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この度の東日本大震災と津波の被害に心を痛めています。被災された方々にお悔やみ申し上げます。私も阪神大震災で被災した経験があるので、お気持ちが分かります。地震が起こってもその場で動けず、逃げることができません。人々の今後の生き方が変わっていくことでしょう。いつ何が起こっても悔いのないように、できるうちに自分がやりたいことをやっていくほうがいいと思うようになりました。

スペイン人映画監督カルロス・サウラによるフラメンコ公演

Flamenco Hoy By Carlos Saura
カルロス・サウラ「フラメンコ・オイ」
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毎年2月に、スペインからニューヨークにフラメンコ・フェスティバルを招聘しているワールド・ミュージック・インスティトュートが、今年はスペインから「フラメンコ・オイ」という舞台作品を招聘しました。(フラメンコ・フェスティバルは去年で10周年でした。)2月16日から20日までの公演です。

カルロス・サウラは、世界的に有名なスペイン人映画監督です。1932年生まれで今年79歳になります。今でも現役で作品を作り続けているのはすごいです。彼の代表的なフラメンコ映画は、『血の婚礼』『カルメン』『恋は魔術師』が知られています。アントニオ・ガデスとともに映画を作り、残しました。これらの映画によって、世界中の人々へスペインのダンス芸術が広まりました。
彼は音楽家と芸術家の家族の中に生まれ、子供の頃からずっとフラメンコに興味を持っていたそうです。フラメンコに対する情熱が深い監督です。

この作品はカルロス・サウラが芸術監督として作った舞台なので、見逃せない公演としてとても楽しみにしていました。「フラメンコ・オイ」とは、「フラメンコ・トゥデー」という意味ですので、現代のフラメンコシーンを描いた作品だと思います。
多数のダンサーが出演し、音楽(ギター、歌、パーカッション、ピアノ、サックス&フルート、ベース)も生演奏です。音楽監督は、チャノ・ドミンゲス。振付はラファエル・エステベス、ナニ・パニョスです。プリンシパルダンサーは、ラファエル・エステベス、ナニ・パニョス、パストーラ・ガルバン、ラウラ・ロサレン、パトリシア・ゲレーロです。
音楽は洗練されたフラメンコ・ジャズで、かつ、土着的な力強い伝統的フラメンコ音楽のカラーを残した素晴らしいものでした。音楽だけとっても、大迫力でとても聴きごたえがありました。
休憩をはさんで2部構成でした。ニューヨークでは大人気で劇場は満員でした。

この作品は、映画監督が作った舞台ら

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しく全体的に映画のシーンのように美しくまとまったものでした。とてもシャープでカッコよかったです。舞台セットも照明も凝っていました。衣装もとてもステキでした。舞台専門の芸術監督が作る作品とはまた一味違っていて、興味深かったです。
曲に乗ってダンサーたちが踊るシーン、音楽家だけが演奏するシーン、歌だけのシーンが、ほどよく交互に組み合わされていました。2部を通して20曲の踊りや音楽の構成でした。
ダンサーは基礎訓練が積まれたレベルが高い人ばかりで、クラシックバレエ・ベースの振付がかなりありました。例えば、アティチュードのまま3回転したりとかピルエット2回転とか、シェネ、シャンジュマン、ピケなどがありました。土着的なフラメンコしか経験がないダンサーたちではなかったです。
ミュージシャンの演奏に囲まれて、ダンサーが真ん中で一人ずつ次々に踊り入れ替わっていく、フラメンコらしいダンスバトルもありました。 
印象に残る舞台セットの様子は、舞台全体を真っ暗な夜に見立てて後方に大きな満月を照明で作って浮かべていたり、舞台上に大きな鏡を置いてダンサーたちが映っているところなどです。

「ファンダンゴ、デ・ボッチェリーニ」は、カルロス・サウラがダンス・カンパニーの日常の様子を作品にしたものです。
大勢のダンサーたちが簡素なレッスンウェアを着て出てきて、先生の掛け声と手拍子とともに、レッスンメニューをこなしていく。その掛け声はすべてスペイン語で、「ドブレ・ピルエタ・セラード(ダブル・ピルエット、クローズド)」などと言っていました。ダンサーのリアルな日常風景が垣間見られて、舞台の真ん中あたりに他とは少し違う空気が流れたので、観客にとっては意外な意識になり、さすが映画監督らしい演出だと思いました。
3mから5mくらいのものすごく長い段々のスカート、バタデコーラを着た女性2名がでてきて、スカートをひきずりながら踊るところもありました。
後半に、私がスペインにいた頃に何度も聴いた、「ルト・プレマトゥーロ・エン・アイレ・デ・サエタス」という曲が流れました。これはキリスト教のお祭りの日に、大勢が大きな三角の円柱の形の帽子(顔も肩も隠れる長い布で覆われていて、両目の部分だけくりぬかれているもの)をすっぽりかぶって、街中をしずしずと行進していく時の暗い静かな曲です。
舞台では、ジーザス・クライストに見立てられた上半身裸で黒いタイツを着た男性が、両手をまっすぐに左右に広げて肩のところまで上げていました。その周りに長いマントを頭からすっぽりかぶった女性4名が登場。やがてその女性4名がこの男性をかかえて去っていきました。重々しい音楽に乗って厳かに演じられていました。カトリック国のスペインらしい独特の演出です。
フィナーレはみんな大勢出てきて踊り、最後はだんだん音楽が静かになっていって止まり、ダンサーたちの足音(サパテアード)も揃って何度か鳴って、終わりました。
とても洗練された舞台作品で、美しいうえに土着的な迫力も失っていない本物のフラメンコでした。大拍手につつまれて幕が下りました。
(2011年2月16日夜、ニューヨーク・シティ・センター)

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