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ソールドアウト!  美術館で行われたフラメンコとタップダンスのスターの競演

“Dance under The Influence” ダンス・アンダー・ザ・インフルエンス
Juan de Juan, Jason Samuels Smith, Prashant Shah, Nelida Tirado and Night of Rhythm with guest musicians
フアン・デ・フアン、ジェイソン・サムエル・スミス、プラシャント・シャー、 ネリダ・ティラード アンド・ナイト・オブ・リズム・ウィズ・ゲスト・ミュージシャンズ

フラメンコ・フェスティバル2012が、2月下旬から3月初めにかけて開催され、メイン公演は3月1日から4日までシティ・センターで上演されました。それ以外にも他の中小の様々な劇場で、このフラメンコ・フェスティバルの一環としてフラメンコ公演が行われました。そのうちの一つ、マンハッタンにある美術館のMAD( museum of arts and design )で行われた公演についてレポートします。
MADでは、ダンス・アンダー・ザ・インフルエンスと題したダンス公演のシリーズを、3月2日から6月2日まで地下にあるシアターで行っています。昨年始まったこのシリーズは、全席ソールドアウトでした。今年もソールドアウトになりました。私は3月3日に3組のダンサーたちの作品を観ました。

ny1206c01.jpg Photo: (C)Terry "e.t.a" Hudson

最初は、北インド宮廷舞踊のカタックダンスの世界的ダンサー、プラシャント・シャーです。作品は、“Aakar”というソロで振付もシャーによるものです。
カタックダンスは、インド四大古典舞踊の一つで、その起源は紀元前5世紀ごろまで遡ります。10世紀以降に宮廷でより洗練されていった、歴史が長いものです。両足首に100個以上の鈴(グングルと呼ばれる真鍮の鈴)をつけて、裸足で床を打ち付けて、鈴と床の音を鳴らしてリズムを刻んで踊ります。シャーは、カタックダンサーの家系に生まれて子供の頃からそのダンサーになることを運命付けられていた、インド本場の世界的ダンサーです。衣装は上質なインドの民族衣装風のものを着ていました。
シャーが踊るカタックダンスは、顔の表情が豊かでクルクルと変わり、にこやかに笑ったり、顔をしかめたりしていました。手も良く動かして表現していて、両手の指先を細かく使っていました。足首に巻きつけた鈴と裸足で打ち付ける床のリズムは、とても正確で、終始リズムを絶え間なく刻みながら踊りました。霊験あらたかな雰囲気で、神様に奉納する踊りなのだろうかと感じました。
最初、録音された音楽にあわせて踊りました。2曲目は男性のパーカッショニストが登場して、太鼓を生演奏でたたきました。激しい踊りの様子で、シャーは全身汗だくになっていました。迫力のある踊りでした。

次は、NY在住のフラメンコ・ダンサーのネリダ・ティラードです。作品は、“37 anos”で、振付けもティラードによるものです。ティラードは、スペインに住んで現地でフラメンコ・ダンサーとして活躍し、世界ツアーにも巡業した後、アメリカへ至りました。
踊りはソロで、ギターと歌の生演奏で、フラメンコ・フェスティバルのためにスペインから来ていた方々のコラボレーションです。ギタリストはロベルト・カステリョン、歌手はホセ・コルテス・フェルナンデス。とても小柄女性なのですが、パワフルな踊りです。エネルギッシュで、顔の表情はずっとしかめていることが多かったです。

三曲目はメインの作品です。フラメンコ・フェスティバルのためにスペインから来て滞在していたフラメンコ・ダンサーのフアン・デ・フアンと、世界的なタップ・ダンサーのジェイソン・サムエル・スミスによる、夢のコラボ公演、フラメンコとタップのステップの融合です。
彼ら2人は、フアン・デ・フアンが去年の春夏ごろにニューヨークに1カ月旅行に来ていたときに知り合い、何かコラボでできるかどうか、2人でスタジオでリハーサルを重ねてみたことがきっかけで、約1年後に今回の公演が実現したそうです。フアンは「タップダンスとフラメンコのステップの踏み方は、(体重のかけ方が)全く逆だ。フラメンコは上から下に足を強く踏みつけるけれど、タップは踏みつけずに滑らせる感じだ」と語っていました。
実は去年のその時期に、私が受けているタップダンスのレッスンにフアン・デ・フアンがふらりと飛び入りで参加したので、それが縁で私も知り合いました。フアンはとても明るく男らしい方で、オープンで社交的な性格です。見かけと違って冗談ばかり言って、周りの人を笑わせ続けてくれる面白い人です。スペインのセビージャの田舎からニューヨークへ単身乗り込んで、すぐに現地の友たちをたくさん作って溶け込んでいるのは素晴らしいことです。その面白くて社交的な性格のお陰で、海外のどこでも打ち解けられるのでしょうね。

舞台上に登場したときにはすでに2人は全身汗だくになっていました。待ち時間に、ウォームアップを念入りにしていた様子です。2人とも正装のようなきちんとした衣装でした。生演奏のミュージシャンは、ピアニストはセオ・ヒル、ギタリストはリカルド・モレノです。
最初にフアンが登場し、しばらくしてジェイソンも登場しました。2人でほぼ同じ振付で踊り始めました。フラメンコ・シューズとタップ・シューズで。
フラメンコ調のタップダンスのような、まさに2つのダンスを融合した踊りを披露しました。この企画は新鮮で珍しいものだと思います。フラメンコとタップを混合した踊りは初めて観ました。そして足だけで2人で速打ちをしたり、ダンス・バトルもありました。
2人とも、足で鳴らす音がとても大きくて、大迫力でした。フアンは足のコントロールが他のフラメンコダンサーたちよりもさらに繊細で、大きな音から小さな音まで強弱を大きくつけている、個性的な踊りをしていました。フアンもジェイソンと揃ってタップダンスのステップをしているところがあり、客席のニューヨーカーに受けていました。

「足で床を鳴らして音をだすステップのダンス」という共通点がある3種類のダンスを、すべて本場のダンサーが一晩で通して踊った公演だったので、それぞれのダンスの違いや特徴をよく観察することができた貴重な機会でした。
この公演は、公的な美術館の企画で自前の地下シアターで上演するため、チケットが20ドルで破格。すぐソールドアウトになります。今後毎年企画するそうなので、来年以降、ニューヨークに行かれる方々はぜひ行ってみてください。
(2012年3月3日夜 MAD)

ny1206c02.jpg Photo: (C)Terry "e.t.a" Hudson ny1206c03.jpg Photo: (C)Terry "e.t.a" Hudson