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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2015.06.10]

サンバやボサノヴァ、極太チェーンの音、ヒップホップ系など様々なタップが踊られたリズム・イン・モーション

American Tap Dance Foundation アメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション
“Rhythm in Motion” Program A 、B “リズム・イン・モーション” プログラムA、B
Directed and Curated by Tony Waag トニー・ワーグ:芸術監督&キュレーテッド

4月22日から26日まで、アメリカン・タップ・ダンス・ファンデーション(ATDF)による “リズム・イン・モーション” の公演が、The Theater at the 14th Street Yにて行われました。芸術監督とキュレーターは、ATDF代表のトニー・ワーグです。“リズム・イン・モーション” は3年前から始まり、毎年春に公演が行われています。ニューヨークで活躍しているトップクラスのタップ・ダンサーたち、タップ教師たちが出演しています。
プログラム A は、22日から24日まで、プログラムBは25日から26日まで上演されました。
私が観劇した公演は、22日夜のプログラム A と、25日夜のプログラムBです。演目が多かったため、上演作品のデータと、印象に残った作品とダンサーについて抜粋してレポートいたします。
今回の公演では、プログラムA、B両方とも、ニューヨーク在住のブラジル出身のタップダンサー、振付家のFelipe Galganni(フェリペ・ガルガンニ)の出番が多く、フィーチャーされていました。ガルガンニは、今までタップダンスには無かったようなステップ、ブラジル独特のサンバやボサノヴァのリズム・タップのステップを開発しており、おもしろく興味深いです。彼は品が良く、とても好青年です。ATDFとトニー・ワーグたちが、ガルガンニに特別にチャンスを与え続けて目をかけて育てている理由が分かります。10年以上ATDFの活動を取材し続けてきましたが、ガルガンニの抜擢ばかり続いていることは異例です。私の予感では、やがて数年後にはガルガンニはタップ界でメキメキと頭角を現していき、華々しい結果を出していくことでしょう。
ガルガンニはこれから期待大の、将来が楽しみな要注目の旬のダンサーですので、ニューヨークにお越しの機会があれば、今のうちに彼のクラスを受講してみてください。おすすめします。

プログラム Aは、8曲の短い作品が上演されました。生演奏の音楽はピアノ、ベース、ドラムスの3名で、時々舞台の端に出てきて演奏しました。
最初は“バックステージ” というタイトルが大きなスクリーンに映り、出演ダンサーたちの練習、リハーサルの様子のドキュメンタリー映像が、編集されて次々に映りました。この映像は、トニー・ワーグが撮影、編集製作したものです。
そしてダンサー4名(女性3名、男性1名)が出てきて、プログラム1つ目の作品、”MidBloom”が始まりました。音楽はPolica による“Dark Star” で、録音の音源です。振付はSamara Seligsohn、ダンサーは、Christina Carminucci, Brittany DeStefano, Felipe Galganni, Samara Seligsohnです。現代的な振付でした。
次の作品は、“Leon” 。音楽はベーシストのGreg Richardsonによるもので、彼の他、ギター、サックス、パーカッションの4名で生演奏しました。振付と出演ダンサーは、Leonardo Sandovalで、ソロでした。現代的な、複雑なリズム・タップの振付でした。
そして、トニー・ワーグが舞台上に出てきて挨拶をし、盛り上げました。

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All photos by Vitally Piltser.

3曲目は、“Clave do Leao” です。音楽は同名の曲で、ベーシストのGreg Richardson と振付家のLeonardo Sandovalによるものです。音楽家は先ほどと同じメンバーで、ベース、ギター、サックス、パーカッションの4名で生演奏しました。振付は、Leonardo Sandovalです。ダンサーはChristina Carminucci, Brittany DeStefano, Samara Seligsohnなど男女9名です。最初は手拍子だけで音楽はなしで踊りました。やがて音楽が始まり、ゆったりしたリズムで楽しそうな踊りでした。だんだん演奏の音が分厚くなり、音楽も盛り上がって、9名全員で同時に踊り大迫力でした。

