ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From New York <ニューヨーク>: 最新の記事

From New York <ニューヨーク>: 月別アーカイブ

ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.04.10]

フラメンコを越えた独創的なダンサオーラ、ロシオ・モリーナの鮮烈な踊り

Rocio Molina + Rosario La Tremendita
ロシオ・モリーナ + ロサリオ・ラ・トレメンディータ
“ Afectos ” by Rocio Molina
『アフェクトス』ロシオ・モリーナ:振付

3月20日から22日まで、バリシニコフ・アーツ・センターのジェローム・ロビンズ・シアターで、ロシオ・モリーナがソロで踊る注目の公演がありました。私が鑑賞したのは22日です。ダンサーはロシオ1名ですが、同い年の女性ミュージシャン1名と小さな舞台上で共演することで、視覚的にも全体で一つの作品となっている公演でした。

ny1404c01.jpg Photo  by Anna Lee Campbel

ロシオ・モリーナは、自らをダンサオーラ(Danzaora)と名乗っています。1984年、マラガ出身。3歳から踊りを始め、2001年にマリア・パヘス舞踊団へ入団。2002年、マドリッド王立舞踊学校を卒業。2005年、ビトリア中央劇場で処女作『壁の間(Entre Paredes)』を発表。2010年11月、26歳の若さで、プレミオ・ナシオナル・デ・ダンサ(スペイン舞踊家賞)を受賞しました。
ロサリオ・ラ・トレメンディータは、カンテとギターです。1984年、セビージャ出身。ファーストアルバムの“A Tiempo”(World Village – Hermonia Mundi) は、2010年に、プレミオ・フラメンコ・オイの新人歌手部門のベストアルバム賞を受賞。
キャストはもう一人いて、男性のダブル・ベースの、パブロ・マルティンです。
この作品のオリジナル・アイデアは、ロシオとロサリオによるものです。
去年、ニューヨークのフラメンコ・フェスティバルに出演していたロシオ・モリーナを見て、その独創的な振付と個性、堂々とした落ち着きとあふれる自信を感じて、ずっと今まで強烈に印象に残っていました。すっかりロシオの世界の虜になってしまいました。現在、フラメンコ界で若手ナンバーワンで、コンテンポラリーの要素もかなり混ぜていらっしゃいます。そのため今回のニューヨーク公演も鑑賞し、少しインタビューもすることができました。

ny1404c02.jpg Photo  by Anna Lee Campbel

この劇場はとても小さいスペースなので、少ない人数で、至近距離でロシオの踊りを見ることができる貴重な機会でした。現在は、普段ロシオは大きな劇場でしかほとんど公演しないからです。
舞台セットは、下手にロサリオの大きめの椅子、上手の後方にロシオの椅子、上手端前方にパブロのベース、中央後方に何着か衣装がかけられている大きなポールハンガーが置いてありました。その衣装を時々、舞台上で、合間に着替える演出でした。
照明は全体にやや暗い感じで、ロシオとロサリオにスポットライトが当たりました。ロシオはとてもキュートで、ロサリオはワイルドな雰囲気の美人なので、とても絵になっていました。休憩なしのノンストップで、1時間半くらいでした。激しくて速いサパテアードが続いた後は、着替えたり、奥に入ったり、椅子に座っている間に、ロサリオが立ち上がってパルマをしたり、歌ったりしていました。
5つの作品が途切れることなく連なっていきました。『インティモ』『エン・ティ・ミ・プルソ』『サル・イ・ポンテ・ダマ・エルモサ』『カフェ・コン・ロン』『アフェクトス』です。
今回は、本来の彼女のベースである本格的なフラメンコ舞踊もたくさん見ることができました。すごく基本がしっかりしていて、サパテアードが正確で音も大きく、迫力がありました。リズム感も音感も抜群です。しかもフラメンコのリズムだけではなく、ラテン、ルンバのリズムもやっていました。フラメンコシューズで、別のリズムも取り入れて新しい試みをなさっているのですね。さすが、ダンサー一人でも充分見せます。
ロシオとロサリオが立って近づいて、向かい合って、小さなヒソヒソ声でスペイン語でしばらく話し続けて、ロシオは座ってロサリオはその背後に立って囲んでいるシーンも面白かったです。2人で重なって、揃ってパルマをいれながら、ロシオは足元だけサパテアードを細かくやり続けていました。
立ててあった薄い箱をパタンと倒して、その中にロシオが入って立ち、前後左右の箱の4辺も利用しながらサパテアードをし続けているところは特に、印象に残っています。普段のサパテアードに加えて、さらに箱の四方の側面を利用して音を増やして鳴らしていました。フラメンコシューズの側面を箱の側面へ、前後左右に向けて打ち付けていました。音の種類と数が倍くらいは増えていました。ですから踊るご本人は、普段にもまして、リズムと音と動きに集中して研ぎ澄まさなければならないです。それを超高速でやり続けていたので、身体の軸を保ちながらバランスをとるのは難しそうだな〜と感心しました。観たことがなかった面白いアイデアです。
ルンバのリズムで、フラメンコシューズでリズムを刻みながら踊ったところは、タップダンスのようでもあり、とても面白かったです。フラメンコとは違うジャンルのリズムを打ち続けて、お尻を振りながら腕の動きもつけて踊っていました。これも、フラメンコでは、新しい試みですね。
静かにじっとしながら、両手を上に上げて顔も上を向いて、両手の人差し指と中指だけをまっすぐに伸ばしてくっつけたり離したりしながら上へ上へと指を進ませるところも、印象に残っているシーンです。簡単な動きなのに、詩的で、これもロシオ独特の世界だなと思いました。コンテンポラリーのようでした。
衣装も舞台美術も素晴らしかったです。ロシオは音と動きのバランス、間合いに、美的センスも兼ね備えているダンサーです。

最後に、インタビューの一部分を少し掲載します。

----なぜ、ダンサオーラと名乗っているのですか。

ロシオ:私のスタイルの一つで、フラメンコを愛するというベースも大切にしながら、それだけではなく、他のジャンルのダンスも踊りたいからです。

----日本の観客にメッセージをください。

ロシオ:私は、日本が大好きです。もうすぐ、日本公演をするのでとても楽しみです。今までの10年間の、私のすべての仕事の中からベストの作品を集めて、気前良く見せます。日本のために、特別なプログラムを作った公演です。私はまだ日本ではあまり知られていないと思うので、今回の公演で、さらに少しでも多くの人たちに、私のことを知っていただきたいと思います。
(2014年3月22日夜 バリシニコフ・アーツ・センター)

4月18日、19日に東京・渋谷、Bunkamuraオーチャードホールでロシオ・モリーナの公演があります。詳しくは http://www.rocio-molina-japan.com/

ny1404c03.jpg Photo  by Anna Lee Campbel ny1404c04.jpg Photo  by Anna Lee Campbel