ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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皆様お元気ですか。ニューヨークは寒くなったり暖かくなったり、変な気降です。11月24日はサンクスギビングデーで、1年のうちで一番大事な休日でした。その週は、まとめて休暇を取る人々が多く、当日はお店も劇場もほとんどがクローズして、家族と集まってお祝いします。
今回は、アジアを代表するダンスカンパニーと言われている、中国と台湾のカンパニーの公演をレポートします。

気功、内家拳、書道などのトレーニングを積んだダンサーが踊る「雲門舞集」

Cloud Gate Dance Theatre of Taiwan クラウド・ゲート・ダンス・シアター・オブ・タイワン
Lin Hwai-Min “Water Stains on the Wall”
林懷民『ウォーター・ステインズ・オン・ザ・ウォール』
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10月12日から15日まで、BAMにて、クラウド・ゲート・ダンス・シアター・オブ・タイワンの『ウォーター・ステインズ・オン・ザ・ウォール』の公演が行われました。
クラウド・ゲート(雲門)とは、中国で最も古いダンスの名前で約5千年前の儀式のダンスだそうです。
Lin Hwai-Min(林懐民)が1973年に、中国語圏で初のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーを創った際に、この古いダンス名をつけました。中国語では、「雲門舞集」というカンパニー名です。
Lin Hwai-Min(林懐民)は、「20世紀を代表する振付家」(ダンス・ヨーロッパ誌)に選ばれるなど、現在、世界で最も脚光を浴びている振付家の一人です。1947年、台湾の嘉義県に生まれ、台湾で京劇、日本と韓国で宮廷舞踊、ニューヨークでモダンダンスを学びました。現在はダンス・カンパニーだけではなく、ダンス・スクールも運営して、新しい世代の育成も行っています。
カンパニーのダンサーたちは2ダース(24名)以上いて、全員が 氣功、瞑想、内家拳(Internal Martial Arts)、モダンダンス、バレエ、書道のトレーニングを受けています。
ダンサーなのに、なぜ、書道をやるのでしょうか、と不思議に思いましたが、きっと中国語圏では東洋の文化の基礎として、書道は、精神性を育む大事な修行なのでしょう。
内家拳は、筋肉以外のもの(腱、骨、気)を使う武術です。力を抜いて、相手を崩すそうです。目に見えない「気」を利用して相手を倒す、不思議な武術ですね。

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さて、この『ウォーター・ステインズ・オン・ザ・ウォール』とは、唐(618年〜907年)の時代の最も尊敬される2人の歴史的書道家の会話の一節を用いたものです。それは、顔真卿(がんしんけい、Yen Chen-Chin)と懐素(かいそ、Huai Su)です。
顔真卿は楷書の祖とされていますが、それについて懐素と会話を交わした際に、「壁に染みた水(雨もり)の痕を見て、この書法のインスピレーションを得た。」と話したそうです。これは有名な会話だそうで、それを作品名にしたのですね。
作品のコンセプトのセンスが良いなと感心しました。
中国が最も輝いていた唐の時代の有名な会話を題材にしたダンス作品だったせいか、ニューヨーカーの興味を引いたのでしょう。会場は満員でした。
音楽は日本人作曲家、細川俊夫です。静かな音が多く、和楽器の笙の音のようなものもあり、リズムのない不協和音もありました。コンテンポラリー・ダンスらしい音楽だと思いました。
衣装も舞台背景も、全体的にシンプルで、東洋的でした。舞台の床は、客席に向けて傾斜していました。ダンサーたちは、白い長スカートのような、袴のような衣裳を着けていました。

踊りは、静かなところと激しいところと、強弱が強く、メリハリがありました。太極拳や日本の舞踏を連想させるような動きもありました。
途中、舞台の床に、濃い黒っぽい色の影のような、インクの染みのようなものの映像が映し出され、それがゆっくりと動いて、流れ続けていきました。その上を、ダンサーたちが踊り、ソロ、男性4名、5名のところ、女性ソロがありその周りを男性が5名、囲って踊るシーンなどがありました。ダンサーは次々に流れるように入れ替わっていき、テンポと展開はスピーディでした。
男女のパ・ド・ドゥでは2人で語り合うような、詩的な感じも表していました。
寝転がったり、座ったり、立ったり、そういう上下間の空間を何種類も多く使って表現していたところに、特徴があると思いました。中国拳法のような動きも多用されてい観る前に想像していたように、東洋的、中国文化的な作品で、西欧とは全く違う独特の世界観でした。
(2011年10月12日 BAM Howard Gilman Opera House)

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