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次は、“#teamtap”です。芸術監督と4つの振付は、Derick K. Grant。プログラムAで特に印象に残った作品です。振付と構成がよく考えられていて、強弱もあり、難しいステップが多く面白かったです。
音楽は5曲で、女性歌手がソロで歌いました。振付は曲にあわせて5つの小さな作品が、メドレーで続きました。
最初は、“A Train” (by Billy Strayhorn)を女性歌手が歌いました。4名は、昔ながらの伝統的なタップを踊りながら出てきました。やがて、だんだん難しいファンク・タップのステップになり、複雑な踊りを見せました。とても上手く、拍手が大きかったです。ソロの踊りが続き、また4名で踊りました。この後、4曲が続きました。“A Capella”、“Peche Mignon” (by Jazztronik、振付はRonxll)、“On Green Dolphin Street” (by Bronislau kaper)、“Caravan” (by Juan Tizal)です。
女性ソロで、伝統的なビ・バップやスウィングのリズムのタップを披露しました。現代的なファンク・タップだけではなく、伝統的な基礎のステップも取り入れて見せていて、振付のバランスが良かったです。他の女性達、3名のソロの踊りが順番に続きました。現代的な、難易度の高いファンク・タップの早打ちのステップも長く見せ見事。すごい拍手でした。

そして5曲目は、“Boards and Chains”です。振付はMichelle Dorrance & Nicholas Young と、即興のソロは4名の出演ダンサーたち各自によるものです。
女性1名と男性3名が板(横1m、縦60cm位の大きさ)を持って出てきて、床に置きました。その板の表面には、ギザギザの細かい突起がついている幅15cmくらいの長細い金属板が貼ってあり、その金属板の部分を4名はいっせいに、タップシューズの右足の側面やヒールを使ってすって、時々ザーッという音を立てていました。普段のようなタップシューズの使い方でトウやヒールでカチカチと音を立ててリズムを刻みながら、合間に先ほどのように金属板をするザーッという音を入れ、“ザー、カチカチ・・・”というような複雑で強弱のあるリズムの音が続きました。そしてあくまでも、現代的なリズム・タップのステップを繰り広げました。これは斬新で面白かったです。
続けて、4人とも、手に極太のチェーン(1m以上の長さ)を持って、その端を片手でにぎって、板の上にたたきつけたり、バタッと落としたりして、靴音とは別のチェーンが奏でる音を立てリズムを刻んで加えていました。チェーンを時には、ザザザとゆっくりおろしたり、複雑に様々な音を立てながら、タップシューズでもリズム・タップを踊りながらリズムを刻んでいました。靴音はとても大きな音を立てていて、迫力がありました。極太チェーンを使うところもとても斬新でした。新しいアイデアに満ちた独特な創作で、様々なリズムの音色を使っていて、テクスチャーの違う音の効果が面白かったです。踊りのステップも複雑で難易度が高くて、見ごたえがありました。これは、今回のプログラムAとB両方の中で、一番斬新で見ごたえがあり、特に印象に残りました。

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次は、“All Blues/Tacit”です。音楽は、“All Blues” by Miles Davis、歌はトニー・ワーグです。振付は、Brenda Bufalino、ダンサーは男女ペアでFelipe Galganni, Lynn Schwabです。最初は音なしで、2人で伝統的なリズム・タップを踊りました。そして、トニー・ワーグの歌とバンドの生演奏が始まり、ゆったりしたブルースが流れました。途中、早い3拍子が続き、やがて途中で4拍子の音楽も混ざりました。現代的なリズム・タップが続いた中に、このような伝統的なタップのステップの作品がはさまれていて、バラエティーに富んだプログラムでした。ガルガンニはブラジル人らしいせいか、踊っている時の顔の表情が非常に豊かでした。

