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皆様こんにちは。ニューヨークはまだ肌寒く、夜はけっこう冷え込む日が続いています。春が待ち遠しいものです。 春から夏にかけてニューヨークではバレエ公演が多くなってきます。4月はBAMの公演、5月になればまたニューヨーク・シティ・バレエの公演シーズンが始まりますので、これから楽しみです。

アンヘル・コレーリャ・バレエの華やかなアメリカ・デビュー公演

Corella Ballet Castilla y Leon
Angel Corella "String Sexte", Leonid Lavrovsky "Walpurgis Night", Marius Petipa "Black Swan", Maria Pages "SOLEA"
コレーリャ・バレエ カスティーリャ・イ・レオン
アンヘル・コレーリャ『ストリング・セクステッド』、レオニード・ラヴロフスキー『ワルプルギスの夜』、マリウス・プティパ「黒鳥のパ・ド・ドゥ」、マリア・パヘス『ソレア』
アンヘンル・コレーリャ・バレエのアメリカデビュー公演

3月17日から20日まで、ニューヨーク・シティ・センターにて、コレーリャ・バレエ カスティーリャ・イ・レオンのアメリカ・デビュー公演がありました。これは絶対に見逃せない大事な公演で、アンヘル・コレーリャにとってもニューヨーカーにとっても私にとっても、歴史的決定的瞬間でした。私が観劇したのは20日夜の部です。劇場にはABTダンサーたちも大勢かけつけていて、以前インタビューしました加治屋百合子さんにも久しぶりにばったりお会いして少しお話しました。お元気で幸せそうで、ますます雰囲気が落ち着かれてお美しかったです。(スペインのバレエ団ですしllaはリャと読むので、コレーリャ、カスティーリャと統一表記させていただきます)

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これはABTのプリンシパルで大スターのアンヘル・コレーリャがスペインに創立したクラシック・バレエ団で、バレエ・スクールも併設しています。スペインでは唯一のクラシック・バレエ団で、50名以上のダンサーが所属していて、その出身国は12ヵ国に及びます。(スペイン、キューバ、アメリカ、イタリア、アイルランド、日本、ウクライナ、ロシア、ポルトガル、アルゼンチン、グルジア共和国、カザフスタン)ウェブサイトはこちらです。

劇場ロビーでは、スペインで撮影したコレーリャ・バレエのダンサーたちの写真展も行われていましたが、その写真が歴史の重みが感じられるスペインらしい重厚な雰囲気に仕上がっていて、素晴らしかったです。衣装や背景の建築物やアンティーク家具などすべてにおいて、アメリカでは出せないようなスペイン独特の重厚で格調高い写真でした。会場のアメリカ人のお客さんたちもみんな、ため息をつきながら「美しい」といってその写真の数々をながめていました。

アンヘルのこのバレエ団とバレエスクールについては、以前こちらのコラム内でアンヘルにいたビューをした時にその夢と計画について詳しく語ってくださいました。インタビューは私がスペイン語で行い、場所はABTの稽古場です。当時のアンヘルが語った夢が今回、本当に実現したことがよく分かります。2005年5月に掲載していますので合わせてご覧くださいませ。

インタビューのときにアンヘルと話し込んだ際に、さまざまなことを語ってくださったことを思い出します。
「将来は35歳でABTを引退して、僕の名前をつけたクラシックバレエ団をスペインに作ってそこで芸術監督として活動したい。そのためのバレリーナを養成する学校も併設して開校したい。スペインにはクラシック・バレエ専門のバレエ団が無いので、僕が作りたいんだ。夢は、英国ロイヤル・バレエ・スクールと英国ロイヤル・バレエ団のようなものに育てたい。スペインに恩返しがしたい!」
・・・とおっしゃっていました。
彼はその公言通り、男35歳で自分のバレエ団の初公演を実現したのですからすごいですね! あれからずっと着々と確実にその実現の準備を進めていたのですね。まず自分の財団を2001年に設立していて、何億円も集めて学校とバレエ団を創設する準備をしていました。
インタビューのその後、アンヘルはとうとうバレエ学校をオープンして生徒を募った話は耳に入っていました。2008年にコレーリャ・バレエが公式にスペインのセゴビアでスタートしました。本当に、スペインにバレエ団を作って自分の夢を実現させて、しかも学校も作ったのですから、すごいスケールが大きな話です。 スペインの後輩達に出身や家庭環境や経済的な問題を関係なしで、素晴らしいプロフェッショナル向けのバレエ教育をほどこす機会を与えて、バレエ団で踊る環境を作っていってあげたいそうです。教育に力を入れて学校を作るなんて、一番素晴らしいことだと思います。ロマンがある話です。
しかもこれは映画ではなくて実話なのですから、同じ時代に進行中のこの出来事をダンスキューブの読者の方々と共にタイムリーに追ってアンヘルを見守ることが出来て、感動的です。アンヘルの実現力に感心し、久々に勇気付けられ元気も分けてもらえました。有言実行で、感動しました。

