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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.11.11]

ウィールドンのアメリカ自然史博物館が舞台のユーモラスなストーリーのバレエ

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ
” Carnival of the Animals “ Choreography by Christpher Wheeldon
『カーニバル・オブ・ザ・アニマルズ』クリストファー・ウィールドン振付 他

9月17日から10月13日まで、リンカーンセンターでニューヨーク・シティ・バレエの公演がありました。
今回観たのは、9月29日午後の公演で、3つの小品集でした。この日で一番印象に残った、中心的な作品の『カーニバル・オブ・ザ・アニマルズ』についてレポートをします。

ny1311b01.jpg Carnival of the Animals.
Photo credit: Paul Kolnik

” Carnival of the Animals “『カーニバル・オブ・ザ・アニマルズ』は2003年初演。振付はクリストファー・ウィールドン、音楽はカミーユ・サン=サーンスです。
出演したプリンシパルは、アスク・ラ・コール、サラ・メアンズ、アマール・ラマサール、ジャレド・アングル。
もともとこの音楽は、14のシーンから構成されるユーモラスなミュージカル作品として、1882年にプライベートなパフォーマンスのために作曲されたもの。それをもとにして、ウィールドンは、50人近くのダンサーを使って、ある少年が主人公の物語のバレエを作りました。
オリバーという少年が、実際にニューヨークにあるアメリカ自然史博物館の中で眠り込んでしまい、彼は夢を観て、彼の生活にいる人々、例えば家族、先生、クラスメートたちが動物に姿を変えて、夢の中に登場する物語です。オリバー役は少年が演じていました。俳優のジョン・リスゴーが書いたナレーション付きで、物語が進行します。(オリジナルでは本人自身がナレーションを朗読していました。)今回の2013年版では、俳優のジャック・ノーズワージーがナレーションを朗読パフォーマンスしています。ナレーションの声を俳優が演じているので、話し方やタイミング、抑揚が、とても上手でした。

これは、ニューヨーク・シティ・バレエでは珍しく、とてもコミカルで楽しい作品です。ダンサーたちが様々な動物の被り物をし、次々とたくさん出てくるので面白く、それぞれの動きもその動物らしい振付でユーモアにあふれています。登場する動物の選び方にとても工夫が感じられました。ライオン、イタチ、ネズミ、ニワトリ、カメ、ゾウ、カンガルー、魚、熱帯の鳥、ジャッカス、ヒヒ、カッコウ、化石、白鳥、オデット姫です。大きくて強い動物たち、小さくてすばしっこい動物たち、じっとしていてほとんど動かずゆっくり移動する動物たちなど、バラエティーに富んでいました。また、熱帯の鳥や白鳥、オデット姫など華やかな動物を間にはさんで、特にそれと対照的に感じられるようなカメと化石を要所に入れていて、その登場するタイミングが素晴らしかったです。
少年は、その動物たちが出てくる間で、ずっと出演していて動いていました。
ニワトリやヒヒなど面白い動きをする動物たちが出てくると、観客は受けてクスクス笑っていました。ニワトリは、例えば、赤系チェックのチュチュの衣装を着た女性たちが両手を腰に当てて、両ヒジを前後に開けたり閉めたりしながら、同時に頭(アゴ)を前後に出したり引っ込めたりして動かして進んでいました。男性の雄鶏たちは黄色っぽいチェックの衣装で、黒い大きな羽の尻尾をつけていました。最後は、女性と同じくニワトリのように動きながら、クワックワッとダンサーたちが実際に鳴き声まで言いながら、去っていきました。このニワトリたちの踊りと動きが、一番印象に残っています。
他に、カメの踊りも印象深くて面白かったです。女性ダンサー2名が、舞台左右からイスに座ったまま出てきて、カメの甲羅のような模様と色の傘を開いて客席に向けて持っていました。傘も衣装もくすんだ地味な色で、1920年代のようなツバのない深い帽子をかぶっていました。とてもゆっくりの曲で、動きもものすごくスローです。傘を置いて、イスから立ち上がって、ゆっくりゆっくり踊りました。また傘をさして、イスに座ったままひきずって舞台袖に帰っていきました。
水族館のシーンはとても美しかったです。大勢の女性たちの真ん中に、一人、人魚の女性が出てきて、とてもきれいでした。胸にヒトデがついて下半身が魚のような長いドレスの衣装で、片手首にしっぽの端を結びつけていました。かなり長い踊りで、見所です。最後、人魚が下手から上手へすごい速さでパ・ド・ブレし続けて去っていったところは、特に美しかったです。
化石もとても面白い表現と踊りで、印象に残っています。6名の女性がくすんだような色にガリガリにやせて骨と皮だけになったような絵柄が描いてある衣装を着て出てきました。カクカクしてぎこちない動きを続け、へんてこなおかしい踊りで面白かったです。なめらかな動きが一つもないのです。間抜けな感じもし、なるほど、化石らしいイメージにピッタリの振付だったので、化石を踊りで表現したらこうなるのだな、と感心しました。とてもクリエイティブな振付と衣装です。
最後のオデット姫の登場も、本来のクラシック・バレエらしい雰囲気で舞台がひきしめられ、ピッタリのタイミングでした。
最後は全員出演のフィナーレで、センターで全員がポーズをとって、幕が閉じました。
この作品は、ウィールドンの振付の才能のセンスの良さが、特に分かりました。バラエティーに富んだ様々な動物たち、しかもカメや化石まで踊りで表現し、それぞれの動物独特の個性とキャラクターを際立たせた振付が素晴らしかったです。