7曲目は、“Sugah Daddy”です。音楽は同名の曲で、D’Angeloによるものです。振付は、Jason Samuels Smith(タップの振付) & Sue Samuels(ジャズダンスの振付)です。出演ダンサーは、Jason Samuels Smith & Company、ジェイソン本人も出演していました。ジェイソンもとても才能のあるタップダンサーで、力強い踊りで音も大きく上手です。以前レポートしました、スペイン人のフラメンコのバイラオールのフアン・デ・フアンとジェイソンはデュオを組んで、タップとフラメンコを融合させたダンス公演のツアーをスペインで行っており、注目されています。
男女6名がダンスシューズをはいて、ヒップホップとジャズダンスが混ざった振付のダンスを踊りました。そしてジェイソンたち男性3名がタップダンスを踊りました。ゆったりしたリズムのファンク・タップです。複雑なリズムで難易度が高い振付でした。そして先ほどの6名のダンサー達と3名のタップダンサー達が一緒になり、同時に踊りました。

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次の作品は、“Diary of a Racing Pigeon”(Chapter 3)です。音楽は、“Introduction & Allegro” by Ravelです。振付と出演ダンサーは、Brenda Bufalino、トニー・ワーグとともにATDFを作り率いてきた方です。70代で現役の、タップ界の大御所のバファリーノがソロで踊りました。バファリーノは女性らしい柔らかい独自の味を生かしたタップを踊ります。人間的にも素晴らしい方で、ワーグたちからも尊敬されています。
この作品は、バファリーノがレース鳩に扮し、演劇とパントマイムの要素が強かったです。頭にアバンギャルドなシビラ(スペイン人デザイナー)のデザインのような被り物をつけていました。
ゆったりとしたクラシック音楽が流れ、バファリーノがストーリーテラーとして語りながら、その語りのリズムに合わせてタップで踊りを入れていきました。リズムは一定ではなく、流れるリズムは強弱があって独特で、タイミング、間合いはビシッと決まっていました。語るリズムと、タップを入れるリズムが同時に、入れるべきところで上手く音を入れ、休むべきところでは音を空白にしており、強弱の間合いが全て決まっていて、それがずっと続き無駄がなく、全てのタイミングとバランスが完璧で見事でした。さすがです。あまりにも見事で、他の人には決してできないような完璧なバランスを続けるので、なぜ大御所とされているのか分かり、感心しました。センスが良い方なのです。
舞台後ろの大きなスクリーンいっぱいに、空と木々の風景の映像が映し出されていて、移り変わっていきました。詩的な映像で、風景だけなので想像力をかきたてられるような構成で、これも素晴らしかったです。
途中、舞台上の小さな鏡台の前のスツールに座り、鏡を見ながら、語りながら化粧したり、帽子をつけかえたり、着替えていきました。そしてまた、語りながら踊りが続きました。
私がバファリーノのストーリーテリング&タップの作品を見たのは初めてでしたが、これは圧巻で見事でした。観てよかったです。
(2015年4月22日夜 ニューヨーク、The Theater at the 14th Street Y)

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プログラム Bは、10曲の短い作品が上演されました。
オープニングはプログラムA と同じ映像が流れました。
1曲目は、“Samba Experience” – Dehydrated Rhythmsです。音楽は、“Ma” (by Tom Ze)で録音の音源です。振付はFelipe Galganni、ダンサーは男女7名です。ゆったりしたサンバのリズムでタップを刻み、足だけではなく上半身と両手の振付も多かったので、表現が豊かでした。
2曲目は、“Samba Experience” – Traveling Beats。音楽は“Nave Maria” (by Tom Ze)、振付はFelipe Galganniです。2人は向かい合って踊りました。ステップはサンバのリズムで、回転も入れていました。他では観ないような、独特のサンバのステップでのタップダンスで、面白かったです。
3曲目は、“VariationsⅠ“。音楽はバッハの「ゴールドベルク変奏曲」で、振付はCaleb Teicher。出演ダンサーは男女3名です。最初は静かにゆっくり男性がソロで踊りました。やがて男性2名、女性1名とだんだん増え、速いリズムで激しくリズムを刻んで踊りました。
次は、“Chloe Arnold’s Apartment #33… Where Dreams Are made”です。音楽は、“Empire State of Mind” (by Alicia Keys & Jay Z) 。振付はChloe Arnord、出演ダンサーは男女8名です。ニューヨークについての曲で、舞台背景のスクリーンにはニューヨークのストリートで撮影した映像が流れました。みんなジーンズで登場し、ヒップホップのようなファンク・タップを踊りました。グループで同時に踊ったり、一人ずつ真ん中で即興でタップをして、ダンス・バトルが繰り広げられました。難易度が高い現代的な振付で、迫力があり力強かったです。

