ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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皆様お元気ですか? ニューヨークではダンス公演が活発な季節がやってきました。10月9日は、ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・ダンサー、チャールズ・アスケガードのフェアウェル公演でした。今月は、ニューヨークで話題になった、興味深いダンス公演のレポートをお届けします。

P.マッカートニーの曲と愛娘のステラの衣装によるNYCB作品の世界初演

New York City Ballet ニュ−ヨーク・シティ・バレエ
Paul McCartney’s “Ocean’s Kingdom”
ポール・マッカートニー音楽、台本、ピーター・マーティンス振付『オーシャンズ・キングダム』
ny1111a07.jpg Photo :  Paul Kolnik

ニューヨーク・シティ・バレエでは、元ビートルズのポール・マッカートニーが音楽を作曲・編曲した作品『オーシャンズ・キングダム』の世界初演があり、話題になっていました。私もとても楽しみにしていました。
9月25日午後3時からは、『オーシャンズ・キングダム』と『ユニオン・ジャック』(ジョージ・バランシン振付、1976年初演)の2作品が上演されました。
『オーシャンズ・キングダム』は音楽と台本をポール・マッカートニーが手がけ、音楽はクラシックのオーケストラによって演奏された1時間ほどの作品です。振付はピーター・マーティンス、衣装デザインは、ポール・マッカートニーの愛娘であるステラ・マッカートニーです。ステラ・マッカートニーは著名なデザイナーで、現在は世界的な高級ブランド。ポール&ステラの夢の親子共演になりました。

主な配役は、王女ホノラタはサラ・メアンズ、王子ストーンはロバート・フェアチャイルド、王テラはアマール・ラマサール、スカラはジョージア・パスコグイン、王オーシャンはクリスチャン・ツヴァルジャンスキー、エンターテイナーズのリーダーはダニエル・ウルブリヒトです。
休憩なしで4つの場面で構成されているおとぎ話で、海底の王国に、父親である王オーシャンとともに住んでいる王女ホノラタをめぐる恋物語です。

ny1111a05.jpg Photo :  Paul Kolnik

照明と衣装が特に素晴らしく、多額の制作費をかけている感じがしました。海底の王国の話なので、舞台全体が青のグラデーションになっていて、とても幻想的でした。舞台の上のほうは海面のきらめきのように光がゆれていて、ところどころ上から太陽光が海中へ差し込んでいる様子を表現していて、淡い光が放射状に上から広がっていました。この海の水、海面の光のきらめき、海の中へ差し込む太陽光のは、舞台後方と全体に映像が映し出されていましたが、おそらくCGではないかと思います。
ステラのデザインの衣装は斬新で、色彩の組み合わせが鮮やかなのに上品にまとまっていて、さすがにセンスが良かったです。背景の海の色(ブルー系)によく映える色使いの衣装ばかりでしたが、中には、黄色やピンクや黄緑などの蛍光色を使った衣装があって、照明によって薄暗い中で蛍光色が浮かび上がりなかなかメリハリがきいていました。
王テラのアグレッシブな家来たちの衣装が特に印象に残っています。パッと見はまるで全身に刺青を入れている裸身のように見える、肌色の全身タイツに模様が描かれている衣装でした。この刺青の模様のデザインも、アフリカ風なのですがアーティスティックで新しい感覚を感じました。そして彼らの頭はモヒカンで、衣装にとても合っていました。
途中、王女ホノラタは誘拐されて幽閉されるシーンもありましたが、柵の中に閉じ込められている様子は、実際に柵の舞台セットを使わずに照明の影によって表現され、舞台の真上から光と影の柱を等間隔に作って王女ホノラタの周りを囲い、客席から見ると、ボーっと暗闇に柵が浮かび上がっているように見えました。
王女ホノラタはその光と影の柱で作られた柵の中に閉じ込められ、苦しみ悲しんでいる様子を踊りで表現していました。柵の外に来た人々、たとえば王子ストーンなども、柵に入りたくても入れないのです。

ny1111a02.jpg Photo :  Paul Kolnik

静かでロマンチックな作品でした。振付は現代の雰囲気がでていて、クラシック・バレエベースですが、ところどころコンテンポラリーの動きが取り入れられていました。例えば、王女ホノラタなど女性たちの手の表現には、両腕をピンと伸ばして両手の平を外側に向けて、腕を胸の前から両側へと開いていくものなどが見られました。
一流デザイナーによる衣装、一流の音楽が使われている中で、一流のダンサーたちが踊ったので、全体が素晴らしい舞台となっていました。幕が降りた後にはまた観たいと思いました。
なお、このポール・マッカートニーの音楽CD“Ocean's Kingdom”は日本のアマゾンでも購入可能です。写真は9月23日のガラ公演の世界初演のものです。
(2011年9月25日 リンカーンセンターDavid H. Koch Theater)

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