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三崎 恵里 text by Eri Misaki 
[2017.02.10]

バランシンらしい動きとフォーメーションと音楽が調和した美しさが輝いた、NYCBのオール・バランシン・プロ

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ団
“All Balanchine” オール・バランシン・プログラム

12月の間、『くるみ割り人形』一色だったニューヨーク・シティ・バレエが冬の公演を再開した。今年の冬は、二つの古典レパートリーを見せることになっており、その一つ、ジョージ・バランシン振付の『白鳥の湖』がこの日の私のお目当てであった。バランシンの『白鳥の湖』は、全幕ものではなく(ちなみに現芸術監督のピーター・マーティンスが全幕ものを振り付けている)抜粋であるため、この日の「オール・バランシン」と銘打ったプログラムは別の二つの作品とともに上演された。

ny1702a_04.jpg "Allegro Brilliante" Megan Fairchild and Andrew Veyette
Photo Paul Kolnik

まずは、チャイコフスキーの曲に振付けられたバランシンの『アレグロ・ブリランテ(Allegro Brilliante)』が踊られた。カーテンが上がると4組の薄いブルーのドレスの女性とグレーの色調の衣裳の男性の群舞が既に踊っている。それに薄いオレンジのドレスのミーガン・フェアチャイルド(Megan Fairchild)とアンドリュー・ヴェイエット(Andrew Veyette)のプリンシパルのカップルが加わる。美しいアダージオになると、女性のみの群舞が踊られ、その後、男性のみが踊る。ソロを踊るヴェイエットが強いピルエットを見せた。ダンスが進行するにつれ、バランシン振付の特徴である、フォーメーションの変化を次々と見せる。アレグロというタイトルではあるが、リリカルな曲調も何度も現れる。ダンサーたちは全く表情を見せずに踊っている。最後には、速く難しい振りを疾風のように踊りあげて、ヴェイエットがフェアチャイルドを頭上にリフトして走り去った。

ny1702a_01.jpg Teresa Reichlen in "Fire Bird"  Photo Paul Kolnik
テレサ・ライヒレン(写真は『火の鳥』より)

ジョージ・バランシンの『白鳥の湖(Swan Lake)』は、オリジナルのレフ・イワノフの振付を引き継いで、バランシンの解釈で振付けたもので、1951年の初演である。通常の全幕ものの第二幕の、森の中の湖で王子と白鳥が初めて出会う場面だけだ。曲はチャイコフスキーの有名な曲だが、第二幕の場面からパ・ド・カトルが削除され、第三幕の曲を一部加えているという。
幕が開くとそこは森の中。木立の向こうに王子(ラッセル・ジャンゼン/Russel Janzen)とその友人が狩猟姿で現れる。王子が一人になった時、白鳥から人間の姿に戻った美しいオデット(テレサ・ライヒレン/Teresa Reichlen)が現れ、王子は強く惹かれる。怯えるオデットの恐怖心を王子は取り去ろうとする。そこに、巨大なカラスの様なロッドバルト(キャメロン・ディエック/Cameron Dieck)が現れる。ロッドバルトを庇うようにするオデット。そして黒鳥の群舞となる。コール・ド・バレエは全員黒鳥で、黒いセミロングチュチュのスカートにブルーのレースをあしらった美しい衣裳で、なかなか壮観であった。4羽の白鳥の踊りはなく、大きな白鳥の曲で、大柄な黒鳥が二人、コール・ド・バレエが縦3列に並んだ間を優雅に舞った。バランシンらしいアレンジだ。
群れに迷い込んだ王子が白鳥を捜していると、オデットが現れる。鳥肌立つ美しさだ。四肢が長く、一際背が高くてカリスマ性がある。王子にリフトされて空中を舞うようにスプリットをすると、まさに優雅に飛ぶ白鳥の華やかさが溢れた。しっかり役に入っており、観客がこれまでになく強く引き込まれて行くのが分かった。白鳥の振りはほとんどオリジナルに近いが、黒鳥の群舞はイワノフの振付とはかなり違っており、バランシン独特のフォーメーションの遊びがあちこちに見られた。オデットとジークフリードのパ・ド・ドゥでは群舞はステージに置かず、それぞれ完全に一人で踊った。群舞が再度加わると、黒い群れの中に白い一羽が混じり、これもなかなか美しい。恋に落ちて抱き合う二人を黒鳥たちが分け、オデットは悲しそうな感情表現を見せる。ロットバルトがまた現れ、凍り着くようになる黒鳥たち。苦しむオデットは王子と最後の抱擁を交わすと鳥に変身して消える。そして後ろの木立の向こうを、黒鳥の列の後から王冠を付けた白鳥が続く。観客からの、腹の底に響くような大きな歓声とともに終わった。オデット役のライヒレンは、踊っているときは大柄に見えたが、カーテンコールで出てきたのを見ると、思ったよりも華奢で非常に美しいダンサーであった。

ny1702a_02.jpg "Swan Lake" Balanchine's Photo Paul Kolnik

この日最後に踊られた『四つの気質(The Four Temperaments)』は、パウル・ヒンデミット(Paul Hindemith)の同名の曲に振付けられたバランシンの代表的な作品だ。女性はピンクのタイツに黒のレオタードと黒のベルト、男性は白いTシャツに黒いタイツという、典型的なバランシン作品の衣裳だ。作品は、テーマ、第一ヴァリエーション(メランコリック)、第二ヴァリエーション(快活)、第三ヴァリエーション(無気力)、第四バリエーション(いらだち)で構成されている。
「テーマ」では3組の男女が踊った。女性がポアントで一番に立ち、ピボットする時に足をフレックスにしたり、エジプトの古代絵を想像させるような鋭角的な腕の使い方など、独特の形がこの作品の特徴だ。また、カウンターバランスを使ったパートナリングも多く見られた。
「メランコリック」では、男性が走り出て来て、独特な腕の使い方のソロを踊って始まる。男性一人と女性6人の踊りで、手をフレックスにして横に突っ張る様に腕をプッシュした使い方を交えた振りが印象的だ。
「快活」は男女のオフバランスの難しい振りのデュエットの後、男性が消えて女性4人が加わる。手をセカンドポジションでフレックスしたままでピルエットするなど、難しい振りが続いた。
「無気力」では、男性がメランコリックなソロで始める。ここでも独特な手や腕の使い方か目立った。男性が片足を前に保ってバランスを取る内に、女性4人のコケティッシュな踊り、その後5人でいろいろと美しい形を作りながら踊られた。映画音楽風の曲に、民族舞踊の様な、ショーダンスの様な振付だ。
「いらだち」では、ピアノ曲のドラマチックな音が流れた。アラベスクのプリンシパルの女性を4人の男性が回す。映画音楽の様なドラマチックな曲だ。最後にテーマ曲で全員で踊り上げた。ここでも、エジプトの絵のような形やバットマンして腰を前に押し出す振りがたくさん使われていた。ラインの遊びのようなダンスであった。
(2017年1月25日夜 David H Koch Theater)

ny1702a_03.jpg "The Four Temperament" Photo Paul Kolnik