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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.11.10]

ミルピエのカンパニー、L.A.ダンス・プロジェクトが3人の振付家による3作品を上演

L.A.Dance Project Founding Director: Benjamin Millpied
L.A.ダンス・プロジェクト バンジャマン・ミルピエ:芸術監督
“Reflections” by Benjamin Millpied, “Murder Ballades” by Justin Peck, “Quintett” by William Forsythe
『リフレクションズ』パンジャマン・ミルピエ:振付、『マーダー・バラード』ジャスティン・ペック:振付、『クインテッド』ウイリアム・フォーサイス:振付

10月16日から10月18日までBAMで、L.A.ダンス・プロジェクトの公演があり、10月17日の公演を観に行きました。
L.A.ダンス・プロジェクトは、現在最も世界で注目されている振付家の一人であるバンジャマン・ミルピエが、ニューヨークからL.A.に引っ越した後、2012年に設立したダンス・カンパニーです。ミルピエはNYCB(ニューヨーク・シティ・バレエ)の元プリンシパル・ダンサー(2011年にダンサーを引退)で、現役のダンサー時代からNYCB、ABTなどで振付家としても同時に活躍。現夫人のナタリー・ポートマン主演の映画『ブラック・スワン』の振付でも注目されました。そして今秋からパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任しました。振付家としても才能を発揮してきました。
ダンスキューブでもミルピエがNYCBの現役のプリンシパルとして踊っていた当時の公演のことや、その振付についてレポートしたことがありますが、今回のL.A.ダンス・プロジェクトの上演を私もとても注目し、楽しみにしていました。

ny1411a_0297.jpg 「リフレクションズ」
Photo (C) Julieta Cevantes

公演では3名の振付家の作品が、2回の休憩をはさんで3作品上演されました。
1つ目は“Reflections”(リフレクションズ)(2013年5月初演)、振付はバンジャマン・ミルピエ、音楽はデビッド・ラングです。
幕が上がると舞台後方の壁いっぱいに、赤地の背景に白い大きな文字でSTAYと、床にもいっぱいに、同じく赤地の背景に白い大きな文字でTHINK OF ME THINKING OF YOUと描かれていました。これが簡素な舞台セットとなっていました。初めはリズムが無いようなランダムな感じの、生演奏のピアノの音楽だけが鳴っていました。
1組目の男女2名が出てきて踊りました。男女とも裸足で簡素な衣装、男性はGパンと長袖Tシャツ、女性はミニスカートとノースリーブシャツです。2人が会話をしているような、演技をしているような踊りでした。
ミルピエの振付はすべて、バレエベースですが現代的です。一つ一つの動作が、連動性があって流動的です。同じ動きは繰り返されず、少しずつでもすべて違う動きばかりが連なっていくのです。個性的で、オリジナリティーがあふれる振付なので、とても新鮮です。
リフトも少しあり、踊りながら女性が男性のほうへ飛び込んで、男性が女性をそのまま受け止め、その飛び込んで突っ込んだ方向へ女性をほぼ水平に3周くらい回しました。床の上に2人とも寝転がって動き、同時に座りながら動いたり、床の上で動くところも多かったです。立ち上がって踊ることから、床に寝転がって動くことまで、上下の方向での動きの幅が大きかったです。

ny1411a_0341.jpg 「リフレクションズ」
Photo (C) Julieta Cevantes

2番目は、男性ソロです。最初、舞台中央でバレエの5番ポジションのルルヴェでじっと立っているところから始まりました。短い丈のGパンと長袖Tシャツの衣装です。速いテンポのピアノ曲で、とても短い踊りでした。同じ動きが全くなく、全て違う動きが流れるように続いていき、自然な感じでバランスがとれていて見事です。最後は床に寝転がっているところで終わりました。
3番目は、舞台中央辺りに新たな別の壁が上から下りてきて止まりました、赤地の背景に白い大きな文字でGOと書いてあります。2番目の男性ソロの踊りの終わりと重なっていて、その男性ダンサーが寝転がったままのところにもう一人男性が出てきて、この2人がゆっくりと重なって寝転がり、動き始めました。組み体操のような動きを繰り返して、去っていきました。そしてこのGOの壁が上がっていき外されて、もとのSTAYと書かれた壁に背景が戻りました。4番目は男女ペアが、速いテンポのピアノ曲にのって踊りました。
5番目は、ゆっくりしたリズムの、低音だけを使ったピアノ曲でした。先ほどの4番目の男女2名と別のダンサー達が加わり、5名で踊り始め、続いて1、2名で踊ったり、2、3名や、5名でと少人数での踊りが入れ替わって重なっていきました。次々に舞台上手から出てきて、踊りながら下手へと通り過ぎ去っていったり、また上手へ戻っていったりしました。ダンサーの出かた、去りかた、戻りかたの振付がそれぞれ異なり、同じものは続かないように振付に変化が加えられていました。ダンサーたちは、左右に行ったり来たりを何度も繰り返しました。
また曲が変わり、静かなピアノ曲にのって、5名がでてきて、それぞれが違う振付を同時に踊りました。男性2名と女性2名の組み合わせだったり、4名、5名と、ダンサー達の組み合わせが入れ替わって踊りがたたみかけるように重なり、動きを続けていました。その間、男性1人は舞台上手の前方で座ってじっと見ているだけでした。その男性はやがて立ち上がり、激しく踊りました。回転が多く続きました。
その後も目まぐるしく、数名ずつの踊りが次々に入れ替わり、重ねられ続けられました。
いくつもの物語が、同時に進んでいるような、演劇の要素も強い踊りで、ダンサーたちの表情もよかったです。他で観たこともないような個性的な動きもあり、独特でした。
最後は、女性2名が舞台上に残り1、他のダンサーたちは去って、その女性2名は床に座り込んでお互いの顔を見つめ合い、2人とも相手の顔を段々少しずつ両手で抱え込んでいき、2人が重なって終わり、ライトが消えました。

