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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.03.10]

プレジョカージュ、ウィールドン、マーティンスによるバラエティに富んだ3作品

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ
” La Stravaganza ” by Angelin Prelijocaj, “ A Place for Us ” by Christopher Wheeldon, “ Todo Buenos Aires ” by Peter Martins
『ラ・ストラヴァガンツァ』アンジュラン・プレルジョカージュ:振付、『ア・プレース・フォー・アス』クリストファー・ウィールドン:振付、『トド・ブエノス・アイレス』ピーター・マーティンス:振付

1月21日から3月2日まで、リンカーン・センターではニューヨーク・シティ・バレエの冬の公演期間でした。
2月25日夜に観劇したのは。プレジョカージュ、ウィールドン、マーティンスによる3つの小品集です。
一つ目は、”『La Stravaganza ラ・ストラヴァガンツァ』、1997年初演の作品です。振付はアンジュラン・プレルジョカージュ、音楽はアントニオ・ヴィヴァルディです。
プリンシパルは出演せず、ダンサーは全員で12名です。
プレルジョカージュによる前衛的な振付で、クラシック・バレエ・ベースのコンテンポラリーです。
音楽はクラシックの曲の合間に、現代的な電子音が組み込まれていました。ダンスの要素以外に、パントマイムのようなところや演劇のようなシーンもありました。
音楽に乗って音に合わせた動きをするところも多かったですし、その反対にリズムの無いランダムな動きも組み合わせてありました。音楽と合わせた振付とリズムの無い動きと、対照的な雰囲気のものを交互に入れてあり、そのバランスとセンスがちょうど良く見事でした。
例えば途中で急に音楽が無くなり、シーンと静かな中、男女2人のペアで演劇のような、身体の動きだけでストーリーや感情を表現していました。しばらくして音楽がまた始まると、その音楽に合わせて踊りが展開されていきました。
さすがにニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)のダンサーはバレエの実力が高いため、コンテンポラリーの振付を軽々と踊っていて、全体を通じてダンサーの踊りにとても余裕がありました。NYCBの彼らなら軽く簡単に出来るような振付が多く、難易度がさほどない動きが中心でしたので、その分、感情表現にもエネルギーを注げていてよく表現されていました。
舞台後方の壁全体が一面真っ黒になっていたり、その黒い壁が上がって壁全体の絵画が現れたり、背景の場面が時々変わりました。
照明はとても薄暗くほとんど当てられていない暗いところや、じょじょに少しずつ明るくなるところなど、繊細な光の変化で表現されていました。
途中で音楽が止まって、春の音のような、小川のせせらぎのような音が入っているところもありました。音楽の起伏も全体でメリハリをつけていて、バランスが絶妙にとれていました。

ny1403b_03.jpg Photo :(C)Paul Kolnik

二つ目は、『 A Place for Us   ア・プレース・フォー・アス』、2013年初演の作品です。振付はクリストファー・ウィールドン、音楽はアンドレ・プレヴィン作曲の”Interlude”from Clarinet and Piano Sonata、レナード・バーンスタイン作曲の”Sonata for Clarinet and Piano”です。
舞台上手端にグランドピアノが置かれていて、そこでピアニスト(スティーヴン・ハートマン)とクラリネット奏者(ナンシー・マックディル)がフューチャーされていて、生演奏していました。
舞台セットと衣装デザインは、ジョセフ・アルチュザラです。アルチュザラはフランス生まれのファッション・デザイナーで、ニューヨークを拠点としていて、2008年に自身のブランド「ジョセフ アルチュザラ(Joseph Altuzarra)」を設立しました。
出演したダンサーはプリンシパル2名だけで、タイラー・ペック、ロバート・フェアチャイルドです。
美しくて華のあるダンサーのぺックと、がっしりした体格で男性的なフェアチャイルドのパ・ド・ドゥは、絵になっていました。2人とも踊りの実力は高く、軸が安定していて上手です。ロマンチックな踊りでした。
音楽は、最初はとても静かでゆっくりした曲から始まり、踊りも静かでゆったりしていました。途中からだんだんテンポが速くなって、軽快な感じでした。踊りはだんだん軽く素速い動きになっていきました。音楽も踊りも、強弱があり、盛り上がるクライマックスと静かなところと、メリハリが強くあり、とても良かったです。

三つ目は、『Todo Buenos Aires  トド・ブエノス・アイレス』、2000年初演の作品です。振付はピーター・マーティンス、音楽はアストール・ピアソラです。曲名は”Pachouli”,”Escualo”, “La Mufa”, “Todo Buenos Aires”, “Michelangelo 70”です。
出演ダンサーは7名で、ホアキン・デ・ルースが主役です。プリンシパルは、ホアキン・デ・ルース、マリア・コウロスキー、ジャレド・アングル、アドリアン・ダンチヒ=ワリング、ロバート・フェアチャイルド、アマール・ラマサールです。
音楽はピアソラ作曲のアルゼンチン・タンゴで、5名のミュージシャンによる生演奏でした。ミュージシャンは舞台の後方、下手の端で演奏していました。ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット、ベース、バンドネオンです。この演奏も素晴らしかったです。生演奏のタンゴなので、録音と違って贅沢でした。
最初、舞台後方で演奏しているバンドのミュージシャンたちの辺りに男性のダンサーが何名か待機していた様子で、彼らが舞台前方へ出てきました。その中の主役男性ダンサーのホアキン・デ・ルースがソロで踊り始めました。デ・ルースはマドリッド出身のスペイン人で、小柄なダンサーです。最初はゆったりとしたテンポで始まりました。
そこに女性ダンサーが出てきて、パ・ド・ドゥを踊りました。女性が歩きながら片足を後ろへ蹴り上げるようにしたところなど、アルゼンチン・タンゴの振付を少し混ぜていました。女性ダンサーたちはトウシューズをはいていて、クラシック・バレエ・ベースの振付でした。メリハリがあり、情熱的な踊りでした。
リズムは、ゆっくりのところと速いところがあり、メリハリと強弱が強くつけられていて、踊りもゆったりして静かなところと激しく情熱的なところがあって盛り上がりました。
男女数名で踊るところ、ペアやソロで踊るところ、男性5名で踊るところなどが次々に重なって、ストーリーが展開していくようでした。
デ・ルースは軸が安定していて動きがはっきりとして、身軽でメリハリがあり、情熱的な様子を良く表現していました。最後の方で素早く踊っている最中に、パッセのまま飛び上がって、ジャンプして宙に浮いている間に2回転して着地していました。空中でピルエットを2回転したような感じです。ここで、大きな拍手がありました。
最後は女性2名男性5名の全員でポーズをきめて終わりました。
(2014年2月25日夜 リンカーン・センターDavid H. Koch Theater)