しました。姿勢が良く、おそらくバレエ経験もあるダンサー達だと思われ、踊り方の基礎がしっかりしていて、身体の軸が安定していて、とても上手でした。
今回のタップ・シティは、若者からかなりの年配のダンサーまで、またハンディキャップの車椅子のダンサー、LGBTの女装のドラッグ・クイーンのダンサー、スペインのバルセロナのダンサーたちも出演し、新しい素晴らしい試みの公演だと思いました。タップ・ダンスは上手なダンサーだけがやるものではない、老若男女、ハンディキャップがあってもLGBTでも、誰でも気軽に楽しめるダンスですよ、という明るくオープンなメッセージ性があり、説得力がありました。このような公演は、「私もタップ・ダンスをやってみたい」と思う新しい初心者に広く浸透する役割があると思います。
年を重ねるごとに少しずつさらに大きくなってきているアメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション。これからもタップ・ダンスの良さを世界中へ広めていただきたいです。
(2023年7月8日夜 シンフォニースペース)
photo/Amanda Gentile
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