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三崎 恵里 text by Eri Misaki 
[2016.10.11]

ジャスティン・ペック他、次世代を担う振付家たちの小品集、NYCB「21世紀の振付家たち」

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ団
21ST CENTURY CHOREOGRAPHERS 「21世紀の振付家たち」

ニューヨーク・シティ・バレエが「21世紀の振付家たち」と題したプログラムは、新進振付家たちに作品の発表の機会を与えるもの。過去にクリストファー・ウィールドンなど、のちに世界的に活躍する振付家たちがこの企画から生まれた。これらの振付家はニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)のカンパニーメンバーがほとんど。今年も4人の若い振付家が出品した。

ny1610e_01.jpg For Clara. (C) Paul Kolnik

『クララのために(For Clara)』はプリンシパルの一人ローレン・ロベット(Lauren Lovette)がロバート・シューマンの曲に振付けた作品。男性ダンサーの板付きからのソロで始まる。作品は全体に音楽のイメージに基づいた、音楽の視覚化のみで、ダンサーたちはシンプルな衣裳で美しい振りを踊るが、いくつか衣裳に色を配しているものの、色と作品の関連性もなければ、特にこれと言って主張もない作品である。美しい曲を美しいダンサーたちが美しく踊ることに終始した。
今回、一人だけ外部から参加したのはコロンビアの振付家のアナベル・ロペス・オコア (Annabelle Lopez Ochoa)。弦楽奏に『アンフレームド (Unframed)』を振付けた。暗いステージに、後ろの幕にかぎ型の光るセットが一つ、ステージの上に一つ設置され、一本の棒のような同様のセットが一つ天井からぶら下がっている。これは枠(フレーム)を意味するものだろう。これに呼応するかのように、ダンサーも黒地に白いかぎ型の縁取りのあるジャケットを着て踊る。音楽は前衛的な弦楽奏で、時に女性ボーカルも入る。ダンサーたちの動きは美しく、衣裳もジャケットの下は女性は黒いビキニ風、男性はタイツだけと身体の美しさを強調するものだが、特に振りにオコア自身の語彙となるような特徴もなく、作品のタイトルを意味すると思えるものも見られない。後半の男性5人と女性5人が踊る場面で急に美しい音楽となり、ダンスも見やすくなる。その後は最後まで美しい曲調で、セクシーかつ美しいダンスが続くが、これと言って主張のない作品と言わなければならない。

ny1610e_04.jpg Unframed. (C) Paul Kolnik ny1610e_05.jpg The Dreamers. (C) Paul Kolnik

現在、NYCBの若手振付家で最も期待されているといわれるジャスティン・ペック(Justin Peck) は、現在ソリストでレジデント・コレオグラファーのポジションを維持しており、この舞台のために2作を出品した。
その一つの『ドリーマーズ (The Dreamers)』はデュエットで、プリンシパルのサラ・マーンズ(Sara Mearns)とアマール・ラマサール(Amar Ramasar)が踊った。手を繋いで出てきた二人が、速く複雑なデュエットを踊った後、背中合わせに横になる。すぐに男性が立ち上がって、円を描いて踊って横になる。すると今度は女性が起きて踊りだす。再び二人のデュエットがあった後、また横になって終わる。ダンサーたちのテクニックは良いが、観客を啓発する要素は見られなかった。
ペックのもう一つの作品、この夜、最後に踊られた『私たちが行く所々で(Everywhere We Go)』は、スファン・スティーブンス (Sufjan Stevens) の曲に振付けられた、9つのセクションからなる作品。幾何学模様が変化するホリゾントの前で、群舞が踊られた。物語をはらんでいるような曲だが、踊りには物語性はなく、万華鏡のように速いテンポのバレエが展開する。それに応じて背景に映し出された幾何学模様プロジェクションも変化する。リードしたプリンシパルダンサーたちは優れているが、残念ながらそのダンサーの良さを活かす振付とは思えなかった。目新しいものを取り入れてあるようで、思い切った冒険はなく、振付家のメッセージも伝わることはなかった。リードしたレベッカ・クローン(Rebecca Krohn)とアマール・ラマサール(Amar Ramasar)の演技が良かった。

ny1610e_03.jpg Ten in Seven. (C) Paul Kolnik ny1610e_06.jpg Everywhere We Go. (C) Paul Kolnik

この日唯一楽しめたと言えるのが、現在NYCBのコール・ド・バレエのピーター・ウオーカー(Peter Walker)がトーマス・キクタ (Thomas Kikta)のジャズバンドの曲に振付けた『Ten in Seven』だった。特にプログラムに説明はないが、10人のダンサーが7つの曲に踊るジャズ・バレエだ。ステージの上にはプラットフォームが組み立てられ、ミュージシャンがその上でライブ演奏した。曲は軽快なものから静かなアダージオ、しっとりとした曲や前衛的なもの、そしてモデラートな哀調を帯びた曲と、良いバランスで配分されている。振付はバレエの域をほぼ外していないが、時にバレエ本来の枠を超える動きも見られた。群舞からデュエット、トリオとフォーメーションも変化を加え、色とりどりの衣裳を着て10人のダンサーたちが踊りまくる、楽しい作品である。
新しい作家による新しい作品は、ともすれば試行錯誤が多くなり、受け入れられるのが難しい傾向にあるが、今回特に感じたのは、バレエを目指して頑張ってきた若いダンサーたちにとって、バレエの外に目が向けるのは難しいのかなという懸念である。バレエの世界から踏み出して実際の世の中を見るといった人生の経験があれば、動きの枠を壊す勇気も出れば、世の中の暗い部分にも目が向き、自身の主張が出てくるのではないかと思われた。
(2016年9月27日夜 David H Koch Theater at Lincoln Center)

ny1610e_02.jpg New York City Ballet in Peter Walker's Ten in Seven. (C) Paul Kolnik