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そして5曲目は、“Variations II “です。音楽はバッハの「ゴールドベルク変奏曲」。振付はCaleb Teicher、出演ダンサーは男女3名です。クラシック音楽が流れ、3名が静かにタップを踊りました。ゆったりしたワルツの曲です。1人ずつ踊るところもあり、途中、すごい早打ちもありました。現代的な黒人っぽいファンク・タップとは全く違う、対極的なステップばかりで、プログラムの間に入れられていて全体のバランスが良く、効果がありました。
6曲目は、“Without Your Love” です。音楽は、“Without Your Love” (by Johnny Lange/Stryker) で、振付と出演女性歌手が歌いました。バンドと女性歌手の音楽と合わせて、難易度の高いリズム・タップのステップでソロで踊りました。とてもリズム感が良くテクニックもあり上手く、音も大きかったです。
次は“Stardust”。音楽はLionel Hampton “Stardust” (by Hoagy Carmichael) です。振付は、Michela Marino Lerman。これはミュージカル風で物語があり、男女のダンサーたちが会話しているようなタップでした。ニューヨークの街角の夜景がスクリーンに映されていました。男性が女性を追いかけてきて声をかけ、やがて会話して仲良くなり、2人で手をつないで去っていきました。ハッピーエンドの物語でした。
8曲目の“Nica’s Dream”は、音楽は“Nica’s Dream” (by Horace Silver)。振付はSusan Hebachとダンサーたちです。出演ダンサーは7名で、名は、板の台を持って出てきて床に置き、砂を落として広げました。そして、その砂をタップシューズをすってザーッという音を出していました。この3名は主にザーッという音だけを組み合わせてタップを踊りました。他の4名は通常のリズムの打ち方でタップダンスを踊りました。ザーッという音とカチカチという普段のタップダンスの音を、両方組み合わせたダンスでおもしろかったです。
次は、“Variations III “です。音楽はバッハの「ゴールドベルク変奏曲」。振付はCaleb Teicherです。男女3名のダンサーがクラシック音楽にのって、すごい早打ちの足技を続けていました。静かで繊細なステップの、早打ちでした。

10曲目は“Excuse Me Mr.”。音楽は“Excuse Me Mr.” (by Ben Harper)、ギターとヴォーカル女性の生演奏でした。振付と出演は熊谷和徳、ソロで踊りました。音の強弱が大きく、小さな繊細な音から始まり、次第に大きく激しい音になっていき、とてもメリハリのある踊りでした。すごく細かくて繊細な打ち方が続き、見事でした。大きな音は迫力があり、とても上手く大きな拍手に包まれました。さすが、圧倒的な実力です。
最後は“WhiTeNoiSe”です。音楽は、“WhiTeNoiSe” (by SoundMovement)。振付はNicholas Youngと、即興ソロ部分は各ダンサーたちです。男女5名の出演ダンサーは、横に並んでイスに座っていて、指を鳴らしたり、胸や足をたたいて音を出していました。それとタップを組み合わせて音を鳴らしリズムを刻んでいました。やがて立って、リズム・タップを踊りました。背景では、ラジオのような音でニュースやナレーションのような語りの音がザワザワと鳴っていました。
(2015年4月25日夜 ニューヨーク、The Theater at the 14th Street Y)

ny1506b_06.jpg All photos by Vitally Piltser.