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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.05.12]

ストリート・ダンサー、リル・バックの鮮烈なダンス、NYCB「21世紀の振付家たち」

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ
21st CENTURY CHOREOGRAPHERS I 『Les Bosquets』Choreography by JR
「21世紀の振付家たち I」『レ・ボスケ』JR:振付ほか

ニューヨーク・シティ・バレエの春の公演「21世紀の振付家たち」が行われました。これは文字通り21世紀の振付家たちの作品を紹介するもの。IとIIの2回に分けて行われるが、Iは、他にウィールドン、マーティンス、フォーサイス、ラトマンスキーなどの作品が登場した。休憩を2回はさんで5作品が上演されましたが、ここでは初演作品の『レ・ボスケ』を紹介します。この日は、ABTの人気ダンサー、ダニール・シムキンがスーツ姿で観劇しに来ていました。

ny1405a01.jpg Photo : Pauk Kolnik

『Les Bosquets(レ・ボスケ)』の音楽は、ウッドキッドですが、New Woodkidとクレジットされています。振付とプロダクション・コンセプト&ステージング&ビデオ・プロジェクション監督はJRです。振付の追加は、リル・バック(Lil Buck)とピーター・マーティンス(Peter Martins)。主演ダンサーはローレン・ロヴェッテ、リル・バックです。
ウッドキッドは、映像作家としても活躍しているヨアン・ルモアンヌの、音楽家としての別名です。ルモアンヌはマルチアーティストで、イラストレーション、絵画、写真、映像、音楽、アニメ、3D、彫刻などで活動していて、注目されています。パリとニューヨークを中心に活動しています。
ニューヨーク・シティ・バレエ団は、時々、旬の若手アーティストやデザイナー、大御所アーティストたちと、コラボレ−ションして新しい作品を作り、発表し続けています。今回の作品もそうした企画で、バレエではない、ストリート・ダンサーも主役に起用していました。
リル・バックという黒人ダンサーです。テネシー州メンフィス出身で、子供の頃から地元のストリート・ダンサーに混じって影響を受けて踊っています。アメリカのテレビ番組に登場して注目され始め、認知度が高まって、マドンナの世界ツアーのバックダンサーとしても活動しました。“Jookin”(ジューキン)や“Buckin”(バッキン)と呼ばれているストリートダンスが中心です。これは、私は初めて見しましたが、ストリート系でポップな踊りをメインとして取り入れ、バレエだけではない新しい試みです。

ny1405a02.jpg 『Les Bosquets(レ・ボスケ)』Photo : Pauk Kolnik

最初、白黒の水玉模様の、全身レオタードの男女のダンサーの群舞が現れました。何十人も出てきて踊りました。バレエベースですが少しコンテンポラリーの要素も混じった振付でした。大勢が揃っていて迫力がありました。
そのダンサーたちの間に、真っ白の上下の衣装でリル・バックが出てきて、大勢の中で少し動いては去っていったり、また出てきたりして動き続けていました。その合間に、白い分厚い紙でてきたようなチュチュを着たダンサーが出てきて、踊っていました。
みんな去って、白いチュチュのダンサー、ローレンが倒れていて、震えながら起き上がろうとしていました。リル・バックが出てきて、その女性、ローレンに近寄ってきます。その動きは、ブレイキングのようで難しく、両手両足の関節を全部外しながら踊っているようにも見えました。両手両足と全身をクネクネと大きく動かし続けているのですが、身体の重心はピタッと止めたまま動かないのです。そのまま重心を動かさないままで、手足を動かし続けたままで、足をスライドさせるような動きをして進んでいくのです。ブレイキングの混じったコンテンポラリー・ダンスのような、格闘技をゆっくりしているような、例え様の無い、あまり観たことの無い踊りでした。そして2人は、お互いに会話するように踊りました。
やがて、舞台後ろの壁いっぱいに張られた大スクリーンに、このダンサー2人の映像がアップで映し出されました。おそらくリハーサル時に撮影したものでしょう。舞台上で彼らが踊っている動きと全く同じ動きの映像を、同時に流していました。映像では、2人のダンサーの顔も時々、アップで映っていました。
また大勢のダンサーが出てきて、2人は徐々に舞台から消えていきました。そこで幕が閉じて終わりました。とても現代的な感覚が感じられた作品でした。

ny1405a03.jpg 『Les Bosquets(レ・ボスケ)』Photo : Pauk Kolnik

参考に、リル・バックの強烈に個性的な独自の踊りで、バレエの『白鳥の湖』を表現した映像があります。ニューヨーク・シティ・バレエのバレエ・ダンサーに混じってスッと彼が自然に溶け込んで、ストリートダンスを踊っていた今回の舞台の様子が、想像できるかと思います。この踊りは、ヒップホップやジャズだけではなく、クラシック音楽にも合っているのが見事です。
2011年11月北京、ヨー・ヨー・マとリル・バックの共演の映像で『白鳥の湖』の音楽で踊る、“The Swan”という作品です。
http://live.wsj.com/video/yo-yo-ma-and-lil-buck-do-the-swan-in-beijing/3C0B4FFB-7145-45B7-B053-0C0D4D60AECE.html#!3C0B4FFB-7145-45B7-B053-0C0D4D60AECE
(2014年5月1日夜 リンカーンセンター、David H. Koch Theater)