コレーリャ・バレエでは、アンヘル・コレーリャが芸術監督とプリンシパルを務めていてご本人も少し出演しています。他にプリンシパルは姉でABTソリストのカルメン・コレーリャ、ABTプリンシパルのエルマン・コルネホ、ナタリア・タピア、ジョセフ・ガッティです。ファースト・ソリストには日本人の大森和子もいます。
当日私が拝見したプログラムは小品集で4つの作品です。
一つ目はアンヘルが初めて振付けした作品で、『ストリング・セクステット』です。彼はインタビューのときに「僕はダンサーであって振付家ではないから振付は全くやらない」と語っていて苦手そうだったので、そのアンヘルがとうとう振付という新しいことにチャレンジしている様子を知り、嬉しくなり、見守るような気持ちで愛情を持って見させていただきました。
これはチャイコフスキーの曲に乗って、4つのシーンに分かれていて、多くのダンサーが踊りました。クラシック・バレエの基本のセンターレッスンの動作が多い振付でした。レッスン時のオーソドックスなバレエの動きを舞台上に再現してみたのかな?と思いました。

2つ目は『ヴァルプルギスの夜』でシャルル・グノーの曲にのって、レオニード・ラブロフスキーの振付です。大森和子、ジョセフ・ガッティほか4名が踊りました。大ジャンプやグランフェッテなど回転の大技もありました。
3つ目は『白鳥の湖』ですごく盛り上がる有名なシーンの「黒鳥のパ・ド・ドゥ」で、アディアリス・アルメイダとエルマン・コルネホが踊りました。これは予定のプログラムが中止になり当日に「黒鳥のパ・ド・ドゥ」に差し替えられました。この作品は黒鳥のオディールの32回転ほか大技が続き、とても見応えのある作品なので、会場はとても盛り上がりました。

 

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4つ目は『ソレア』でアンヘルとカルメンの2人での姉弟共演です。振付はフラメンコのマリア・パヘスで、ルーベン・レバニエゴスの曲です。ギター中心のフラメンコの曲で、途中でフラメンコのカンテ(歌)も入りました。音楽は録音のものです。
バレエベースのフラメンコも入れた振付で、アンヘルとカルメンがフラメンコ風に踊るところを初めて拝見したのでとても新鮮でした。カルメンはトウシューズをはいていました。
見所はアンヘルのシェネやピルエット、グランフェッテで、いつもの回転よりも3倍くらいは早く多く回っていて、舞台から落っこちるのではないかとヒヤヒヤするくらいの全開の速度でした。普段、稽古場で思いっきり「これでもか!」という早い速度で冗談で回転しまくっているような感じのありえない回転速度です。世界一とも言われているダンサーのアンへルが思いっきり早い速度で回転しまくるのですから、それは人間の限界の回転速度で、見ているこちらは腰を抜かしました。アンヘルの顔もニコニコ笑っていて楽しい冗談風でした。ここだけ、肉体の限界を超えたサーカスを見ているような感じでした。
普段のアンヘルの王子様役のときは王子様らしく抑えて優雅に回転なさっていたのだなと分かりました。
いつもの王子様と違う、激しく情熱的でスペイン的なアンヘルの一面が表現されていて、こんな激しい回転のアンヘルを初めて見たので楽しかったです。会場もおおいに盛り上がってみんな喜んでいました。かっこよかったです。
姉弟2人そろっての共演も初めて見ましたし、仲が良さそうでほのぼのして和みました。
(2010年3月20日夜 ニューヨーク・シティ・センター)