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針山 真実 text by MAMI HARIYAMA 
[2013.08.12]

ポリーナのシルヴィア、ボッレのアミンタが見事だったABT『シルヴィア』

AMERICAN BALLET THEATRE(ABT) アメリカン・バレエ・シアター
"Sylvia" by Frederick Ashton Staged by Christopher Newton
『シルヴィア』フレデリック・アシュトン振付、クリストファー・ミュートン演出

アメリカン・バレエ・シアターの『シルヴィア』を観た。
これは1952年にフレデリック・アシュトンが英国ロイヤル・バレエ団に振付けたアシュトン版『シルヴィア』。しかしこの『シルヴィア』は、1965年以降まったく上演されなくなり、2004年に再び英国ロイヤル・バレエ団とアメリカン・バレエ・シアターによって復活し、再上演されるようになった。音楽は『コッペリア』を作曲したことで有名なレオ・ドリーブで、交響曲らしい音楽が印象に残った。

ny1308b_01.jpg Photo by MIRA

身分の低い羊飼いアミンタ役をロベルト・ボッレ。そのアミンタが恋をする狩の女神シルヴィアをポリーナ・セミオノワ。そのシルヴィアに同じく恋心を抱く狩人のオリオン役をジャレド・マシューズが演じた。
『シルヴィア』のストーリーは舞台を見るだけでは理解しにくいところもあるので、これから観る人はあらすじを予習することをお勧めする。
1幕で8人のシルヴィアの狩のお付きが舞台上を四方八方に大きくグランジュッテ(足を大きく空中で開いて跳ぶ)で登場し、力強く音楽に合わせて踊るシーンは勇ましくかっこいい。そこへシルヴィアが堂々と弓を持って登場。シルヴィアが足を高くあげ、回転を見せ、大きなジャンプも四方八方に向きを変えて繰り返し跳ぶ、このシーンには見ごたえが十分あった。
特にポリーナはダンサーにしか分からないであろう難しい技を、ごく簡単のように見せるので感心。また白く短いスカートの女神の衣装がこれほど似合う女性はいるのかと思うほどポリーナによく似合っていて、長い手足と小さな顔が際立っていた。
アミンタ役のロベルト・ボッレは羊飼いなのに気品があり、美しいオーラを感じさせた。ポリーナと組んで踊ると二人はまるで美しい神話の世界の中の住人ように見えた。
今シーズンのロベルトは踊りが軽く生き生きとしていて好調だ。踊りの正確さはもちろん、パートナリングも息を潜めているかのように女性を引き立てる技術は素晴らしい。それにとても感心したのは一部の人にしか見えない幕の中でもしっかりと演技をしていたこと。普通ダンサーは幕に入ったら素に戻る人が多いのに、ロベルトは幕に入って一部の端の観客にしか見えない場所でも役になりきって充分な演技を続けていた。

2幕のシルヴィアの衣装はお腹の部分が大きく開いたブルーでセクシーな衣装。
トルコ風な衣装を着たオリオンの召使たちのコミカルな踊りが漫画のようで面白く、ステップが特に印象的だった。客席から笑いと拍手が沸きました。
3幕の神殿のシーンになるとゴールドと黄色のセットの色合いが明るく豪華でギリシャ神話の中の世界を想像させる。
ヤギの踊りの音楽と振りが可愛いくて、サラ・レーンがとてもチャーミングに踊った。

シルヴィアとアミンタのグランパ・ド・ドゥは、リフト多いの技が入っていた。とくにシルヴィアがアミンタの片手の上に座った状態で高々と持ち上げられて登場し、そのままの状態で舞台をゆっくり横切るシーンや、アミンタに向かって助走をつけて横向きのジャンプで腕の中に飛び込むシーンは、双方の信頼関係とタイミングがぴったりと合わないとできない技だと思うが、二人は相性がじつに良くとてもお互いを美しく見せた。
そしてアシュトン版の『シルヴィア』のヴァリエーションは、コンクールで一般的に踊られているものではなく、細かい足の動きや動きの速いジャンプなど小技がたくさん入った振付。これを上手く美しく見せるのはなかなか難しいと思われるが、やはりポリーナは機敏にかつエレガントに踊った。
(2013年6月25日 メトロポリタン・オペラハウス)

ny1308b_02.jpg Photo by Gene Schiavone ny1308b_04.jpg Photo by Rosalie O'Connor
ny1308b_03.jpg Photo by Gene Schiavone