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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.04.10]

アントニオ・カナーレス、カルロス・ロドリゲス他が踊り、大いに盛り上がった「ガラ・フラメンカ」

“Gala Flamenca” 「ガラ・フラメンカ」
Directed by Angel Rojas アンヘル・ロハス:芸術監督
Antonio Canales, Carlos Rodriguez, Karime Amaya Jesus Carmona
アントニオ・カナーレス、カルロス・ロドリゲス、カリメ・アマジャ、へスース・カルモナ:出演

2001年からほぼ毎年開催されている、フラメンコ・フェスティバルが、ニューヨークのさまざまな場所で、3月に行われました。このフェスティバルは、ニューヨークで最も重要なフェスティバルの一つと言われていまして、ニューヨーカーはとても楽しみにしています。スペインから、フラメンコのミュージシャンやダンサーたちがやってきます。スペイン政府もスポンサーになっていて、年々、規模が大きくなってきており、今年は3月6日から22日まで9ヵ所の劇場で開催され、多くのダンス公演やコンサートは、ソールドアウトだそうです。初期の頃はメインイベントのシティ・センターが中心したが、現在はそれ以外にもカーネギー・ホール、ジャズ・アト・リンカーン・センターなどいくつかの大きな劇場でも行われるようになりました。
毎年、アンダルシア自治政府もスポンサーでしたが、不景気の影響なのか今年は外れていました。そのせいでしょうか、今まではいつもアンダルシア出身で活躍しているダンサーが中心に招聘され続けていましたが、今年はアンダルシアではないマドリッド出身、バルセロナ出身マドリッド在住のダンサーもフューチャーされていました。
レベルが高い本物のフラメンコをニューヨークで観られる貴重な機会なので、私も毎年、楽しみにしています。今年は、ニューヨーク・シティ・センターで行われたメインイベントのフラメンコの3公演全てと、バリシニコフ・アーツ・センターで行われたロシオ・モリーナの公演を観ました。これら4公演はソールドアウトで盛況でした。

ny1404b07.jpg photo/Jose Luis Alvarez ny1404b08.jpg photo/KLAUSHANDER1 ny1404b09.jpg photo/Cesar Moreno Linde 1

フラメンコ・フェスティバルのメインイベントの「ガラ・フラメンカ」は、ニューヨーク・シティ・センターで3月6日、7日に上演されました。私が見たのは3月6日夜の公演です。
4名の主役ダンサー(バイラオール3名、バイラオーラ1名)と、2名のダンサー(バイラオーラ)が踊りました。休憩をはさんで、オープニング、8つの作品とフィナーレが上演され、伴奏は全て7名の歌手(カンタオール、カンタオーラ)、とミュージシャン(ギター、ヴァイオリン、カホン、パーカッション)による迫力満点のライヴ演奏でした。
オープニングでは全員が登場しました。次々に歌手が歌いながら出てきて、ダンサーたちも順に出てきて、短く激しく、明るく踊りながら通り過ぎて行きました。今回のバンドにはヴァイオリンが入っているところが、現代的で素晴らしいと思いました。伝統的なフラメンコ音楽だけではなく、伝統のベースは保ちながら今までにはない要素も入れて、新しいものをどんどん作っていこうということなのでしょう。

ny1404b02.jpg photo/Yi-Chun Wu

一つ目の作品は、カルロス・ロドリゲスの『ソレア・ポル・ブレリアス』( Siento シエント )です。カルロスは1975年生まれ、マドリッド出身。1995年からアンヘル・ロハスと共にヌエボ・バレ・エスパニョールを立ち上げ、運営しています。http://www.nbeflamenco.com/#/home
2人は、1994年にセルタメン・ナシオナル・デ・コレオグラフィーア・デ・ダンサ・エスパニョーラ・イ・フラメンコ(振付の国家コンペティション)の最優秀ダンサー賞を受賞しています。
とても激しく、超高速、しかも細かくて正確なサパテアードで、音も大きく、素晴らしかったです。静かなところと激しいところと、強弱のメリハリが多くて強いです。身体の軸がビクともせず安定していて、バレエのピルエット5回転、シェネ、ピケなども入れていました。フラメンコ経験だけのダンサーでは出来ないことを取り入れた振付でした。

二つ目の作品は、へスース・カルモナとルシーア・カンピーリョのペアによる、『トリルA7(パソ・ア・ドス)』です。へスースは1985年生まれ、バルセロナ出身です。2004年に、インスティトゥート・デ・テアトロ・イ・ダンサ・デ・ラ・シウダッド・コンダルにて、スペイン舞踊とフラメンコ舞踊の学位を取得。元スペイン国立バレエ団の第一舞踊手。独立後の2011年に、XX・セルタメン・デ・ダンサ・エスパニョーラ・イ・フラメンコ・デ・マドリッド(第20回マドリッド・スペイン舞踊&フラメンコ舞踊コンクール)で、最優秀舞踊家賞を受賞、2012年にはフラメンコで権威のあるコンクール、フェスティバル・インテルナシオナル・デ・カンテ・デ・ラス・ミナス・デ・ラ・ウニオン(第52回ウニオン国際カンテ・フェスティバル)で優勝。正統派バイラオールとして今、最も注目されている方です。私の友人でもあります。5月2〜8日にある、日本(東京・大阪・名古屋)のフラメンコ・フェスティバルに出演します。http://www.iberia-j.com/lpf/index.html
最初、照明も押さえ気味で、静かに始まりました。舞台下手にヘスース、上手にルシーアが立っていました。一人ずつ踊り、2人で交互にダンス・バトルが何度かありました。足の動きだけではなく、上半身や手など、全体の振付が上手です。さすが、へスースは伝統的フラメンコの基本がしっかり出来ていて、サパテアードも超高速で正確です。身体の軸がビクともせず、ピルエットなども入れていました。少しコンテンポラリーの要素も混ぜて、現代的なフラメンコでした。