ny1411a_0562.jpg 「リフレクションズ」Photo (C) Julieta Cevantes

ny1411a_0093.jpg 「マーダー・バラード」
Photo (C) Julieta Cevantes
2曲目は“Murder Ballades”(マーダー・バラード)(2013年9月初演)振付はジャスティン・ぺック、音楽はブルース・デスナーです。
ジャスティン・ぺックは、現在、NYCBのソリストでもあり振付家としても活躍しています。カリフォルニアのサン・ディエゴ出身です。ぺックは今年、NYCBの常任振付家(レジデント・コレオグラファー)になりました。異例の大抜擢で、21世紀の期待の振付家です。
バンジャマン・ミルピエの時もそうでしたが、NYCBは若く才能のある振付家に振付を任せる機会を与えてきています。伝統的なクラシック・バレエの世界で、若い振付家がチャンスを与えられて、存分に作品を作り才能を発揮できることは、とてもオープンなアメリカ、特にニューヨークならではことだと思います。その結果、NYCBからミルピエを輩出し、ぺックが現在、その振付の才能を発揮しつつあります。きっとペックも、将来はこのNYCBでのキャリアの後、さらに活躍の場を世界へと広げていき、重要な振付家となっていくことでしょう。今後も、ペックの振付作品の取材を重ねていきます。
舞台後方の壁は、全体が大きな抽象画のような画面でした。音楽はオーケストラの生演奏で、女性2名、男性4名、全部で6名のダンサーたちが出演しました。衣装はそれぞれカラフルな私服のような感じで、バスケットシューズやスニーカーを履いていて、女性はショートパンツでした。
ダンサーたちは表情の表現もたっぷりで、演技の要素もある作品でした。全体の印象はミュージカルのようなもので、シアターダンスのように音楽に乗って大きく身体を広げて表現する振付でした。
速いリズムにのって、数名で出てきて踊り、入れ替わってまた別の人が踊っていき、男女ペアも踊りました。男性ソロもありました。ダイナミックな踊りで、肉体を大きく広げて伸び伸びと使う振付がずっと続きます。2名ずつくらいが出てきて踊り、人数が増えていき、6名のダンサーが舞台上に縦に1列に並んで固まって動き、また散らばって、また縦1列に戻って並んで踊りました。舞台全体を大きく使って、走り周り、飛び廻っていました。右回転、左回転を交互に入れて、身体の重心が入れ替わり続ける振付が多く、難易度は高いです。
昔ながらのバレエベースのシアターダンスの要素が強く、それにコンテンポラリーが少し加えられたような振付でした。伸び伸びとしていて、楽しそうで陽気で明るい踊りです。最後は6人全員がそろって同じ振付で、早くダイナミックに踊りました。

ny1411a_0154.jpg 「マーダー・バラード」Photo (C) Julieta Cevantes

3曲目は“Quintett”(クインテット)(1993年10月初演)です。振付はニューヨーク出身のウィリアム・フォーサイス、音楽はギャヴィン・ブライアースです。昔のフォーサイスの作品を再振付したものです。近年のフォーサイスの公演作品は、踊りの要素が少なくほとんど演劇のようで、前衛的で難解なものになっていっています。今回上演したこの作品は20年以上前のもので、その頃のフォーサイスは踊りの多いコンテンポラリーを作っていました。彼にしか作れないような、独特のリズム感の振付なのです。ですから、その頃のフォーサイス作品を選んで取り上げて上演したことは、さすがミルピエの素晴らしい選択だと思いました。
音楽は小さい音で、ゆったりとしていて、ささやくような歌が入ったもの。録音でした。
舞台上に男性2名女性2名のダンサー4名が出てきて、上手中央寄り辺りに何か大きな機械を置いてあります。男性1人が前に出てきて、ソロで踊り始めました。リズムが無いようなランダムな拍子の取り方の動きを続けます。自由で伸び伸びした感じの踊りです。
全員立ち上がって踊り、途中、2名ずつペアで踊ったり、3名で踊ったり、ダンサーたちは小さなグループで出てきたり引っ込んだり、入れ替わっていきました。
フォーサイスの振付はいつも、音楽のリズムに合っていない少し最後がはみ出ているような感じの動きなのです。4拍子の1小節から4分音符が1つ2つはみ出たようなリズムの取り方を、バラバラにしてつないでいく感じです。動く時のダンサーの重心は、前後左右に、1つの動作ごとに少しずつ動くことが多いです。床の上に寝転がったり、立ち上がったり、上下の動きも多く、時々、手や床、足などをバンッとたたいて、打つ音を出していました。リフトもありました。
同じ曲調がずっと続き、その音楽を延々とくり返し、振付も最後のほうは同じことが何度も繰り返され続けました。ゆったりした同じ曲と同じ振付を何度も何度も観ていると、幻想的に見えてきて、だんだん引き込まれていきます。最後までその同じ曲と振付が繰り返され、踊っている最中に幕が閉じました。観客は立ち上がり、大拍手に包まれました。
(2014年10月17日夜 BAM Howard Gilman Opera House)