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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.04.10]

スペインのアンダルシアからやって来た、熱いフラメンコ・フェスティバル

Flamenco Festival  Ballet Flamenco de Andalucia
フラメンコ・フェスティバル バレ・フラメンコ・デ・アンダルシア
“Suite flamenca” “Metafora” Artistic Direction and Choreography: Ruben Olmo
「スイート・フラメンカ」『メタフォラ』(隠喩) 芸術監督&振付:ルーベン・オルモ

3月6日から9日まで、スペインのバレ・フラメンコ・デ・アンダルシアの公演が、ニューヨーク・シティ・センターで行われました。毎年恒例の(第12回)フラメンコ・フェスティバルのメイン・イベントです。このカンパニーは旧コンパニーア・デ・アンダルサ・デ・ダンサで、1994年に創設されました。現在の芸術監督はルーベン・オルモです。

ny1204a_52.jpg (c)2012 Miguel Angel Gonzalez

第一部は小品集、第二部は『メタフォラ』という作品。
第一部は伝統的なフラメンコで、生演奏の音楽(歌、ギター、パーカッション)にのって、踊り(バイレ)が繰り広げられ、5つの作品が連続で披露されました。
舞台背景は黒一色、後方に真っ赤なカーテンが斜めにかけられ、スペインらしい赤と黒の色彩でした。ミュージシャンは4名。カンテ(歌)2名(カンタオール=男性/カンタオーラ=女性)、トケ(ギター)1名、カホン(パーカッション)1名です。

フラメンコのバイレは基本に忠実で、オーソドックスな伝統的なものを大切にした演出でした。5〜6名の男女ダンサーたちが踊ることが多かったです。
男性ダンサーのソロでは、クラシック・バレエのアティチュードのまま回転するところや、バレエのシェネをするところも何箇所かありましたが、体の中心の軸がしっかりしていました。このカンパニーのダンサーたちは、フラメンコだけではなくバレエの基礎訓練も受け、クラシック・バレエ・ベースのフラメンコなのだと思います。

この第一部で一番印象に残ったのは、4つ目の “デ・ロス・レィエス” を踊ったパストーラ・ガルバンです。ゲスト・アーティストの彼女自身による振付で、ソロで踊りました。
パストーラは本当に上手で驚きました。フラメンコはかなりたくさん見ているつもりですが、こんなダンサーは滅多にいないと思いました。
フラメンコ独特の激しく踊る部分ではその差が分かりにくいかと思いますが、彼女は静止しているところ、静かに動くところが目を見張るほど巧みでした。動く、止まる、というタイミング、間合いがビシッと決まっていて、すべての動作がカッコよかったのです。指先、手の平、腕、脇、肩、首、頭・・・身体全体の動作のすべて、彼女の一挙手一挙動のすべてが連続してよく決まっていました。どの動作をとってもひとつひとつが美しく、体の軸もしっかりしていて中心がブレませんでしたし、静止している姿も絵になっていました。彼女の踊りを観てしまうと、他の踊りがゆるく感じてしまうほどでした。
一体どのような練習をしたら、こんなに連続してポーズをすべて決めることができるのだろうか、と興味が湧きました。どんなポーズが美しいのか本能でよく分かっている、完璧な美的センスが備わったダンサーなのでしょう。激しく踊るエネルギーだけがフラメンコではなく、静止の美しさもフラメンコの重要な要素なのですね。
第一部の最後はフィナーレで出演ダンサー全員(10名以上)が登場して、踊りました。
生演奏の音楽もとても良かったです。伝統的なフラメンコの良さの、音楽と踊りが一体となってすごい迫力で盛り上がり、感動しました。フラメンコは素晴らしい芸術だと思いました。

ny1204a_12.jpg パストーラ・ガルバン (c)2012 Miguel Angel Gonzalez ny1204a_17.jpg パストーラ・ガルバン (c)2012 Miguel Angel Gonzalez

