ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.10.10]

人気のファッション・デザイナー3人とともに創った3作の最新作を上演、FALL GALA

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ
FALL GALA( Justin Peck’s Capricious Maneuvers, Benjamin Millepied’s
Neverwhere, Angelin Preljocaj’s Spectral Evidence)「フォール・ガラ」
Ballet Master in Chief : Peter Martins 芸術監督:ピーター・マーティンス

9月19日夜に、ニューヨーク・シティ・バレエの秋のガラ公演を観に行きました。この日は劇場の2階ロビーがカクテルパーティとビュッフェの会場となり、寄付金を出しているパトロンたち、ニューヨークのセレブたちが大勢集まりました。公演後は、パトロンの方々とNYCBの演出家、振付家、ダンサーたちや関係者が、パーティで直接会話できる機会です。女性は背中が大きく開いたカクテルドレス、男性はタキシードやスーツ着用でみなさんゴージャスで、大きな本物のジュエリーを着けている方々も多いです。劇場の外には、赤じゅうたんが中まで敷かれていて、そこを通って中へ入っていくセレブが報道陣に写真を撮られていました。
演目は、新作3つとフィナーレです。休憩なしで連続で上演されました。

ny1310c_01.jpg Photo : Paul Kolnik

今回の新作は3つとも、今注目されている世界的なファッション・デザイナーがデザインした、特別にこだわった衣装。それらのデザイナーとNYCBの衣装監督のマーク・ハッペルが、衣装をデザインして実際にダンサーに着せながら作っていく共同作業の様子とインタビューが、短い映像にまとめられていて、それぞれの作品を上演する直前に、舞台上の大きなスクリーンに放映されました。
オープニングでは、オーケストラがファンファーレを演奏しながらオーケストラピットがゆっくりと上まで上がってきて、また下がりました。ジョン・アダムス作曲の『ショート・ライド・イン・ア・ファースト・マシーン』という曲です。
最初のバレエの演目は『カプリシャス・マニューバーズ』、今回が初演です。
音楽はルーカス・フォス、振付はジャスティン・ペックで、彼はNYCBのソリストでもあります。
衣装デザインはプラバル・グルン( Prabal Gurung )。プラバル・グルンはシンガポール生まれでネパール育ち、インドでデザインを学んでから、ロンドン、シドニーに渡り、1999年にニューヨークに移住して様々なブランドで経験を積みました。2009年に自身のブランドを立ち上げ、コレクションデビューしました。オバマ大統領夫人が着用するなど、今、最も注目されているファッション・デザイナーの一人です。
今回の衣装は、赤白黒の3色の色違いで、薄くて軽いチュールレースを使って、ところどころ細い色違いのテープを交差させてつけている、軽やかで現代的なデザインです。
舞台上の下手にピアノ1台とチェロが置かれて演奏していました。出演ダンサーは男女5名、プリンシパルはアンドリュー・ヴィエットです。振付は現代的で、リモン・テクニックも入っていますが、クラシック・バレエをベースにしていました。
エンディングが印象的で、ダンサーたちが消えた後一人の男性だけが残り、舞台の中央に横たわり幕が閉じました。

ny1310c_02.jpg Photo : Paul Kolnik

2つ目の演目は『ネバーウェア』。音楽はニコ・マーリー、振付はバンジャマン・ミルピエ(英語読みではベンジャミン・ミルピード)です。ミルピエはフランスのボルドー生まれで、1995年にNYCBにダンサーとして参加、2001年からプリンシパルとなり、振付家としても活躍しています。2010年に映画『ブラック・スワン』の振付も手掛けました。振付に専念するために2011年にNYCBのプリンシパルを引退した彼は、2014年9月からパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任します。
衣装デザインはイリス・ヴァン・ヘルぺン( Iris Van Herpen )。オランダのワーメル生まれで、革新的な素材とテクニックを使った、前衛的で未来的なデザインが特徴です。3Dプリンターを使ってドレスを制作することもあります。2007年にデビュー。歌手のビョークのアルバムのカバーを飾ったドレスを制作するなど、様々なアーティストやクリエイターたちから注目されています。
今回の衣装は、未来的なイメージでとてもよかったです。薄くて丈夫そうな黒いフィルム状の素材をダンサー一人一人の身体にあわせて、1枚ずつウロコのようにカットして蛇腹のように重ねて表面にびっしりと着けていました。ダンサーが身体を動かす度にその表面の黒いフィルム素材が張り付いたまま動きます。客席から観ると、テカテカ光る黒い素材のウロコがダンサーの身体の大部分を被っているような感じでした。動く度に、キラキラと光ります。
出演ダンサーは6名で、プリンシパルはスターリング・ヒルティン、テイラー・アングル。振付は、バレエベースで、コンテンポラリーの要素も多く取り入れられた、自由で現代的なものでした。男女のパ・ド・ドゥはロマンティックでした。速いテンポで次々に全く別の動きが展開し続けます。最初は静かに始まり、舞台後方に、山を連想させるような大きな三角形がライトで浮き上がっていました。
印象に残っているところは、男性3名が女性1名をリフトで持ち上げたまま連れて行き、舞台そでに去りライトが消えたシーンです。
最後は、男女6名全員が一人一人、身体全体をX字のように、両手両足を大きく伸ばして広げ、お互いに手をつないでルルベしたまま高い位置で静止して終わり、そのまま幕が閉じました。

