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皆様お元気ですか? ニューヨークはようやく暖かくなってきました。ダンス公演が活発な季節です。 5月3日から6月12日まで、ニューヨーク・シティ・バレエのニューヨーク公演があります。5月16日から7月9日まで、ABTのニューヨーク公演があります。

客席を爆笑の渦に巻き込んだロビンズの『ザ・コンサート』

New York City Ballet
ニューヨーク・シティ・バレエ
Peter Martins "Fearful Symmetries"
Jerome Robbins "Afternoon of a Faun" "Antique Epigraphs" "The Concert"
ピーター・マーティンス『フィアーフル・シンメトリーズ』 
ジェローム・ロビンズ『牧神の午後』『アンティーク・エピグラフス』『ザ・コンサート』

5月3日から6月12日まで、ニューヨーク・シティ・バレエのニューヨーク公演期間です。
私は5月19日の公演を観に行きました。休憩を2回はさんだ、4つの小品集です。今回は珍しくジョージ・バランシン振付の演目が無い日でした。

1つめは『フィアーフル・シンメトリーズ』です。音楽はジョン・アダムス、振付はピーター・マーティンスで1990年初演の作品です。出演ダンサーは、スターリング・ヒルティン、タイラー・ペックなど17名です。コール・ド・バレエも含めて大勢のダンサーが出演するにぎやかな作品です。
照明が斬新な感じでとても凝っていました。最初、ダンサーが登場しないで照明だけが変化して、その光も作品の表現の一部となっていました。天井とバックが赤一色の照明で照らされ、だんだん天井だけが赤になり、バックの下のほうが青(水色)、真ん中は赤と青が混ざった紫色になりました。しばらくその照明がうつしだされていました。
やがて、音楽が始まり、ダンサーたちが現れました。男女2名一組がいくつも、順番に別々の振付で、舞台の対角線上を踊りながら次々に通り過ぎていきました。次は男女2名ずつ4名がでてきて、4組で踊りました。
ずっと、次々に速い展開が続きました。ダンサーたちの小さなグループが人数を変化して増えたり減ったりしながら、踊りながら走り去っていき、めまぐるしく場面が入れ替わっていきました。リズムは早い曲からゆったりした曲まで、速さに変化があったので、踊りもメリハリがでていました。
最後は全員がでてきて踊り、フィナーレのように終わるのかな?と思いきや、まだ作品は続いていて、数名ずつの踊りが続きました。この後半に、何度か盛り上がりました。最後、男女2名ずつの4名が残って、組体操のように重なって終わりました。

ny1106a01.jpg 『牧神の午後』Photo:Paul Kolnik

次は『牧神の午後』です。ダンサーはジャニー・テイラーとクレイグ・ホールです。音楽はクロード・ドビュッシー、振付はジェローム・ロビンズ。1953年初演の作品です。夢の中のようなストーリーで、幻想的です。女性ダンサーが金髪の長い髪を下ろして女神様のように登場する美しい舞台です。
50年代の振付ですが、今でも時代の古さを感じさせません。時間を経て残っていく普遍的な作品だと思います。

3作目は『アンティーク・エピグラフス』です。音楽はクロード・ドビュッシー、振付はジェローム・ロビンズで、1984年初演の作品です。ダンサーは女性8名でした。レイチェル・ルザフォード、サヴァンナ・ロウェリー、サラ・メアンズ、テレサ・ライヒェルンなどです。
全体的に静かなゆったりとした曲で、優雅な踊りでした。途中、軽やかな速い曲調もありました。衣装も美しく、レオタードの上に薄いシフォン地のロング・ドレスを着ていました。
最初は大勢が踊り、次に3名で踊り、他の5名は座っていました。3名が踊りながら去っていくと、座っていた5名が踊り始めました。5名はお互いに両手をつないで輪になって踊り、やがて手をつないだまま1列になり、動きました。この一連の動きはとても美しかったです。そして5名は手を離してポーズをとりました。
女性のソロもありました。一人が踊っているときに他の4名は座っていました。他の場面でも、2名が踊っていて他の5名が座っているところもありました。
最後は8名全員が静かに歩いて、1列に横に並んでみんなで両腕を重ねて中腰でじっとしていました。しばらくそのまま、長いことじっとしていたので、終わり方が個性的で面白かったです。