ny1404b01.jpg photo/Yi-Chun Wu

三つ目と四つ目の作品は、この日のスターであるアントニオ・カナーレスです。誰でも知っているほど有名な方で、フラメンコでは世界的に大成功した大御所です。今回のプレイビルには、国際的なダンス・セレブリティーと書いてありました。受賞歴は世界で多数です。1961年、セビージャ近郊生まれです。1982年スペイン国立バレエ団に入団。1992年に独立し、自身の舞踊団を創立。1995年に、スペインのダンスで最も栄誉があるプレミオ・ナシオナル・デ・ダンサ(スペイン舞踊家賞)を受賞。
この日踊った作品は『モデルニダッド』と、『タンゴス・デ・ラ・チュンべーラ』です。
舞台に出てきただけで、以前の面影が無いくらいふっくらとしていて驚きましたが、激しく強い踊りが求められるフラメンコでは50代は、少しずつ現役ダンサーを退いていかれる時期なのかな、と思いを馳せました。調べると、現在も、以前ほどのペースではないですが、時々、現役ダンサーとしても活動を続けています。私がスペインに住んでいた頃(1996年〜2002年)は、カナーレスはまだ全盛期で身体も引き締まっていて、よくテレビの国営放送にも出演してバリバリ踊っていましたので、そのイメージが強く残っています。
とにかく、世界的スターなので、舞台上で動いて出てきてくれるだけでいいのでしょうね。すごい拍手喝采に包まれて場が盛り上がりました。
『モデルニダッド(Modernidad)』では、ストーリーテリングもしていました。2つの作品は続けて連なって上演されました。ミュージシャンもダンサーもみんな下手に出てきて、皆に囲まれてパルマ、ハレオを飛ばされる中、踊りました。現在でもサパテアードはとても正確で、安定していました。落ち着いた雰囲気でした。

ny1404b03.jpg photo/Yi-Chun Wu ny1404b04.jpg photo/Yi-Chun Wu

休憩をはさんで2幕の一つ目は『カラコレス』です。カリメ・アマジャ、ルシーア・カンピーリョ、カルメン・コイの3名が、バタデコーラを身に着けて踊りました。
カリメは、伝説的バイラオーラのカルメン・アマジャが大叔母で、母親はメルセデス・アマジャ、父親はギタリストのサンティアゴ・アギラルという伝統的なフラメンコ家系です。1985年、メキシコ生まれです。
二人はアバニコを持ち、カリメは手でバタデコーラをつかんで踊りました。カラコレスはかたつむりという意味ですが、なるほど、バタデコーラを蹴り上げながら回り続けて、身体に巻きついていくところは、かたつむりのように見えますね。華やかです。カリメはソロで、激しく踊る場面がありました。力強く、激しく、超高速で正確なサパテアードです。

次は、へスース・カルモナの『アレグリアス』です。最初は、舞台上手に置いてある椅子に座っていました。演奏が始まり、照明も強くなりました。へスースは明るくにこやかに立ち上がりました。激しく元気に踊り始めました。両手の人差し指で指差したり、オリジナリティのある振付でした。さすがとしか言いようがなく、身体の軸が安定して動かず、バレエの要素もたくさん入れていて、サパテアードも自在で正確です。
こんなに軸がビシッと動かないで安定しているフラメンコのバイラオールを、観た記憶が無いな、と思うくらいでした。シェネ、回転も多く入れていて、上半身を斜め後ろに傾けて開いた状態でアティトュードで回転しているところもありました。これは軸が動かないことと鋼のような背筋がなければ無理なので、普通のバイラオールは出来ないです。ピルエットはなんと、6回転! いくらフラメンコシューズでも、6回転は軸が安定していなければ難しいです。
超高速で正確なサパテアードでお見事でした。力強くて速くて、軽々とこなしています。難易度の高い振付を、軽々と余裕で次々にしていました。
最後は上着を脱いで、ミュージシャンたちに囲まれて真ん中で激しいダンスバトルのようなことをして、とても盛り上がりました。激しく速いうえ、メリハリがとてもよかったです。終わった瞬間、多くの歓声が上がり、劇場全体がどよめきました。

後半の3作目はカンタオーラのロシオ・バサンによるカンテ『セニョーラ』でした。赤いドレスで、ソロで歌いながら出てきました。とても歌声が大きくて、上手でした。ところどころ、バイレも入れていました。両方できる方なのですね。
さらにカリメ・アマジャによる『セギリージャ』です。超高速で激しいサパテアード、回転もけっこう入れていました。細かくてとても正確で、音が大きかったです。すごい迫力で、情熱的でした。
フィナーレは、一人ずつダンサーが出てきて、すごい拍手が続きました。その後、一人ずつ真ん中で、ダンスバトルです。カナーレスも踊りましたが、他はカンタンテ2名を、1名ずつ、踊らせていました。面白い終わり方でした。
(2014年3月6日夜 ニューヨーク・シティー・センター)

ny1404b05.jpg photo/Yi-Chun Wu ny1404b06.jpg photo/Yi-Chun Wu