ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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皆様、お元気ですか。 ニューヨークは肌寒いですが、例年よりも暖かく、過ごしやすいです。
12月、1月もニューヨーク・シティ・バレエの公演シーズンなので、ジョイスシアター公演とともにレポートします。

奇才ペンドルトンのシュールなイメージが舞台に展開した

Momix モミックス
Moses Pendleton “BOTANICA” モーゼス・ペンドルトン『ボタニカ』

奇才モーゼス・ペンデルトンが率いるモミックスの、『ボタニカ』の公演が、12月13日から31日まで、ジョイスシアターにて行われました。モミックスはニューヨークでも大人気なので、異例の3週間公演です。私はモミックスの大ファンで、公演を見る度にいつも感動します。ペンデルトンは天才だと思います。彼の舞台芸術作品は、照明も衣装も凝っていて、とても美的センスにあふれていてアーティスティックです。ダンサーたちと舞台全体が動くシュールレアリズム絵画のようなのです。独創的で、唯一無二の彼独特の世界です。

ny1202a01.jpg Photo/Don Perdue

ペンデルトン、ピロボラス・ダンス・シアターとモミックスについては、以前、こちらのコラムで何度かレポートしたことがあります。
ペンデルトンはアメリカのバーモント州の農家で生まれ、自然が豊かでゆったりとした環境で育ちました。1971年に、ダートマウス・カレッジで英文学BAを受け、同年ピロボラス・ダンス・シアターを設立しました。1980年、アメリカのレイク・プラシッドで開催された冬季オリンピックの閉幕式の振付を担当。『モミックス』という自作自演のソロ作品を発表し、ピロボラスを離れ、同名のカンパニーを設立しました。モミックスは、30年以上の歴史があり、世界各国で公演を重ねています。

『ボタニカ』は2009年初演の作品で、芸術監督はモーゼス・ペンデルトンです。休憩なしのノンストップでした。衣装、舞台セット、映像、照明、光と影のコントラストがとても美しくて、芸術的でした。自然、植物を連想させるようなシーンが続きました。
たとえば、カラフルな全身タイツのようなピッタリした衣装のダンサーたちの肉体全体を、植物や動物、虫の一部分のように見立てて、舞台全体を1枚の絵画のように捉えてダンサーたちを組み込んでいました。それが連続していきました。

ny1202a02.jpg Photo/Don Perdue

たくさんのシーンが続く中、特に印象に残ったところをレポートします。
最初、音楽が鳴り始め、舞台前方いっぱいのスクリーンに大きな赤い花の映像が映りました。それがだんだん小さく遠ざかっていき、一面に青・緑のオーロラのような色になりました。
舞台いっぱいの広さの大きな白い布が床にひかれていて、海の波を思わせるように左右から波打っていました。照明にはブラックライトも使われている様子で、白い布が蛍光カラーの水色のように光っていました。
背景は雪山の景色の画像になりました。そして波打っている白い布の下では、ダンサーが手や足、顔の形を布上に出しながら左右に素早く移動して、行ったり来たりし続けました。
波打っている布の奥から、巨大な白いオブジェを縦に抱えたダンサーが出てきました。そのオブジェは、扇子のような開閉する骨組みに白い布がつけられているようなもので、開くと巨大なお花のようになりました。ゆっくりと開いたり閉じたりし続けて、そのオブジェはゆらゆらとうごめいていて、クラゲか何か、海の生物のようにも見えました。そのまわりに女性ダンサー3人が出てきて、踊りました。

全部消えて真っ暗になり、ダンサーたちの手足が出たり引っ込んで消えたりして、数名が組み合わさって、手足だけで何か一つの生き物のような姿を表現していました。その際、ダンサーたちの身体は全く舞台からは見えませんでした。手足についている蛍光色の模様だけが目に見えるのです。蛍光塗料だけが浮き上がる黒い全身タイツを着ているダンサーたちだと思われます。ダンサーたちの手足がお互いにくっついたり離れたり、別のところにくっついたりして、一つの生物が2つに分かれてまた融合して別の生物になっていくような感じに見えました。両手だけで鳥を作ったり、片手でダチョウの頭などくちばしを持つ生物のように作ったりして動かしていました。これは面白かったです。
真っ暗な舞台の上に、斜めに客席のほうに傾いている大きな鏡の床がありました。その上にベージュ色のレオタードを着た女性ダンサーが寝転んで乗っていて、全身が鏡に映っていました。ちょうど客席からは、その女性と鏡に映った姿が対称の形に見えました。女性が動く度に、鏡に映る姿と共に、左右対称がくっきりと感じられる生物(例えば蝶、鳥、虫など)などを連想して、不思議な感じでした。

ny1202a03.jpg Photo/Don Perdue

巨大な恐竜のような骨だけのオブジェが動いてでてきました。おそらく黒子として全身黒い服を着た男性ダンサーが、この骨オブジェをかついでその下で動かしている様子です。その上に半裸の女性ダンサーが乗っていました。女性は骨オブジェから降りて、しばらくこの骨オブジェとからんで遊んでいた様子ですが、だんだん骨オブジェの凶暴性が増してきました。とうとう角でこづかれて襲われ、女性は骨オブジェに飲み込まれておしつぶされてしまいました。これもシュールな感覚で面白かったです。
両手に長い風船のようなチューブのようなものを着けた人々が8名でてきて、真ん中に寄ったり縦に並んだりしてチューブを動かしました。これは全体で、一つのイソギンチャクか何か、海底植物のように見えました。連想が広がります。

他にも、上で扇子のように開くと円状になってヒマワリの花のように見えるものを持ってでてきたダンサーたちもいました。肩の上に垂れている光るヒモ状のものを着けていて、女性ダンサーがぐるぐる回り続けるとそれが水平近くまで広がって、全体が繊細な一つのお花か海の生物のように見えました。
この舞台は見飽きることなく、あっという間に終わってしまった感じです。
(2012年12月18日  ジョイスシアター)

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