ny1310c_03.jpg Photo : Paul Kolnik ny1310c_04.jpg Photo : Paul Kolnik

次の演目は『スペクトラル・エビデンス』。音楽はジョン・ケージ、振付はアンジュラン・プレルジョカージュです。
衣装デザインはオリヴィエ・ティスケンス( Olivier Theyskens )です。ベルギーのブリュッセル生まれで、独学でファッションの制作活動を始めました。1998-99のシーズンにパリコレに参加、1998年の第70回アカデミー賞授賞式にマドンナが彼の服を着たことで一躍有名になりました。アンダーグラウンド感あふれる奇抜で挑発的なデザインが持ち味でしたが、自身のブランドの活動休止後はデザインが大きく変化して、エレガントで美しいものになっていきました。ロシャス、ニナ・リッチのデザイナーを経て、2010年からセオリー( Theory ) のアーティスティック・ディレクターに就任しました。

ny1310c_05.jpg Photo : Paul Kolnik

今回の衣装は、全体は薄くて軽いチュールレースのドレスですが、ダンサーの身体の表面の一部分に沿って、赤系のゴムのような重い素材がペッタリと貼り付いている様な変わったものです。独特で、オリジナリティーにあふれ、斬新なデザインです。それぞれのダンサーの身体に合わせて、ダンサー本人に着せたままゴム状のものを止めたりして制作していました。これは時間と手間がかかったことでしょう。
その赤系のゴムのような素材は、客席から見るとまるでダンサーの身体の表面にタイツのように貼り付いているのですが、制作過程の映像によると、実際はダンサーの身体とこの素材は貼り付いていなくてただ重なっているだけです。普通のドレスのように素材と布全体が身体に重なっているだけなので、ダンサーは身体を自由に軽々と動かすことができます。現代的なイメージで、少しおどろおどろしい衣装でした。
出演ダンサーは8名で、プリンシパルはタイラー・ペック、ロバート・フェアチャイルド、メーガン・フェアチャイルド、アドリアン・ダンチヒ=ワリング、チェース・フィンレイ、アマール・ラマサールです。
最初は音楽なしでダンスが始まりましたが、エレクトリック音楽を使ったコンテンポラリーの振付です。音楽にピッタリ合わせた動きが続いているので、安心して観ることができました。不思議なイメージの振付でした。パントマイムのような動きもありました。全体的に強弱、メリハリがあるダンスでした。だんだん動きが激しくなり、右に回転したり、続けて左に回転したり、回転の方向が交互に次々に変わり続けるので、ダンサーたちは身体の軸をしっかり保たなければならず、さすがNYCBのダンサーだから軽々と出来るのだと思いました。簡単ではない踊りです。
ダンサーたちの身体の一部分にドレスの表面が貼り付いたように見えて、他の部分は動く度にフワフワと広がって動いていました。
途中、女性ダンサーたちがいっせいに、舞台上に客席を向けて立てられた白い棺のような長細い大きな箱の中に入ってぶら下がり、そこにオレンジ色にメラメラと炎が燃えているような効果の照明が当たっていたところは、不気味な感じでした。女性達が燃えて、うめいて苦しんでいる様子で、パチパチと炎が燃えるような効果音も入っていました。ここで客席から何名かが席を立って出て行きまいた。
NYCBでは珍しいような、前衛的な作品でした。

ny1310c_06.jpg Photo : Paul Kolnik

フィナーレは[『ウエスタン・シンフォニー』の中のロンド。音楽はハーシー・ケイ、振付はジョージ・バランシン、衣装デザインはカリンスカです。出演ダンサーは30名以上で、プリンシパルはマリア・コウロスキー。
ダンサーたちが次々に、大技を披露して決めていきました。楽しいダンスです。15回転や、大ジャンプなどが続き、客席を楽しませました。最後は全員で同時にピルエットをし続けているところに、幕が閉じ、舞台は盛り上がり、明るい雰囲気で終わりました。
(2013年9月19日夜 リンカーンセンターDavid H. Koch Theater)


9月にはニューヨーク、ブルックリンのダンボで、毎年恒例のダンボ・アート・フェスティバルとダンボ・ダンス・フェスティバルが同時に開催されました。主にニューヨークの地元のアート、音楽、ダンスの公演があります。過去にレポートしたことがあります。毎年、日本人ダンサーや振付家が何名も参加しています。こちらは今回はレポートしませんが、回を重ねてダンス・フェスティバルとして育っていて、重要な情報なので、ウェブサイトを掲載します。
http://dumboartsfestival.com/
http://dumbonyc.com/blog/2013/09/19/2103-dumbo-dance-festival-gala-opening/