ny1106a02.jpg 『ザ・コンサート』Photo:Paul Kolnik

4作目は『ザ・コンサート』です。これはこの日の演目で、一番盛り上がりました。音楽はフレデリック・ショパン、振付はジェローム・ロビンズで、1956年初演の作品です。ダンサーは、マリア・コウロスキー、アンドリュー・ヴィエットなどです。
喜劇仕立てのバレエで、とても楽しくおかしくて、面白い作品でした。このようなユーモラスなバレエは、ニューヨーク・シティ・バレエの公演でも時たま上演されることがあります。当時は実験的な斬新な作品だったのかも知れませんが、いまだに古さを感じさせない面白い振付でした。客席は大勢の観客が何度も爆笑して、大いに盛り上がりました。私も、ニューヨーク・シティ・バレエの公演でこんなに大笑いしたのは初めてです。

最初は、劇場のコンサート会場の絵が描かれている舞台いっぱいの大きなカーテン(スクリーン)がありました。それがだんだん上に上がっていって消えました。
グランドピアノが舞台下手側に置かれていて、女性ピアニストがでてきて、ピアノの前に座りました。ピアノを触ると鍵盤から目で見えるホコリが巻き上がって、みんな笑いしました。そのピアノの鍵盤を手ではたいて、くしゃみをして弾き始めました。
そこに、白いタイツをはいた男性が椅子を持って出てきて、ピアノのほうを向いて舞台の真ん中に座りました。次に女性2人が椅子を持ってきてピアノのほうを向いて座りました。次々に個性のある男性や女性たちが、それぞれ椅子を持ってでてきて、座っていきました。中にはピアノにぶつかるくらい接近して座った女性たちもいました。内股で歩いて出てきた男性は、出てきただけで笑わせていました。カップルででてきて男性はつまらなさそうに横を向いて新聞を読んでいたり、椅子を持参していない女性のために連れの男性が他の女性から椅子を横取りしたり、他に椅子の奪い合いが続いたり、しばらくおかしな人たちの登場が続きました。

ピアノの近くに座った女性がロマンティックに踊りだして、眼鏡をかけた大真面目の男性の手をとって2人で踊り始めました。周りの人々はみんな去り、舞台上はピアノとこの2人だけになりました。男性はバレエが踊れない設定で、ぎこちない踊り方で女性をこわごわとリフトしました。そのリフトの失敗の仕方が面白く、客席に笑いの渦ができました。
人形のように固まった女性を男性がかついででてきて、床に女性を置いていきました。その女性を立たせてみると、人形のように動きません。同じように次々に、他にも人形のような女性を男性がかついで何組もでてきました。全部で6人の人形のような固まった女性がでてきて、動かないままじっとしていて、みんな6人がポーズをとって止まりました。そして6人でそろって踊り始めました。でもその中の一人が間抜けな役で、一人だけ何度も振付を間違えていました。他の5人から一人だけ離れた位置に間違えて立ったり、手の右左を間違えたり、振りを忘れて横の人の動きを盗み見しながら動いたりして客席の笑いを誘っていました。
再び男性がでてきて、人形のような女性6名を体が固まったまま、かついで舞台袖に消えていきました。登場と退場の仕方も面白かったです。
他のいくつかの場面でも観客を大笑いさせていました。

後半は、昆虫のような触覚がついている帽子をかぶった男性が登場。背中にはやわらかい羽がついていて蝶のように見えます。
やがて他にも、同じような羽のついた衣装の男性や女性がたくさん次々にでてきました。みんな、次第にそこら中で飛びまわりました。
すると最後は、ピアニストが大きな虫アミを持って出てきて、彼らたちを追い掛け回して、みんな逃げて幕が下りました。
(2011年5月19日夜 David H. Koch Theater)