ny1311b02.jpg Jeu de Cartes. Photo credit: Paul Kolnik

次は、” Jeu de Cartes ”『かるた遊び』、1992年初演の作品です。振付はピーター・マーティンス、音楽はストラヴィンスキーです。
出演したプリンシパルは、スターリング・ヒルティン、ロバート・フェアチャイルド、アンドリュー・ヴィエット。
もともとストラヴィンスキー・フェスティバルのために、バランシンが、メトロポリタン・オペラに1937年に振付けた作品で、オリジナルはトランプたちと、中心的なジョーカーのダンサーによる踊りでした。数年後にバランシンがマーティンスに、同じ音楽でこのオペラの中に登場する踊りをもとにして、さらにバレエ作品として抽象的な振付を作ってみることをすすめ、1992年にマーティンスがこの作品を再現しました。
衣装のデザインもカラフルなトランプ柄で、かつ、クラシック・バレエらしくて、美しかったです。
踊りもクラシック・バレエらしい振付でした。コール・ド・バレエがたくさんでてきて、12人以上で踊るところもあり、迫力があってとても美しかったです。ずっと出ずっぱりで主役として踊ったプリンシパルたちは、完璧なテクニックで表現していて見ごたえがありました。

ny1311b03.jpg The Four Seasons.
Photo credit: Paul Kolnik

三作目は、“ The Four Seasons ”『四季』1979年初演の作品です。振付はジェローム・ロビンス、音楽はヴェルディです。
出演したプリンシパルは、サラ・メアンズ、ジャレド・アングル、テレサ・ライヒェルン、アマール・ラマサールでした。
ロビンスの1979年のノートによると、もともと、この音楽は19世紀にヴェルディがオペラとして作りましたが、その時に、第3幕の中でバレエを入れるように依頼されていました。当時のパトロンたちが、お気に入りの美しいバレリーナの姿を観たいため、単なるオペラ中の合間としてではなく、本格的なバレエを作品中に入れてほしいという依頼だったのです。ヴェルディのノートによると、バレリーナたちは、冬のシーンではお互いに踊って温めあい、春では温かくなる様子を演じ、夏の女性が秋の牧神に驚く、などのメモを残しているそうです。それをもとにして、ロビンスがこのバレエを振付しました。このように、オペラの中に登場するバレエのシーンから始まったという歴史についても詳しく掲載されていたので、興味深いです。
冬春夏秋という順番で、四季が踊りと色彩で表現されていて、バレエらしい見所も多くて、素晴らしい作品でした。
(2013年9月29日 David H. Koch Theater)