休憩をはさんで、第二部は『メタフォラ』です。これは劇場公演用に創られたストーリー性のある作品で、4つのパートに分かれていました。振付はルーベン・オルモです。ニーチェとロルカの影響を受けて作られたそうです。
第二部はいっそうクラシック・バレエの要素が多く盛り込まれていて、現代のフラメンコという印象でした。第一部で披露されたような伝統的なフラメンコとはまた違っていました。
例えば、最初は芸術監督自身のルーベン・オルモのソロでしたが、バレエの5番ポジションで静止しているところから始まりました。これは『ラ・ダンサ・コモ・メタフォラ・デル・ベンサミエント』という作品。靴はフラメンコ・シューズで、時々サパテアードも入れてかなり長く踊りました。全体的にルルベしながら踊っていて、ほとんどバレエに近い印象でした。クラシック・バレエとフラメンコを半々くらいで混ぜたような感じです。
次に大勢、男女10名以上がでてきて、2列に縦に並びました。最初に男性が中央でゆっくり踊り去っていき、残った全員が踊りました。
男女の歌手2名、カンタオールとカンタオーラが出てきて、交互に歌いました。バックでカホンの音だけが響き、歌は声が大きくて迫力がありました。スペインらしい乾いた音が響いてよかったです。カンタオーラのフアナ・サラサル “ラ・トバラ” は、カンテだけでなくバイレもできる方で、見事に踊っていました。
次に男女11名が登場し、みんな同じ振付で踊り、全員が両手にパリージョ(フラメンコ・カスタネット)を持ち、鳴らしていました。セビジャーナス風の踊りでした。
次はバイラオーラのソロでした。彼女はゲストダンサーのロシオ・モリーナです。振付も彼女自身によるものです。彼女のこの作品は、フラメンコというより現代的なコンテンポラリー・ダンスの要素が強かったです。とても興味深い振付で、今まで見たことがないような独特なものでした。ロシオはフラメンコも他のジャンルのダンス(コンテンポラリーやバレエ)も出来るダンサーなのですね。彼女の中から湧き出てきた自然で独自の踊りをするアーティスティックなダンサーです。フラメンコの新時代を観た気がします。
フラメンコとコンテンポラリーが混ざっていて、両手の動きはフラメンコでもないしバレエでもないものでした。時々、両手を人差し指だけ伸ばしたままで、そのまま振り回して踊りました。首がかゆくて掻いているような、ギョッとさせられるような変わった動きもたくさん採り入れていました。現代アートのような前衛的な要素もあって、興味深かったです。フラメンコの枠から飛び出ようとして、実験的な振付をしているのでしょう。

ny1204a_14.jpg (c)2012 Miguel Angel Gonzalez ny1204a_16.jpg (c)2012 Miguel Angel Gonzalez ny1204a_30.jpg (c)2012 Miguel Angel Gonzalez

ほんの少しだけ、時々サパテアードを入れていましたが、全体を通してほとんど両手の動きだけで表現していました。シェネで回転し続けて後ろに下がりながら、両手で表現し続けていたところが印象に残っています。
誰にも似ていない独自の持ち味を生かして、見たことのないフラメンコ風のコンテンポラリー・ダンスを堂々と披露するところは、人真似をしないスペイン人らしいなと思いました。堂々とした風格がある素晴らしいダンサーで、揺るぎない自信に満ち溢れていて力強いので、見ているこちらは安心できて、勇気と力をいただけたような感じでした。迫力がすごかったです。
最後はフィナーレで全員が出てきて、順番にダンスバトルを繰り広げました。タブラオで盛り上がるような、フラメンコらしいバトルです。激しい動きを順番に踊っていきました。周りを囲んでいるダンサーたちも、ハレオとパルマをし続けて盛り上げていました。
喝采の後、アンコールとなり、再びダンスバトルをしばらく順番に繰り返しました。みんな歌いながら、真ん中で集まってゆれながら、幕が閉じました。
フラメンコは音楽と踊りと両方とも、素晴らしい芸術だなとつくづく思いました。また来年のフェスティバルも楽しみにしています。
(2013年3月7日 ニューヨーク・シティ・センター)

ny1204a_18.jpg 「メタフォラ」(c)2012 Miguel Angel Gonzalez
ny1204a_28.jpg 「メタフォラ」(c)2012 Miguel Angel Gonzalez
ny1204a_02.jpg 「スイート・フラメンカ」(c)2012 Miguel Angel Gonzalez
ny1204a_10.jpg 「スイート・フラメンカ」(c)2012 Miguel Angel Gonzalez